【闘病】乳腺外科看護師が『乳がん』に。「何で私が!?」転移の恐怖にあふれる涙

今回話を聞いたのは、乳腺外科の看護師のmayuさん(仮称)。異変に気付いたきっかけは、マンモグラフィの「模擬患者」になったことでした。さまざまな検査、手術、放射線治療を経て、現在もホルモン療法と抗がん剤治療を続けています。そんなmayuさんが、初めて乳がんを告げられた時の心境や、治療の過程で感じたことなどを語ります。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年10月取材。

体験者プロフィール:
mayu(仮称)
きっかけは「模擬患者」として撮ったマンモグラフィ

編集部
病気が発覚するまでに自覚症状はあったのでしょうか?
mayu
不調や違和感は一切ありませんでした。私が勤めている乳腺外科クリニックで模擬患者としてマンモグラフィを撮影した際に、集簇(しゅうぞく)性の石灰化(乳房の一部にカルシウムが密集している状態)が見つかったのです。しかし超音波検査で腫瘤(しこり、こぶ、腫れもの)などはなく、経過観察となりました。もともと乳腺症(女性ホルモンのバランス乱れなどによる良性の乳腺変化)が強く、年に一度は勤務先の院長(主治医)に診てもらっていたので、当時は「乳腺症で硬いのだろう」と考え、がんだとは疑ってもいませんでした。
編集部
経過観察から診断に至るまでの経緯を教えてください。
mayu
マンモグラフィから2カ月後くらいにしこりを自覚しました。再び行った超音波検査で院長から「腫瘤形成はなし」と言われたものの不安に思い、市の乳がん検診を受けました。結果は「要精密検査」でしたね。勤め先のクリニックで再度超音波検査を受け、そこでも腫瘤は見られませんでした。ただ針生検も行った結果、乳がんの診断に至りました。
編集部
告知はどのような形で行われましたか?
mayu
勤務後に呼び出されて、「乳がんだった」と伝えられました。針生検に至った段階である程度覚悟は決めていましたが、告知された瞬間は「何で私が!?」「転移していたらどうしよう」という思いで涙があふれました。一方で妙に冷静な部分もあり、「乳がん看護に携わる自分に、神様が与えた試練だ」とも思っていました。病理結果は、「浸潤性乳管癌硬性型(周囲に広がるタイプの硬いがん)、ER陽性・PgR陰性(女性ホルモンに影響される性質)、Ki67高値(細胞増殖が活発)のルミナールB」でした。つまり私の乳がんは、比較的しっかりとした組織を持つタイプであることが分かりました。ホルモン療法が有効な一方で細胞分裂も活発なため、再発リスクがやや高い状態です。
「みんないるから、泣きたいときは泣けばいい」

編集部
治療の方針について医師から説明がありましたか?
mayu
院長からは「しこりは1cm程度。遠隔転移はないと思うが、念のため全身精査をする」「しこりは手術で切除する。全切除ではなく部分切除で大丈夫そうだが、6時方向(乳頭の真下の部分)にあるため、乳房は変形するだろう」「術後は放射線治療、その間にオンコタイプDX(乳がんの再発リスクと抗がん剤治療の必要性を判断するための遺伝子検査)を出して、抗がん剤治療をするかどうか決める」「ホルモン療法は10年必要」と説明されました。
編集部
治療は順調に進んだのでしょうか?
mayu
はい。まずは手術で左乳房を部分切除し、取り出した組織を病理検査に回しました。結果は、事前の診断通りリンパ節などへの転移はなく、周囲への広がりもない状態でした。その後、放射線治療(全乳房照射50Gy)を行い、オンコタイプDXも提出して、「再発高リスク」だったため、抗がん剤(EC[エピルビシン+シクロホスファミド])治療も実施しました。今も、ホルモン療法(タモキシフェン内服+リュープロレリン注射)と経口抗がん剤(S-1)治療を継続中です。
編集部
受診から現在に至るまで、印象的なエピソードなどあれば教えてください。
mayu
検査から診断まで、そして診断から転移の有無が分かるまでが精神的に最もしんどく、不安からおねしょをするほどでした。得体の知れない怖さに支配されていた日々といってもいいかもしれません。一方で院長から「大丈夫、ちゃんと治るよ。治そう! 絶対治すから!」「患者さんの一番の理解者になれる」とエールをもらったり、一緒に泣いてくれた同僚から「一人で戦わないでいい。みんないるから、泣きたいときは泣けばいい」とハグをしてもらったり……救いもたくさんありました。病気をしたことで、これからも付き合っていきたい人が明確になりましたね。
少しでも早く見つけられるよう、検診はしっかり受けて

編集部
病気の前後で変化したことはありますか?
mayu
命は有限であることを実感し、当たり前の日常がとても幸せだと気付きました。そして、「またいつかはないかもしれない」と考え、感謝の気持ちや大切な思いはその場できちんと伝えるようになりました。自分を支えてくれる人がこんなにもいるんだという事実に気付き、本当にありがたいなと感じています。
編集部
闘病生活を振り返ってみて、後悔していることなどありますか?
mayu
しこりを自覚し続けていたものの、医師が非常に忙しく、「診察してほしい」となかなか伝えられなかったことを後悔しています。あの時きちんと伝えていたら、もっと早期に発見できていたかもしれません。
編集部
現在の体調についても教えてください。
mayu
ホルモン療法による全身の関節痛や筋肉痛、ホットフラッシュに悩まされています。また、今使っている「エスワン(S-1)」という抗がん剤は、口内炎や舌の炎症ができやすく、胃腸の調子も不安定でつらいですね。さらに、肌に色素沈着が出てしまうこともあります。でも、「副作用は治療を頑張っている証しだ」と思って頑張っています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
mayu
悪い結果が出たときは、表情に出さないでほしいですね。がんの転移を調べるためのPET検査の時、検査前は明るく接してくれていた看護師さんが、検査後には悲しげな顔になり元気がなくなったんです。「転移があったのかな?」と不安が増大してしまったので、できるだけ普通に接してもらえると助かります。過度に病人扱いする必要はありません。
編集部
最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
mayu
がんになって思うのは、「がんは人生の一部分であり、がんになっても私は私」ということです。病気になる前の自分と、病気になってからの自分は何も変わりません。がんは誰にでも起こりうることですから、がんになっても何も諦める必要はありません! むしろ、病気になったからこそ、大切なことに気が付けたし、価値観も大きく変わりました。毎日の普通の生活は、奇跡の連続で当たり前ではありません。人生はたった一度、有限です。最後にもう一つ。今は、女性の2人に1人ががんになる時代です。少しでも早く見つけられるよう、検診はしっかり受けてほしいなと思います。
編集後記
乳がんは、早期に見つけることで治療の選択肢が広がる病気です。自覚症状が全くない場合でも、定期的にがん検診を受けることが早期発見につながります。しこりや違和感など、気になる症状がある人は、ためらわずに乳腺外科を受診してみてください。少しの勇気が、大きな助けとなるかもしれません。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。



