「卵巣がん」を発症すると「不正出血」を起こす?初期症状を医師が解説!

卵巣がんは初期に自覚症状がほとんど現れない病気です。そのため、症状に気付いたときにはすでに進行していることも少なくありません。女性にとって気になる症状の一つに不正出血があります。不正出血があると「もしかして卵巣がんでは?」と不安になることもあるでしょう。本記事では、卵巣がんと不正出血の関係や、卵巣がんの初期症状、受診の目安、検査方法を解説します。

監修医師:
西田 陽登(医師)
目次 -INDEX-
卵巣がんの概要と原因

卵巣がんとは、子宮の両脇にある卵巣に発生する悪性腫瘍です。2020年には日本で年間約1.3万人の女性が卵巣がんと診断されており、約5,100人が卵巣がんで亡くなっています。卵巣がんは40代から増え始め、50〜60代で発症のピークを迎えます。発症の原因は明確にはわかっていませんが、排卵の回数が多いほど卵巣がんのリスクが高まると考えられています。
また、食生活の欧米化との関連も指摘されています。卵巣がんは遺伝的な要因も一部あります。乳がん・卵巣がんの家族歴がある場合や、BRCA1/BRCA2といった遺伝子変異を持つ場合は遺伝性乳がん卵巣がん症候群と呼ばれ、卵巣がん発症リスクが高まります。
不正出血は卵巣がんの初期症状?

月経ではない時期に性器から出血した経験はありませんか?そのような不正出血は卵巣がんに関係するのかを本章で解説します。
不正出血の定義
不正出血とは、月経ではない時期に性器から出血することを指します。色は鮮血の場合もあれば茶色やピンク色のおりものとして気付く場合もあります。不正出血自体は女性では珍しい症状ではなく、婦人科を受診する理由としてもよくみられます。
不正出血と卵巣がんの関係
不正出血は卵巣がんの初期症状としてはあまり一般的ではありません。卵巣がんは骨盤の奥にある卵巣に発生するため、がんが小さい初期段階では出血など目立った症状を起こしにくいです。ただし、卵巣がんが進行していくと、ホルモンバランスの変化や周囲臓器への影響で月経異常や不正出血が現れる場合もあります。
卵巣がん以外に不正出血が生じる原因
卵巣がん以外で不正出血をきたす原因はいくつかあります。代表的なものは下記のとおりです。
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- ストレスなどによるホルモンの乱れ
このように、不正出血は卵巣がん以外にも多くの原因が考えられる症状です。不正出血がみられた場合、年齢的に更年期だから仕方ないと自己判断せず、まずは婦人科で相談することが大切です。
不正出血以外の卵巣がんの症状

卵巣がんは初期には症状が乏しい一方、進行するとさまざまな体調の変化を引き起こします。不正出血以外に卵巣がんで現れる主な症状として、次のようなものがあります。
腹痛や腰痛
卵巣がんが大きくなったりお腹の中や腹膜に広がったりすると、周囲の臓器や神経を圧迫して下腹部の痛みや腰痛を感じることがあります。特に、腹腔内に腹水が溜まると膨張で痛みを感じることがあります。
生理痛、月経異常
卵巣がんそのものでは、初期の段階で月経に変化が現れることはほとんどありません。卵巣は左右に2つありますが、片方の卵巣にがんができてももう片方が正常に機能していれば、生理周期は保たれ大きな月経異常は起きるとは限らないからです。しかし、両方の卵巣が侵されると生理不順や無月経になる可能性があります。
便秘
卵巣がんが進行して腫瘍が大きくなったり腹水が溜まったりすると、後ろにある直腸を圧迫するため腸の通り道が狭くなり、便秘になることがあります。
体重の増減
何も生活習慣を変えていないのに急激な体重変化があった場合も注意が必要です。卵巣がんでは短期間に体重が増えたり減ったりすることがあります。例えば、お腹の中に大量の腹水が溜まるとその分体重が増加します。一方、がん細胞が放出する物質の影響で食欲が低下したり筋肉が落ちたりすると体重減少が起こります。
お腹の張り
下腹部の膨満感や腹囲の増大も卵巣がんの代表的な症状の一つです。卵巣がんが進行して腹膜にがんが広がると、腹腔内に液体(腹水)を貯留させます。この腹水が大量に溜まると、お腹が風船のように膨れ、時には臨月の妊婦さんのようにお腹が突き出すこともあります。
不正出血で病院を受診する目安

不正出血は放っておいてよい場合と、すぐに治療が必要な場合があります。自己判断は難しいため、基本的には不正出血があれば早めに婦人科を受診することが望ましいですが、特に次のような症状であれば受診を急ぎましょう。
- 不正出血を繰り返す場合
- 出血が長く続く場合
- 閉経後に出血があった場合
- 出血量が多い場合や痛みを伴う場合
卵巣がんが疑われる場合の検査方法

婦人科で卵巣がんの可能性が疑われた場合、確定診断のためにさまざまな検査が行われます。本章では主な検査方法とその内容を説明します。
内診
内診は、医師が指先や器具を使って膣や子宮の状態を直接調べる診察です。具体的には、膣鏡という器具で膣内を観察したり、医師が手袋をした指を膣に挿入して子宮や卵巣の大きさ・しこりの有無を触診します。
超音波検査
超音波検査は、身体に超音波を当てて臓器の様子を画像化する検査です。卵巣や子宮の検査では、お腹の上から当てる方法に加え、膣の中に細長い器具を入れて観察する経腟超音波検査が行われることがあります。超音波検査では、卵巣腫瘍の大きさや性状を調べたり、腫瘍と周囲臓器との位置関係を確認します。
画像検査
より詳しく卵巣腫瘍の広がりを調べるために、画像検査としてCT検査やMRI検査が行われます。卵巣がんでは、CTやMRIによってリンパ節への転移や、卵巣から離れた臓器への遠隔転移の有無を確認します。
血液検査
血液検査では、一般的な項目に加えて腫瘍マーカーと呼ばれる項目を測定します。腫瘍マーカーとは、がんに伴って血液中に現れる物質のことで、卵巣がんではCA125というマーカーが有名ですが、それだけでは卵巣がんと確定診断はできません。
細胞診
細胞診とは、身体から採取した細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞の有無を確認する検査です。しかし、卵巣がんの場合、直接卵巣から細胞を採るのは容易ではありません。その代わり、腹水や胸水が溜まっている場合はその液体を抜いて細胞が含まれていないか調べます。腹水中にがん細胞が見つかれば卵巣がんの進行を裏付ける情報になります。
卵巣がんについてよくある質問
ここまで卵巣がんについて紹介しました。ここでは「卵巣がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんにかかりやすい人の特徴を教えてください。
- 50〜60代
- 妊娠・出産経験が少ない
- 婦人科疾患(子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群など)の既往
- 家族歴・遺伝要因がある
以上のような特徴に当てはまるからといって必ず卵巣がんになるわけではありません。しかし、リスク要因を複数持つ方は、普段より意識的に婦人科検診を受ける、下腹部の症状に注意するといった心がけが大切です。
健康診断や人間ドックで卵巣がんを発見できますか?
現状、卵巣がんに関しては有効性が証明された検診方法が確立されていません。腹部超音波や腫瘍マーカー測定(CA125など)は人間ドックのオプションで行われることもありますが、これらを定期的に実施しても卵巣がんの死亡率を下げられる明確な効果は確認されていません。
卵巣がんの生存率を教えてください。
- ステージI(がんが卵巣内にとどまっている):88.7%
- ステージII(骨盤内にがんが広がっている):74.9%
- ステージIII(腹膜やリンパ節に転移がある):45.1%
- ステージIV(肝臓や肺など遠隔転移がある):27.1%
早期のI期で発見できれば約9割が5年以上生存しますが、進行が進むにつれて生存率は低下します。
まとめ

卵巣がんは初期症状に乏しい病気ですが、決して予防や早期発見が不可能なわけではありません。不正出血は卵巣がんの典型的な初期症状ではないものの、婦人科系の異常を知らせる重要なサインです。特に閉経後の不正出血や繰り返す不正出血がある場合は、卵巣がんに限らず子宮の病気を含め早めに受診することが望ましいでしょう。そして、本記事の内容が、皆様の不安解消と健康管理のお役に立てば幸いです。
関連する病気
- 子宮体がん
- 子宮頸がん
- 子宮筋腫
- 子宮内膜ポリープ
- ストレスなどによるホルモンの乱れ
関連する症状
- 腹部膨満感
- 下腹部痛
- 排尿障害
- 食欲不振
- 体重減少
- 月経異常
- 全身の倦怠感




