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「肝臓がんの前兆となる4つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

 更新日:2023/11/15
「肝臓がんの前兆となる4つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

肝臓がんの初期症状とは?Medical DOC監修医が肝臓がんの初期症状・なりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

飯田 綾子

監修医師
飯田 綾子(医師)

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2009年奈良県立医科大学卒業。大阪市立大学医学部附属病院で初期臨床研修後、大阪市立総合医療センター消化器内科レジデントを経て、大阪市立大学大学医学部附属病院肝胆膵内科で学位を取得。現在は患者さんの不安に寄り添い、何でも相談できるかかりつけ医を目指して、大阪市内のクリニックで高血圧や糖尿病など主に慢性疾患の外来や在宅診療を行っている。消化器病専門医、肝臓専門医、総合内科専門医、認定産業医の資格を有する。

「肝臓がん」とは?

肝臓がんは大きく肝細胞がんと肝内胆管がんに分けられます。そのうち肝細胞がんが94%を占め、原因はC型肝炎ウイルスが最も多く、次いでB型肝炎ウイルス、アルコールと続きます。近年は抗ウイルス治療やワクチンの発達のおかげでウイルス性肝細胞がんは減少し、相対的に非アルコール性脂肪肝炎や原因不明の肝細胞がんが増加しています。今回は肝臓がん、特に肝細胞がんの初期症状、どんな人がかかりやすいのか、予防法はあるのかなど説明していきます。

肝臓がんの前兆となる初期症状

「肝臓は沈黙の臓器」と耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?その通り。肝臓の病気は自覚症状が出にくいという特徴があります。
実際、肝臓がんも初期の自覚症状に乏しく、がんが進行して初めて黄疸や腹水、右季肋部痛を認めることが多いです。肝臓がんは慢性肝炎や肝硬変が背景にあるため、肝臓がんの前兆となる初期症状とは、肝機能低下による種々の症状と言えます。全身倦怠感、黄疸、下肢のむくみ、腹水、肝性脳症などです。健診の血液検査や腹部エコーで慢性肝炎や肝硬変を指摘された場合は、定期的に血液検査や画像検査を行うことで肝臓がんを早期に発見することができます。

黄疸

黄疸が出ると、白目や皮膚が黄色っぽくなり、便が白っぽい、尿が黄褐色になります。これは、肝臓の機能が低下しビリルビンとよばれる色素を代謝できなくなることで起こる症状です。また、黄疸が出ると皮膚にかゆみを感じる方もいます。診断は血液検査で行いますので、黄疸が出ているかもと心配される方は一度近くの内科を受診してください。

下肢のむくみ

肝臓がんの初期症状として、下肢のむくみや腹水が出ることもあります。これは肝機能の低下により、肝臓で合成されるアルブミンというタンパク質が減少してしまい、血管内に水分を保持できないために起こります。塩分摂取を控えることで症状を落ち着かせることが期待できますが、改善しない場合は早めに内科を受診してください。血液検査や腹部超音波検査などを行い、利尿剤が必要となることもあります。

肝性脳症

頭がぼーっとしたり、手の指が震えたりするような場合、肝性脳症が出ている可能性があります。肝性脳症とは、肝臓の解毒機能が低下するために血液中のアンモニアなどの濃度が上昇することで起こります。便秘や高タンパクな食事、消化管出血などで悪化します。排便コントロールをしっかり行い、分枝鎖アミノ酸製剤を用いて再発しないように気を付ける必要があります。肝性脳症を疑う症状が出た場合は早めに近くの内科を受診してください。

右季肋部痛

右季肋部(きろくぶ)とは右側の脇腹、みぞおちのあたりのことを指します。肝臓がんの症状として、この部位に鈍い圧迫するような痛み、倦怠感、微熱などが出ることがあります。これは進行した肝臓がんに認められることがあり、このような症状がある場合は早めにかかりつけ医を受診してください。

肝臓がんになりやすい人の特徴

B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスに感染している

日本では肝臓がんに罹患する方の70%がB型あるいはC型慢性肝疾患を背景にもちます。男性:女性=2:1と男性に多く、B型肝炎由来の肝臓がんの方がC型肝炎由来よりも若年で発がんすると言われています。

アルコールの過剰摂取

抗ウイルス治療の進歩により近年では肝炎ウイルスが原因ではない肝臓がんが増えてきています。危険因子として肝硬変、アルコール過剰摂取、喫煙、肥満、脂肪肝、糖尿病が挙げられます。肝硬変の原因は、肝炎ウイルス以外ではアルコール性が最も多く、次いで非アルコール性脂肪肝炎、胆汁うっ滞性や自己免疫性などが続きます。
一般的な成人男性の適正飲酒量は1日純アルコール量20g、女性はその半分とされています。男性で缶ビール500ml程度です。1日40g以上の飲酒は生活習慣病のリスクを上げることが知られており、それ以上の飲酒は控えるようにしましょう。休肝日を設けることも忘れずに。

脂肪肝

脂肪肝も肝臓がんの危険因子の一つです。脂肪肝とは肝臓に中性脂肪が異常に蓄積した状態を言います。脂肪肝の原因としては、アルコールの過剰摂取以外に肥満、糖尿病、脂質異常などによる過栄養が最も多いです。一般的に適正なカロリーは標準体重(BMI22で計算)あたり1日30kcalです。165cmの方で約1800kcalとなります。節酒と腹八分目を意識し、適度な運動を日常的に行うことで脂肪肝のリスクを下げることができます。

糖尿病

糖尿病も肝臓がんの危険因子です。糖尿病は慢性的に血糖値が高くなる疾患です。原因としては、血糖値を下げるインスリンというホルモンの分泌低下やインスリンに対する抵抗性が言われています。両親が糖尿病なら糖尿病になりやすいなど遺伝的な要因もありますが、特に高脂肪食の過食、運動不足、肥満、ストレスなども原因となります。前述の脂肪肝と被りますが、カロリーの過剰摂取に気を付けて、適度な運動でストレスをためにくい生活習慣をもつことで糖尿病のリスクも下げることができます。

喫煙

喫煙も肝臓がんの危険因子の1つです。喫煙だけが原因で肝臓がんが発生するという訳ではないのですが、慢性肝炎や肝硬変などを指摘されている方は、喫煙することでさらに発がんのリスクが上がると言われています。タバコは発がんという点に関しては百害あって一利なしです。強く禁煙をおすすめします。

肝臓がんの予防法・早期発見方法

ワクチン接種

肝臓がんの予防として、まず一番重要なことは、B型、C型肝炎ウイルスに感染しないことです。特に、B型肝炎ウイルスはワクチンで感染を予防することができます。2016年から定期接種となっていますが、それ以前の方で人の体液などに触れる可能性のある方はワクチンを接種してください。

生活習慣の改善

これまでに述べたように、喫煙や大量のアルコール摂取、糖尿病や脂肪肝は肝臓がんのリスクを上昇させます。
これらに対する予防法として、日常生活では先ほど述べたように、禁煙、節酒とカロリーを摂りすぎない食事、適度な運動を心がけてください。
そうすることで肝臓がんのリスクである肥満、糖尿病、脂肪肝を予防することができます。

定期健診

肝臓の病気は自覚症状が出にくいという特徴があるため、早期発見には定期的に健診を受けることが重要になります。内科の外来をしていると、自覚症状は何もなくても、健診の血液検査で肝機能の異常を指摘されたから受診したという方はたくさんおられます。詳しい血液検査や腹部超音波検査などを行い、必要に応じて定期的な血液検査や画像検査で肝機能が落ちていないか、肝臓がんが発生しないかをみていくことができます。

すぐに病院へ行くべき「肝臓がんの初期症状」

ここまでは肝臓がんの初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

吐血症状の場合は、救急科へ

肝臓がんが進行して、肝硬変(肝臓の機能低下が進んで末期になった状態)になっていた場合、食道や胃に静脈瘤ができることがあります。静脈瘤とは、肝臓が硬くなることで、肝臓を栄養する門脈という血管にうまく血流が流れないようになり、滞った血流が胃や食道の表面に異常血管(側副路)を作って逆流している状態です。静脈瘤が存在しているだけでは症状がないのですが、破裂すると大量に出血し、非常に危険な状態になります。気付かないうちに肝硬変が進行していた場合、突然の吐血で発症することもあります。吐血、黒色便を認めた場合は、止血術や輸血が必要になることもあるのですぐに救急外来を受診してください。

受診・予防の目安となる「肝臓がん」のセルフチェック法

  • ・白目が黄色い、尿が茶褐色、便が白いなどの黄疸の症状がある場合
  • ・右脇腹付近に鈍痛がある場合
  • ・下肢のむくみや腹水を疑う症状がある場合
  • ・手の指が震える、ぼーっとする症状がある場合

「肝臓がんの初期症状」についてよくある質問

ここまで肝臓がんの初期症状を紹介しました。ここでは「肝臓がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肝臓がんを疑う初期症状が現れた場合、血液検査の数値はどのように変化しますか?

飯田 綾子飯田 綾子 医師

肝障害があるとAST、ALTという数値が上昇します。また黄疸などの症状であれば、総ビリルビンという値が上昇します。脚のむくみや腹水の増加がある場合はアルブミン(体内のタンパク質の一種)の低下が見られることが多く、また肝硬変があれば血小板数の低下を認めます。肝臓がんを疑って血液検査をする場合、腫瘍マーカーを調べることが多いと思います。肝細胞癌であればAFPやPIVKA-Ⅱという数値の上昇を認めることがあります。

編集部まとめ

肝臓は沈黙の臓器です。肝臓がんの予防、早期発見には食事、運動などの生活習慣の改善と定期的な健診が欠かせません。心地よい毎日を送るために、禁煙、アルコールや高脂肪食の過剰摂取を避け、適度な運動を心がけてください。年1回健診を受け、必要があればしっかり受診してください。そして、もし気になる症状が出た場合は迷わず、まずは内科を受診してください。血液検査で分かることがたくさんあります。

「肝臓がんの初期症状」と関連する病気

「肝臓がんの初期症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

下肢浮腫をきたす病気

黄疸をきたす病気

「肝臓がんの初期症状」と同様の症状が出た場合、上記の可能性もあります。原因により治療法も変わってくるので、症状が出た場合は早めに内科を受診してください。

「肝臓がんの初期症状」と関連する症状

「肝臓がんの初期症状」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 全身倦怠感
  • 食欲低下
  • 体が痒い
  • 手の平が赤い
  • 体がむくむ
  • 手足がつる

上記の症状が出た場合、肝機能が低下している可能性があります。症状が長引く場合は内科を受診してください。

この記事の監修医師