「ただの痔」と放置しないで。血便が出たときに考えられる「重大な病気のサイン」

「排便したら血が混じっていた」――。血便自体は珍しい症状ではなく、気づいても「痔(じ)だろう」と自己判断して様子を見てしまう人は少なくありません。しかし、血便の原因は痔だけではなく、大腸がんや炎症性腸疾患などの重篤な病気である可能性もあります。特に初期の大腸がんは症状に乏しく、血便が数少ないサインとなることもあるため注意が必要です。血便の原因や見分け方、ただちに受診すべき重大な症状について、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長の柏木宏幸先生に詳しく解説してもらいました。
※2026年4月取材。
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監修医師:
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)
血便が出たら痔? それとも大腸がん? まず知っておきたい原因疾患

編集部
血便が出ると「痔かな」と気楽に構える一方で、大きな病気のサインではないかと心配にもなります。実際にがんが原因のケースはどのくらいあるのでしょうか?
柏木先生
血便を主訴に外来を受診した患者さんのうち、大腸がんが原因であるケースは約2〜3%程度とされています。つまり、血便の大多数は、いぼ痔や切れ痔といった良性疾患が原因です。
しかし、だからといって安心はできません。大腸がんの初期はごく少量の出血しか見られないことが多く、万が一大腸がんだった場合は「少量の出血だから大丈夫」「痔だろう」という自己判断が発見を遅らせる原因になります。血便が見られた場合は、出血量に関わらず原因を確認することが必要です。
編集部
血便が出る原因として、大腸がん以外にはどのような病気や状態が考えられますか?
柏木先生
血便の原因は多岐にわたります。最も頻度が高いのは痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)などの肛門疾患で、次いで大腸ポリープ、大腸憩室出血(だいちょうけいしつしゅっけつ)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、感染性腸炎(食中毒など)が挙げられます。
また、便の色も原因特定の手がかりになります。肛門に近い部位からの出血ほど鮮やかな赤色になりやすい一方、胃や十二指腸など上部消化管からの出血は、胃酸により酸化されるため黒いタール状の便として表れることが多くなります。
編集部
トイレットペーパーに少し血がつく程度でも、受診したほうがよいのでしょうか?
柏木先生
少量であっても、受診をお勧めします。ペーパーに少し血がついた程度なら痔だろうと自己判断して受診しない人は非常に多い印象ですが、痔と大腸がんは見た目の出血量や色だけでは区別できません。特に40歳以上、大腸がんの家族歴がある、血便を2回以上繰り返す、便の太さや回数に変化がある、といったリスク因子に該当する場合は、大腸内視鏡検査を含む精査が強く推奨されます。「たかが少量の出血」と思いがちですが、些細なサインも見逃さないことが大切です。
血便で早急に受診すべき「6つの特徴」と随伴症状

編集部
すぐに受診すべき血便の特徴を教えてください。
柏木先生
以下のいずれかに当てはまる場合は、早急な受診を強くお勧めします。
① 大量出血や血の塊が出る
② 黒いタール状の便が出る
③ 便全体に血が混じっている
④ 腹痛・体重減少・立ちくらみや倦怠感などの貧血症状を伴う
⑤ 血便を繰り返す
⑥ これまでと排便パターンが変わった
特に①と②は深刻な出血を示すサインであり、ただちに受診をお勧めします。自己判断せず、まずは消化器内科にご相談ください。
編集部
血便に伴って表れる症状で注意すべきポイントはありますか?
柏木先生
血便と同時に以下の症状がみられた場合は、特に注意が必要です。
① 意図しない体重減少
② 持続する腹痛や腹部膨満感
③ 排便しても残った感じがする(残便感)
④ 便が以前より細くなった(便の狭小化)
⑤ 慢性的な貧血による倦怠感・息切れ・顔色不良
⑥ 原因不明の発熱が続いている
これらの症状は大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)などの重篤な疾患でみられることがあります。一つでも血便と重なる場合はすみやかに消化器内科を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。
様子見で後悔しないために。受診の判断基準と放置した場合のリスク

編集部
年齢が若い人でも血便があれば受診したほうがよいのでしょうか?
柏木先生
年齢にかかわらず、血便があれば受診をお勧めします。大腸がんは一般的に50歳以上に多い疾患ですが、近年は若年性大腸がんが増加傾向にあり、20〜30代での発症例も報告されています。また、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は10〜30代に多く発症し、血便・下痢・腹痛が主な症状です。若い世代は「自分はまだ大丈夫」と考え、受診が遅れる傾向にあります。血便という症状が出ている以上、年齢を理由に判断を先延ばしにせず、まずは消化器内科に相談することが大切です。
編集部
血便を自己判断で放置した場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?
柏木先生
がんや炎症性腸疾患など重篤な疾患の発見が遅れることです。一般的にがんはステージ(進行度)が進むほど治療が難しくなり、生命予後に影響します。特に大腸がんでは差が開きやすく、早期であるステージ1の5年生存率が約95%以上であるのに対し、進行したステージ4では約20%程度まで低下します。早期発見・早期治療できれば根治が見込める病気だけに、放置による機会損失は非常に大きいといえます。
編集部
血便で病院を受診した場合、どのような診察や検査が行われるのでしょうか?
柏木先生
一般的な流れは以下のとおりです。
問診(いつから・どのくらいの頻度・便の色や量・そのほかの症状の確認)で状況を把握し、診察室にて診察をします。
その結果をもとに医師が判断し、痔の可能性が高い場合には肛門や直腸診を案内します。大腸の病気の可能性が高い場合や精密検査が必要な場合には、採血や大腸内視鏡検査などを案内します。
内視鏡検査は原因の確定診断に最も有用な検査ですが、異常を見つけるだけでなく、異常がないことを確認するためにも大切な検査となります。
編集部
受診するか迷ったとき、どのように判断すればよいのでしょうか?
柏木先生
迷ったときの原則は「迷ったら受診」のひと言に尽きます。下部消化管を専門とする医師でも診察してみないと判断が難しいことも多いためです。血便症状があるときに受診してもらえば、出血場所を特定しやすくなります。
「痔だから」「少量だから」「若いから」「仕事が忙しいから」という理由で受診を先延ばしにすることは、重大な疾患の発見を遅らせる原因になり得ます。便潜血検査(健康診断や検診で行われる検便)が陰性であっても、上述したような症状がある場合にはただちに受診が必要です。
血便は体からの重要なシグナルです。受診して何もなければ安心できるという前向きな気持ちを持ち、ぜひ消化器内科へご相談ください。
編集部まとめ
血便の多くは痔などの良性疾患によるものですが、見た目や出血量だけで原因を見極めることは容易ではありません。特に大腸がんは、早期発見できれば高確率で治療が可能とされており、血便はその重要なサインの一つです。自己判断で様子を見ることが、結果的に診断の遅れにつながるケースも少なくありません。血便に気づいた際は軽視せず、早めに消化器内科を受診することが大切です。本稿が読者の皆様にとって、適切な受診行動を考えるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報

| 所在地 | 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F |
| 診療科目 | 内科、消化器科、皮膚科、胃腸科 |
| 診療時間 | 月~日:8:30~17:30 (月・火・水・金・土)外来・内視鏡検査 (木・日)内視鏡検査のみ |
| 休診日 | 土日以外の祝日 ※予約されてない方の最終受付は16:30となります。受付・問診にお答えいただく時間がありますので、16:30までにはお越しいただきますようにお願いいたします。 ※当院は内視鏡検査を受ける際に女性医師か男性医師の選択はできますが、他医師指定は御対応できませんのでご了承ください。女性医師ご希望の場合は、予約時に女性医師の選択が可能になっております。 |




