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健康診断で「メタボリックシンドローム」と言われたらどんな病気のリスクが?

 公開日:2023/11/07
健康診断で「メタボリックシンドローム」と言われたらどんな病気のリスクが?

健康診断でメタボリックシンドロームと言われたらどうすべき?Medical DOC監修医が結果の見方や基準値・主な原因と病気のリスク・対処法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

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メタボリックシンドロームとは?健康診断でメタボを指摘されたら

メタボリックシンドロームとは、糖尿病など「生活習慣病予備軍」と呼ばれる状態です。ウエスト周りが男性では85㎝、女性では90㎝以上で、かつ血圧・血糖・脂質の値の3つのうち、2つ以上が基準値を超えた状態と定義されています。
厚生労働省によると、メタボリックシンドロームに該当する・あるいは予備軍の方は40〜75歳の男性では2人に1人、女性では5人に1人と報告されています。
健康診断を受けた際にメタボリックシンドロームと診断された場合には、生活習慣を見直し適度な運動を行ったり、バランスの良い食事を取ったり、あるいは禁煙に取り組むなどの対策を行うことが大切です。

メタボリックシンドロームの原因は?

糖質や脂質などの取り過ぎなどで、内臓肥満が蓄積されることがメタボリックシンドロームの引き金となります。
メタボリックシンドロームには、内臓脂肪が大きく関わっています。
内臓脂肪が過剰に蓄積されると、インスリンの働きが悪くなり、高インスリン血症と呼ばれる状態になります。すると、血糖値の上昇につながります。また、内臓脂肪が分解されて生じる遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)が肝臓に流れ込み、脂質異常症も発症します。内臓脂肪型の肥満では、アディポサイトカインという物質の異常が生じ、動脈硬化を引き起こすとも報告されています。

メタボリックシンドロームと肥満の違いは?

肥満には、内臓に脂肪がたまる「内臓型肥満」と、皮下組織に脂肪がたまる「皮下脂肪型肥満」があります。
内臓脂肪型肥満は、腸や肝臓などのお腹の脂肪の周りに脂肪がたまり、お腹がぽっこりとでるタイプの肥満で、男性に多くみられます。一方、皮下脂肪型肥満は、二の腕や腰回り、お尻などの皮下に脂肪がたまり、体の表面からつまむことが容易であるタイプの肥満で、女性に多くみられます。
メタボリックシンドロームは、内臓肥満に加えて、高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態をさしています。つまり、単に腹囲が大きい(肥満)というだけでは、メタボリックシンドロームにはあてはまりません。

メタボリックシンドロームの予防方法は?

メタボリックシンドロームの予防のためには、まずは食生活を見直すことが大切です。野菜から食べる、適切なカロリー摂取量を守るといった工夫で、肥満を予防することがメタボリックシンドロームの予防につながります。また、有酸素運動は体重減少にも効果がみられるほか、インスリンの働きを良くしてくれる効果も期待できます。
喫煙は動脈硬化などの血管を傷めてしまう原因となりますので、禁煙しましょう。

メタボリックシンドロームの治し方・改善方法は?

メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪を減らすことが治療の主なゴールとなります。最近の報告では、体重の3%を減少させるだけでも、効果がみられるといわれています。
治療では、食事療法や運動療法で、栄養過多の状態を改善します。また、有酸素運動で内臓脂肪を減らせることが期待できますので、まずは散歩などの軽い運動から始めると良いでしょう。

健康診断の「メタボリックシンドローム」の見方と再検査が必要な「メタボリックシンドローム」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断の「メタボリックシンドローム」の基準値

メタボリック症候群の診断基準はこのようになっています。

必須項目 (内臓脂肪蓄積)ウエスト周囲径 男性 ≥ 85cm 女性 ≥ 90cm
*内臓脂肪面積 男女ともに≥100㎠に相当
選択項目 高トリグリセライド血症
かつまたは
低HDLコレステロール血症
≥ 150mg/dL
≥ 40mg/dL
収縮期(最大)血圧
かつまたは
拡張期(最小)血圧
≥ 130mmHg
≥ 85mmHg
空腹時高血糖 ≥ 110mg/dL

内臓脂肪の面積は、可能であれば、CTスキャンなどで内臓脂肪量測定を行うことが望ましいとされています。

健康診断の「メタボリックシンドローム」の判定基準と内容

メタボリックシンドロームかどうかを診断するためには、身体測定や内臓脂肪CTなどでBMI(body mass index:身長と体重から算出される、肥満度を表す体格指数。体重(kg)÷(身長(m)×*身長(m)))を調べ、血圧を測定し、血液検査で血糖値や血清脂質の値をチェックします。
その上、以下のような項目や判定基準によって、特定保健指導の対象とされる方ならびに保健指導のレベルを分けていきます。

■内臓脂肪型肥満(腹囲とBMIで内臓脂肪蓄積のリスクを判定します)

内臓脂肪型肥満A 腹囲:男性85cm以上、女性90cm以上
内臓脂肪型肥満B 腹囲:男性85cm未満、女性90cm未満
かつBMI:25以上

■追加リスク(健診結果・質問票より追加リスクをカウントします)

(1)血糖 空腹時血糖値
※100mg/dl以上
またはHbA1c 5.6%(NGSP値)以上
(2)脂質 中性脂肪150mg/dl以上
またはHDLコレステロール40mg/dl未満
(3)血圧 収縮期血圧(最高血圧)130mmHg以上
または拡張期血圧(最低血圧)85mmHg以上
(4)喫煙歴 (1)~(3)のリスクが1つでもある場合にリスクとして追加

これらに基づいて、内臓脂肪型肥満Aでリスクが1つ、内臓脂肪型肥満Bでリスクが1つ~2つであれば、「動機づけ支援」、内臓脂肪型肥満Aでリスクが2つ以上、内臓脂肪型肥満Bでリスクが3つ以上であれば「積極的支援」をしていきます。

なお、血圧、血糖値、脂質がそれぞれすでに治療を要するレベルの異常値と健診で指摘された場合には、その治療を行うために内科を受診することが必要です。

健康診断で「メタボリックシンドローム」と判定されたら気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「メタボリックシンドローム」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

高血圧

高血圧は、収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上のことです。
甲状腺や副腎などに病気があることで引き起こされる二次性高血圧もありますが、日本人の多くはそれらの原因のない本態性高血圧です。主な要因は食塩の摂り過ぎです。
高血圧はそれ自体では特に症状はありませんが、放置しておくと動脈硬化の原因となり、心疾患や脳血管障害を引き起こしうるため、健康診断で血圧が高いと言われた場合には、まずは自宅でも毎日血圧を測定し、減塩や運動など生活習慣改善、そして内科受診をしましょう。

高脂血症

脂質異常症は、LDLコレステロール:140mg/dL以上、トリグリセライド:空腹時150mg/dL以上、非空腹時175mg/dL以上、Non-HDLコレステロール(総コレステロールからHDLコレステロールを差し引いたもの):170mg/dL以上、HDLコレステロール40mg/dL未満の際に診断されます。遺伝的な要因や、脂質や糖質の取り過ぎといった食生活の乱れ、運動不足、内臓脂肪型肥満などが原因となります。
動脈硬化性疾患の原因となりますので、生活習慣改善を行うことが大切です。一方で、他の持病などを持っている方の場合では、早めに内服治療を開始する必要がある場合もあるので、早めに内科を受診しましょう。

糖尿病

糖尿病は、インスリンという血糖値を下げるホルモンの作用が不足することで、高血糖の状態が慢性的に続く病気です。網膜症や腎症、神経障害といった3大合併症が知られています。また、心疾患や脳卒中などになりやすくなるという問題もあります。
健康診断で、空腹時の血糖値が126mg /dl以上、あるいはHbA1cが6.5%以上の際には、糖尿病の可能性がありますので、糖尿病内科や内科を受診するようにしましょう。
糖尿病の予防のためには、エネルギーを摂り過ぎないことや、運動をすること、アルコールを控えること、たばこを吸わないこと、大豆や野菜、海藻、きのこなどを多くとること、また砂糖の入った飲み物を飲み過ぎないということなどがあります。

「メタボリックシンドローム」の正しい対処法・改善法は?

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積に加えて、血圧・血糖・脂質の異常の2つ以上が組み合わさった病態です。特に症状がないことは多いのですが、放置すると動脈硬化が急速に進み、心臓病や脳卒中を引き起こす危険があります。
メタボ健診や特定検診と言われる特定健康診査などで指摘を受けることもあるでしょう。
その際には、生活習慣を改善することで、メタボリックシンドロームの予防や改善をすることができます。
メタボリックシンドロームを予防したり、改善したりするために、以下のような指針を参考に食事の献立を考えていきましょう。

  • 食塩は10g/日以下に控える(高トリグリセリド(中性脂肪)血症の場合は6g/日以下)
  • こんにゃくやキノコなどの食物繊維を多くとる
  • 甘いジュースやお菓子を控える
  • 良く噛んで食べ、腹七~八分でおさえる
  • 緑黄色野菜を積極的に食べる
  • 間食や夜食をせずに決まった時間に食事する
  • アルコールは飲み過ぎない

メタボリックシンドロームの改善のためには、1週間で10メッツ・時(メッツに時間をかけて、身体運動の量を表す単位)以上のウォーキングや自転車、ジョギング、水泳、体操を行うことが勧められます。(メッツとは:運動の強さの単位のことで、座って安静にしている状態が1メッツ、普通の歩行が3メッツに相当します。個人の体力や運動機能などに応じて適切な量の運動を行いましょう。
こうした食生活や運動習慣の改善は、一人で行うことは難しいかもしれません。その際には、特定保健指導を受け、情報提供や適切な生活習慣を相談することも可能な場合がありますので、活用してみると良いでしょう。

「メタボリックシンドローム」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「メタボリックシンドローム」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

メタボリックシンドロームはどのように診断されますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

健康診断の身体計測や場合によっては内臓脂肪CTスキャン、血圧測定、血液検査で調べていきます。
日本では、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断されます。

メタボリックシンドロームの基準となる腹囲を教えてください。

木村 香菜木村 香菜 医師

男性85cm・女性90cm以上です。

メタボとは簡単に言うとどんな危険性がある健康状態ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

内臓脂肪型肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすくなります。

内臓脂肪が多いとメタボリックシンドロームになるのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

はい、内臓脂肪型肥満はメタボリックシンドロームの原因の一つです。内臓脂肪から分泌されるアディポサイトカインという物質が身体にさまざまな悪影響を及ぼすと考えられています。

メタボリックシンドロームと言われたらどのような食事をすればいいですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

塩分を控え、野菜やキノコ、海藻類をたっぷりととります。甘い飲み物やお菓子類には砂糖や脂肪分が多く含まれていることが多いため、控えます。肉の脂身やソーセージやウインナーなどの加工肉のとりすぎには気をつけましょう。

まとめ 健康診断で「メタボリックシンドローム」と言われたら生活習慣を見直そう!

メタボリックシンドロームは、自覚症状がなくとも動脈硬化の引き金となり、脳卒中や心臓疾患の原因になりえます。今回の記事を参考に、健康診断でメタボリックシンドロームあるいはその予備軍と言われた場合には、食事や運動などの生活習慣の見直しをして、まずは適正体重になるようにしていきましょう。

「メタボリックシンドローム」と判定されたら気をつけたい病気

「メタボリックシンドローム」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

内分泌内科の病気

内科の病気

メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪型肥満に加え、高血圧や高血糖、脂質異常症が合併します。放置しておくと、脳血管障害ならびに心臓疾患に至るリスクがあります。

この記事の監修医師