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うつ病はどのくらいで治るのかご存じですか? 治療法やうつ病の人との関わり方を医師に聞く

 公開日:2025/04/09
うつ病はどのくらいで治るのかご存じですか? 治療法やうつ病の人との関わり方を医師に聞く

「うつ病はどのくらいで治るのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか? うつ病は誰にでも起こりうる病気ですが、回復までの期間や治療方法は人それぞれ異なるようです。また、重症度が高いほど再発するリスクも高いうつ病ですが、再発予防はできるのでしょうか? 今回は、うつ病の治療期間や再発予防の具体的な方法などについて、日本精神神経学会専門医・指導医の種市摂子先生に詳しく解説していただきました。

種市 摂子

監修医師
種市 摂子(Dr.Ridente株式会社 代表取締役)

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香川大学医学部、名古屋大学医学部大学院卒業。救急医療、脳神経外科診療、睡眠診療、精神科診療などを経て、予防医療を目的に、2008年より産業医サービス提供開始。これまでに、楽天株式会社をはじめ、IT企業、ベンチャー企業、IPOを目指す企業を中心に、650事業所以上を支援、ハラスメントゼロ・休職者ゼロのカスタマーサクセスにつなげている。日本精神神経学会専門医・指導医。Well-being向上委員会委員、日本スポーツ精神医学会会員、日本精神神経学会(精神保健に関する委員会委員)、健康経営アドバイザー、睡眠衛生コンサルタント、ストレングスファインダー認定コーチ、日本産業精神保健学会優秀賞、T-PEC優秀専門医。

うつ病は治る? 治療法について知る

うつ病は治る? 治療法について知る

編集部編集部

うつ病は完治する病気ですか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病は適切な治療を受ければ多くの人が回復しますが、再発のリスクもある病気です。うつ病の約80%は治療によって大幅に改善し、抗うつ薬や認知行動療法が有効とされていますが、再発率は50%以上と高いため、回復後も生活習慣の改善やストレス管理が重要です。研究によると、認知行動療法を継続した人、マインドフルネス瞑想を取り入れた人、信頼できる人との交流がある人、適度な運動や良好な睡眠習慣を維持している人は、再発リスクが低いと示されています。

編集部編集部

うつ病の治療にはどのような方法がありますか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の治療には、主に薬物療法心理療法生活習慣の改善のほか、環境調整などがあります。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 薬物療法:抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンのバランスを整え、症状をさせる
  • 心理療法:認知行動療法は、ネガティブな考え方を修正し、ストレス対処法を身につけるのに役立つ。また、マインドフルネス瞑想は、自律神経を整え、心身の安定に効果があるとされている
  • 生活習慣の改善:十分な睡眠、適度な運動、社会的なつながりを持つことが回復を助ける

そのほか、重症の場合には、自宅や職場を離れて入院治療をおこなうことや、電気けいれん療法(ECT)を選択することもあります。

編集部編集部

治療方法はどのような基準で選択されますか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の治療法は、症状の重さ・本人の希望・治療ガイドラインに基づいて選択されます。軽症では休養や心理療法、生活習慣の改善が推奨されますが、中等度以上の症状では、薬物療法と心理療法の併用が勧められます。重症の場合、薬物療法に加えて入院や電気けいれん療法(ECT)が考慮されることもあります。また、「薬を使いたくない」「早く治したい」などの本人の価値観も考慮し、医師と相談しながら最適な治療法を決めていくことが重要です。

うつ病にはどのくらいの期間治療が必要?

うつ病にはどのくらいの期間治療が必要?

編集部編集部

うつ病の治療にはどのくらいの期間が必要ですか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の治療期間は、症状の重症度や患者さんの状況によって異なります。主要な国際的ガイドライン(アメリカ精神医学会、英国国立医療技術評価機構、世界保健機関)では、軽症の場合、薬物療法をおこなわなくても心理療法(認知行動療法や対人関係療法)によって回復できるとされています。一方、中等症以上では抗うつ薬が有効であり、特に重症例では薬物療法と心理療法の併用が推奨されています。また、運動療法や高照度光療法にもエビデンスが蓄積されています。近年では、個別化医療の重要性が指摘され、患者さんごとに適した治療戦略が求められています。

編集部編集部

うつ病の回復には個人差がありますか? どのような要因が影響するのか気になります。

種市 摂子先生種市先生

うつ病の回復には個人差があり、様々な要因が影響を及ぼします。生物学的要因としては、体質的要素や神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスが関与し、個人の回復速度に影響を与えます。また、心理的要因としては、ストレス耐性や認知の偏り(ネガティブな思い込み)の有無が回復の早さを左右します。社会的要因も重要で、社会的支援(家族・友人のサポート)が充実していると予後が良いと示されています。さらに、適切な治療の継続、運動・食事・睡眠の改善も回復を促進します。

編集部編集部

うつ病は再発しやすい病気なのでしょうか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の再発リスクは重症度と関連し、重症度が高いほど再発率が上昇すると報告されています。

編集部編集部

具体的な再発予防の方法について教えてください。

種市 摂子先生種市先生

再発予防には治療の適切な継続が重要で、中等症以上では抗うつ薬や認知行動療法の併用が推奨されています。一方で、ごく軽症のうつ病では、薬物療法は不要とされ、休養や心理療法、生活習慣の改善が有効です。また、坐禅やマインドフルネス瞑想は再発防止に効果があると科学的に示されており、ストレス対処力や回復力(レジリエンス)の向上に貢献します。さらに、睡眠の安定化、適度な運動、過度のストレスにならない環境が再発を防ぐ重要な要素です。不調を振り返り気づきや成長を得ることが、再発防止に繋がります。

うつ病の人との関わり方を知る

うつ病の人との関わり方を知る

編集部編集部

家族や友人からのサポートは、うつ病の回復にどの程度影響を与えますか?

種市 摂子先生種市先生

家族や友人からのサポートは、うつ病の回復を大きく左右する要因です。社会的支援が充実している人は、回復が早く、再発率も低下することが研究で示されています。特に感情的な支え(共感的な傾聴や励まし)や実際的な支援(生活面でのサポート)が重要です。一方、否定的な対応や孤立は症状を悪化させる可能性があります。適切な支援を受けることでストレス耐性やレジリエンスが向上し、治療の継続意欲も高まるとされています。

編集部編集部

うつ病の人と接する際に意識すべきことはありますか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の人と接する際は、共感的に寄り添い、否定せずに話を聞くことが大切です。「頑張れ」や「気の持ちよう」などの言葉は逆効果となるため避け、「あなたの気持ちを大切に思っている」と伝えることが重要です。また、日常のサポートを無理のない範囲で提供し、必要に応じて専門的な支援を勧めることも役立ちます。相手の回復には時間がかかることもあり、焦らず、安心できる環境を作ることが回復を助けるとされています。

編集部編集部

「励ましてはいけない」と聞くことがありますが、なぜ励ましてはいけないのでしょうか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病の人に「励ましてはいけない」と言われるのは、励ましがプレッシャーとなり、自己否定感を強める可能性があるためです。例えば、「頑張って」「気の持ちよう」と言われると、「自分は頑張れていない」「気持ちをコントロールできない」と感じ、かえって症状が悪化することがあります。代わりに、「あなたの気持ちを大切に思っている」「無理せず、できることを一緒に考えよう」など、承認や受容、共感を示す言葉が回復を助けるとされています。

編集部まとめ

うつ病は、適切な治療を受けることで回復が可能な病気ですが、重症度が高い場合は再発率も高いと教えていただきました。再発を防ぐためには、治療の継続や生活習慣の見直しが不可欠であり、家族や周囲の人の理解とサポートが、患者さんの回復を支える重要な要素となります。適切な関わり方を知ることで、より良い支援ができるようになると実感しました。本稿が読者の皆様にとって、うつ病について理解を深める一助となりましたら幸いです。

この記事の監修医師

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