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「うつ病」に“なりやすい人”と“なりにくい人”の違いをご存じですか?【医師監修】

 更新日:2025/04/18
「うつ病」に“なりやすい人”と“なりにくい人”の違いをご存じですか?【医師監修】

ストレスや環境の変化などによって、誰でもうつ病になる可能性はあります。しかし、うつ病に「なりやすい人」と「なりにくい人」には、それぞれ特徴があることをご存じでしょうか? 完璧主義やネガティブ思考といった性格の傾向に加え、生活習慣もうつ病の発症リスクを左右する重要な要因の一つです。そこで今回は、うつ病になりやすい人、なりにくい人の特徴や予防するための方法について、精神科専門医の種市摂子医師に詳しく解説していただきました。

種市 摂子

監修医師
種市 摂子(Dr.Ridente株式会社 代表取締役)

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香川大学医学部、名古屋大学医学部大学院卒業。救急医療、脳神経外科診療、睡眠診療、精神科診療などを経て、予防医療を目的に、2008年より産業医サービス提供開始。これまでに、楽天株式会社をはじめ、IT企業、ベンチャー企業、IPOを目指す企業を中心に、650事業所以上を支援、ハラスメントゼロ・休職者ゼロのカスタマーサクセスにつなげている。日本精神神経学会専門医・指導医。Well-being向上委員会委員、日本スポーツ精神医学会会員、日本精神神経学会(精神保健に関する委員会委員)、健康経営アドバイザー、睡眠衛生コンサルタント、ストレングスファインダー認定コーチ、日本産業精神保健学会優秀賞、T-PEC優秀専門医。

うつ病になりやすい人の特徴とは?

うつ病になりやすい人の特徴とは?

編集部編集部

うつ病には、なりやすい人となりにくい人がいるのでしょうか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病には、“なりやすい人”と“なりにくい人”がいます。 例えば、「真面目で責任感が強い人」「完璧主義な人」「自己犠牲的な人」は発症リスクが高いとされています。また、女性はホルモンの影響で男性より2倍うつ病になりやすいとされています。 年齢によるリスクを見ると、20~30代の若年層と60代以上の高齢者が特に高い傾向にあり、若者はストレスや環境変化、高齢者は孤独や体の不調が影響します。一方で、ストレスへの対処が上手な人、適度に気分転換できる人はなりにくい傾向があります。

編集部編集部

うつ病になりやすい人の特徴について教えてください。

種市 摂子先生種市先生

受け身の考え方や過去志向、ネガティブ思考、完璧主義、極端な思い込みなどを持つ人は、うつ病になりやすい傾向があります。「自分では変えられない」と考える学習性無力感、他人の期待に応えすぎる思考は、ストレスをためやすく、抑うつリスクを高めます。また、過去の失敗をとらわれすぎてしまう人、自己否定・ネガティブ思考、完璧主義、「全てがダメなら意味がない」のような破壊的な極端な思い込みを持つ人も、うつ病のリスクを高める要因となります。

編集部編集部

生活習慣や環境によって、うつ病のリスクが高くなることはありますか?

種市 摂子先生種市先生

生活習慣や環境は、うつ病のリスクに大きく影響します。たとえば、慢性的な睡眠不足(6時間未満)は、うつ病の発症リスクを2倍以上にします。また、運動不足や不規則な生活スタイル、過度なストレス環境(努力が報われない、悪い人間関係)も、うつ病のリスクを高めます。ほかにも、過食やアルコール依存などもリスクとなります。他方、質の良い睡眠や適度な運動、社会的つながりを持つなどは、うつ病の予防につながります。

うつ病になりにくい人はいる?

うつ病になりにくい人はいる?

編集部編集部

うつ病になりにくい人に共通する特徴はありますか?

種市 摂子先生種市先生

うつ病になりにくい人は、「幸せになれる考え方や行動を自ら選んでいる人」です。完璧を求めすぎず、「まあいいか」と柔軟な思考の人に多いですね。また、過去にとらわれず、「今できること」に目を向け、「前向きに行動する」「自分や周りの人の長所や魅力を見つけ、感謝の気持ちを持つ習慣がある」「自分と他者の無限の可能性を信じ、成長を楽しめる」人という特徴があります。ほかにも、適度な運動や質の良い睡眠、人とのつながりを大切にし、自分との関係を良好にできる人などもうつ病になりにくいとされています。

編集部編集部

自分は絶対にうつ病にならないと思っている人でも、うつ病になる可能性はありますか?

種市 摂子先生種市先生

「自分は絶対にうつ病にならない」と思っている人でも、うつ病になる可能性はあります。うつ病は脳の機能やストレスへの反応、環境要因によって発症する病気であり、意志の強さだけで防げるものではありません。例えば、長期間の睡眠不足や強いストレスが続くと、脳のセロトニンやドーパミンのバランスが崩れ、気分の落ち込みが生じやすくなります。さらに、睡眠時無呼吸症候群や心筋梗塞、がんなどの身体疾患も、慢性的な疲労や痛みを引き起こし、うつ病のリスクを高めることが知られています。

編集部編集部

うつ病は予防できる病気なのでしょうか?

種市 摂子先生種市先生

定期的な運動は、うつ病リスクを約30%低下させます。また、睡眠を7時間以上確保することは、うつ病の発症を防ぐために有効です。さらに、ストレス管理や適切な治療を取り入れることで、うつ病の発症リスクを軽減できます。適度な運動、質の良い睡眠、前向きな考え方、人とのつながりを大切にすることで、うつ病を予防しやすくなります。

うつ病を予防する方法とは?

うつ病を予防する方法とは?

編集部編集部

うつ病を予防するために日常生活でできることがあれば教えてください。

種市 摂子先生種市先生

定期的な運動、睡眠、規則正しい生活を送ることに加え、感謝の気持ちを持つ習慣、ポジティブな考え方を取り入れることで、ストレス耐性が向上し、抑うつリスクが下がります。また、信頼できる人と定期的に会話し、人とのつながりを大切にすることもうつ病予防に役立ちます。読書もおすすめで、韓国では、うつ病の治療ガイドラインに読書療法が取り入れられており、「認知行動療法」に関する本は、うつ病の予防や改善に役立つとされています。

編集部編集部

気持ちが落ち込んでしまうこともあると思います。そのような際に気持ちを切り替える方法はありますか?

種市 摂子先生種市先生

物事に対する視野を広げたり、行動を変えたりすることで切り替えやすくなります。例えば、自然の中を散歩する、新しい場所に行く、軽い運動をすることで、脳内のセロトニンが増え、気分が上向くといった効果が期待できます。「今できる小さなこと」を考え、まず行動してみる、感謝できることを書き出す、信頼できる人やAIと話すことでも気持ちが整理されます。気持ちがある程度整理され落ち着いてくれば、自分にとって何が最も大切か、何が最も好きか、明確にすることもおすすめです。

編集部編集部

うつ病を予防する方法として、「カウンセリング」や「マインドフルネス」はどの程度有効ですか?

種市 摂子先生種市先生

認知行動療法を含むカウンセリングは、うつ病の発症リスクを約50%低減できると報告されています。また、マインドフルネス瞑想は、不安やストレスを軽減し、再発予防にも効果があります。特に、ストレスを感じやすい人が定期的におこなうと、感情のコントロールがしやすくなり、うつ病の予防につながります。専門家のサポートを生かしつつ、日常的な実践が心の健康維持に役立ちます。

編集部まとめ

うつ病は、性格や生活習慣、環境によって発症リスクが変わる病気ですが、良質な生活習慣、ポジティブな思考を持つことで予防できます。カウンセリングやマインドフルネス瞑想の活用も、ストレス管理に役立つとのことでした。「自分は大丈夫」と思っている人でも、長期間のストレスや睡眠不足が発症リスクを高めるため、日頃から心と体のケアが大切です。本稿が読者の皆様にとって、うつ病予防やメンタルヘルスを見直すきっかけとなりましたら幸いです。

この記事の監修医師

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