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運動不足・座りすぎで大腸がんリスク上昇? 在宅ワーク時代に今からできる予防法

 更新日:2026/04/16
運動不足・座りすぎで大腸がんリスク上昇? 在宅ワーク時代に今からできる予防法

大腸がんは、食事や運動といった生活習慣と深く関わるがんとして知られています。なかでも近年、運動不足だけでなく「長時間座りっぱなしの生活」が健康に及ぼす影響が注目されています。在宅ワークが増えた現代では、知らず知らずのうちに体を動かす機会が減っている人もいます。今回は、大腸がんと生活習慣の関係をはじめ、座りすぎが体に与える影響、そして今日から実践できる予防のポイントについて、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院院長の柏木宏幸先生に詳しく解説いただきました。

※2026年1月取材。

柏木 宏幸

監修医師
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

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2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。

大腸がんと生活習慣の関係

大腸がんと生活習慣の関係

編集部

大腸がんは、生活習慣と関係のあるがんなのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

大腸がん全体の70%前後が、加齢や生活習慣や環境によるものと考えられています。日本で大腸がんが増加した主な原因として、食生活の欧米化が考えられています。赤身肉や加工肉の過剰摂取、高脂肪食、食物繊維の不足は大腸がんのリスクを高めます。また、運動不足、肥満、過度な飲酒、喫煙もリスクを上昇させる要因です。そのため、適度な運動習慣、野菜や果物を多く含むバランスの良い食事、適正体重の維持、禁煙、節酒といった生活習慣の改善により、大腸がんリスクの大幅な低減が期待できます。

編集部

運動不足は、大腸がんのリスクを高めることにつながりますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

運動不足は大腸がんのリスクを高めます。運動不足は腸の蠕動(ぜんどう)運動を低下させ、便通を悪くします。便が腸内に長く留まると、便から発生する発がん物質に腸が晒される時間も長くなり、大腸がんのリスクが高まります。そのほかにも運動不足では、肥満、免疫力など多くの大腸がん発症メカニズムに関与すると考えられています。

編集部

運動による大腸がんの予防・再発防止効果はどの程度でしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

国内外の研究において、身体活動量が多い人は少ない人と比べて、大腸がんのリスクが約30%低下するという報告が複数示されています。大腸がんの予防は、世界保健機関(WHO)が推奨する週150分程度のウォーキングなど、適度な運動習慣を取り入れ日常的に体を動かすことが重要な柱です。このほか、海外の研究では手術後に抗がん薬が必要であった大腸がん患者さんに運動を行わせたことで、再発リスクが28%低下、死亡率が37%低下したとの報告もあります(N Engl J Med.2025 Jul 3;393(1):13-25)。

編集部

在宅ワークやデスクワーク中心の人は特に注意が必要なのでしょうか?具体的にどのような運動をすればよいですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

在宅ワークやデスクワーク中心の人は特に注意が必要です。長時間座りっぱなしの生活は身体活動量の低下につながり、大腸がんのリスクを高めます。対策として、1時間ごとに軽いストレッチをする、通勤時や昼休みにウォーキングを取り入れる、階段を使うなど、日常生活で意識的に体を動かす工夫をしましょう。また、運動習慣とともに、定期的な大腸内視鏡検査を受けることも大腸がん予防につながります。

「座りっぱなしの生活」が体に与える影響

「座りっぱなしの生活」が体に与える影響

編集部

長時間座り続けることは、体にどのような影響を与えますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

長時間座り続けることは、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。大腸がんに関連する影響としては、腸の蠕動運動が低下し、便秘になりやすくなって大腸がんのリスクが高まるほか、基礎代謝の低下を招いて内臓脂肪が蓄積しやすくなり、肥満につながります。また、肥満は大腸がんだけでなく、糖尿病や心血管疾患のリスクも上昇させます。下半身の血流が滞ることで、むくみや血栓のリスク、筋力低下や姿勢の悪化による腰痛・肩こりも起こりやすくなります。こうした悪影響を防ぐためにはこまめに立ち上がる、軽い運動を取り入れるなど、日常的に体を動かす習慣付けが重要です。

編集部

体を動かすことは、腸の働きにどのような影響がありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

運動は腸の働きにおいて良い影響をもたらします。まず、腸の蠕動運動が活発化して便の移動がスムーズになります。便秘が改善され、便が腸内に留まる時間も短くなるため、発がん物質との接触時間も減少します。また、運動には腸内環境を改善し善玉菌を増やす効果もあります。腸内に善玉菌が増えた結果、腸のバリア機能や抗炎症作用が向上します。さらに、運動による免疫機能の向上はがん細胞の増殖抑制にもつながります。また、運動はストレスホルモンを低下させ、精神的なリラックス効果をもたらします。ストレスは腸の働きに悪影響を及ぼすため、間接的に腸内環境の改善につながります。
このように運動は肥満予防効果と合わせて、複合的な作用によって大腸がんのリスク低減に貢献します。

編集部

「運動不足」と「座りすぎ」は同じ意味でしょうか?健康への影響に違いはありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

運動不足と座りすぎは異なる意味合いで、健康への影響もそれぞれ異なります。特に座りすぎは健康を大きく損ない、死亡リスクを高めることが明らかにされています。日本人は座って過ごす時間が平均7時間/日と、世界最長であることが報告されており、座りすぎを減らす取り組みも一部の企業などで実施されています。

編集部

運動不足や座りすぎを防ぐために、日常生活ではどのようなことを意識すればよいでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

意識したい重要なポイントは、「たとえ定期的に運動している人でも、それ以外の時間に長時間座っていると健康リスクが高まる」ことです。すなわち、両方とも独立して健康に悪影響を及ぼします。理想的には、週150分の運動習慣に加えて、日中もこまめに立ち上がる、軽く体を動かすなどの工夫を心掛けることが大切です。

今日から実践!大腸がん予防のために意識できること

今日から実践!大腸がん予防のために意識できること

編集部

大腸がん予防の観点からは、どのくらいの運動や身体活動を行うことが推奨されているのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

厚生労働省による身体活動・運動ガイドでは、1日60分以上(1日8000歩以上)、週2〜3回の筋力トレーニング、息がはずみ汗をかく程度の運動を毎週60分行うことが推奨され、65歳以降では1日40分以上(1日6000歩以上)、週2〜3回の筋力トレーニングが推奨されています。そして、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにという注意点も示されています。

編集部

推奨される運動量を達成するために、どのような点を意識するとよいでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

運動の種類としては、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど、無理なく継続できるものを選びましょう。また、座りすぎ防止のため、在宅ワークなどで長時間座らざるを得ない場合も理想は30分、少なくとも1時間ごとに立ち上がり体を動かす習慣をつけましょう。忙しくて運動できない、あるいは日常的に運動が難しい人もいると思います。しかし、たとえ毎日できなくても個人の生活に合わせて少しずつ運動を習慣づける姿勢が大切です。

編集部

忙しい人や運動が苦手な人でも取り入れやすい工夫はありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

エレベーターやエスカレーターではなく階段を使う、通勤では一駅分歩く、買い物は少し遠いスーパーまで歩くなど、日々の移動時間を活用しましょう。また、掃除機がけ、床の拭き掃除、窓拭きなどの家事も運動につながります。運動が苦手な方は、まずは1日10分程度のウォーキングから始めるとよいでしょう。週に1回の運動でも健康にはプラスとなるので、最初から完璧を目指さず、できる範囲で継続しましょう。

編集部

運動以外にも、大腸がんの予防に効果的な生活習慣があれば教えてください。

柏木 宏幸先生柏木先生

運動以外で大腸がんの予防に効果的な生活習慣は、主に食生活、禁煙、飲酒、体重管理です。
食生活では、野菜や果物、食物繊維を多く摂り、赤身肉や加工肉、高脂肪食の過剰摂取を控えましょう。喫煙は大腸がんのリスクを約1.4倍高めるため禁煙は必須です。飲酒も、毎日1合以上飲むと大腸がんリスクが1.4倍上昇するため、節酒を心がけましょう。また適正体重の維持も大切です。肥満は大腸がんだけでなく、さまざまな生活習慣病のリスクを高めます。そして、定期的な大腸内視鏡検査を受けることも非常に重要です。

編集部まとめ

大腸がん予防において重要なポイントは、特別なことを一時的に行うのではなく、日々の生活の中で体を動かす習慣の積み重ねです。運動習慣がある人でも、長時間座り続けることで健康リスクが高まる点は、多くの人が見落としがちなポイントと言えます。無理のない運動を続けること、こまめに立ち上がること、バランスの良い食生活や禁煙・節酒を意識すること、そして定期的な大腸内視鏡検査を受けることが大腸がん予防の基本です。本稿が日常生活の見直しに一歩踏み出すきっかけとなりましたら幸いです。

この記事の監修医師