夜の激痛は『四十肩・五十肩』のサイン? 放置リスクと早期治療法【医師解説】

肩が痛くて腕が上がらない、夜中に痛みで目が覚めてしまうなど、日常生活に大きな支障を来すのが、いわゆる四十肩・五十肩です。よく聞く病名ではあるものの、「自然に治るから様子を見ていればよい」と言われることも少なくありません。そこで、四十肩・五十肩の正体から治療の考え方、近年注目されている治療法を、医療法人社団全心会理事長で、ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック 整形外科部長の守重先生に聞きました。
※2026年1月取材。

監修医師:
守重 昌彦(ぜんしん整形外科 立川スポーツリハビリクリニック)
四十肩・五十肩の基本情報

編集部
四十肩や五十肩とは、どのような状態を指すのでしょうか?
守重先生
一般的には、明らかな外傷や原因がないにもかかわらず、肩関節に痛みや動かしにくさが生じる状態を指します。正式には「癒着性関節包炎(凍結肩)」と呼ばれ、40代・50代に多く見られることから、「四十肩」「五十肩」という名称で知られています。
編集部
四十肩と五十肩に違いはあるのですか?
守重先生
本質的な違いはありません。発症する年齢によって呼び分けられているだけで、病態や治療の考え方は同じです。整形外科の診療現場では「四十肩」という呼び方はあまり用いられず、発症のピークが50代にあることから、「五十肩」と呼ばれることが多いのが実情です。40代など比較的若い年代で発症した人への配慮から四十肩という名称が広まったのではないかとも考えられています。四十肩・五十肩は、いずれも正式な診断名ではありません。
編集部
五十肩が起こる原因は何なのでしょうか?
守重先生
明確な原因は現在の医学でも分かっていませんが、肩関節の最も奥にある関節包という組織に炎症が起こった結果、組織が線維化して硬くなってしまうことが中心にあると考えられています。炎症が強い時期に動かしたときに、強い痛みや夜間痛が出ます。
編集部
主な症状について教えてください。
守重先生
肩を動かしたときの痛みや、腕が上がらない、背中に手が回らないといった可動域制限が代表例です。特に、夜間安静にしていても強い痛みが出る夜間痛は、生活の質を大きく下げる原因になります。
五十肩の経過と、治療のゴールを教えて!

編集部
「五十肩は自然に治る」という話を聞くこともありますが、本当でしょうか?
守重先生
自然に改善する人がいるのは事実ですが、全ての人が当てはまるとは限りません。過去の研究によると、約半数は2年たっても何らかの症状が残ったとされています(J Bone Joint Surg Am. 1992 Jun;74(5):738-46.)。必ずしも「放っておけば治る」というわけではありません。
編集部
五十肩になった場合、早めに治療を検討した方がよいのでしょうか?
守重先生
はい。治療のゴールは「最終的に治る」だけではありません。強い痛みや夜間痛を早く和らげること、治るまでにかかる期間を短くすることが非常に重要なのです。「いつか治るから」と我慢を続け、生活の質が低い期間を長く過ごすべきではありません。
編集部
どのような治療を行うことが多いのでしょうか?
守重先生
発症初期で炎症が強い時期には、内服薬や関節腔内への注射によって炎症をコントロールします。夜間痛で何週間もつらい状態が続いていた人でも、適切な治療を行えば数日から2週間ほどで痛みが軽減することが期待できます。
痛みを抑えて可動域を上げる治療法

編集部
発症初期以降は、治療内容も変わってきますか?
守重先生
炎症の時期が過ぎると、痛みは落ち着いて症状が軽くなったかのように感じられますが、関節包が縮んで硬くなるため、治療のアプローチを変える必要があります。
編集部
関節包が縮んでしまった場合、どういった治療法を行うのでしょうか?
守重先生
関節包が縮んでしまったケースでは、神経ブロック注射を併用したマニピュレーション(徒手授動術)という治療法を適用します。マニピュレーションとは、縮んで動きを妨げている関節包そのものに直接アプローチする方法です。
編集部
神経ブロック注射を併用したマニピュレーションについて、もう少し詳しく教えてください。
守重先生
四十肩・五十肩の人が肩関節を動かすと、あるところで「これ以上動かない」という限界がきます。そこが縮んだ関節包が伸びる限界点です。マニピュレーションでは、エコー(超音波)ガイド下の神経ブロック注射で痛みをしっかり抑えた状態の中、関節包を全方向に動かし、意図的に硬くなった組織を剥離・解放します。処置は数分で終了するため、日帰りで行えますが、合併症(骨折・神経損傷・腱板損傷)には注意が必要です。
編集部
なぜ、エコーも用いる必要があるのでしょうか?
守重先生
首から肩に伸びる神経だけを正確に狙って麻酔をかけることができるからです。エコーを用いることで、体への負担を抑えつつ、鎮痛効果が期待できるようになりました。
編集部
日帰りで治療できる点がよいですね。
守重先生
そうですね。しかし重要なのは、処置後のリハビリテーションです。関節包の硬さは改善しても、周囲の筋肉が長期間の影響で縮んだり緊張したりしています。より良い機能回復をするためにも、理学療法士によるリハビリテーションで筋肉の状態を整えることが大事です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
守重先生
五十肩は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受ければ回復も早くなります。一般的に「自然に治る」と言われることもありますが、早期に治療を行うことで、つらい症状を長引かせずに済みます。肩の痛みで困っている人は、肩関節の治療を専門的に行っている医師やクリニックを探し、相談してみることをおすすめします。
編集部まとめ
四十肩・五十肩は、「自然に治ることもある」一方で、長く症状が残るケースも少なくありません。痛みや可動域制限を我慢し続けるのではなく、早めに適切な治療を受けることで、回復までの期間を短縮できる可能性があります。肩の痛みで困っている場合は、一度専門知識を持つ医師に相談してみることが大切です。
参考文献
「五十肩(肩関節周囲炎)」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
医院情報

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| 診療科目 | リウマチ科、リハビリテーション科、整形外科 |
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