『心不全』のステージ別治療と予防法とは? 「何」に注意すればいい⁉【医師解説】

心不全は、進行度によって必要な治療や生活管理が大きく変わります。自分のステージを正しく理解することが、最適なケア、そして再発や悪化を防ぐ鍵となります。今回は、ステージごとの治療方針や日常生活で気を付けたいポイントを、久我山ハートクリニックの今村先生に聞きました。
※2026年1月取材。

監修医師:
今村 泰崇(久我山ハートクリニック)
心不全はどのようにステージ分けできるのか?

編集部
心不全にはステージがあると聞きました。どのように分けられるのですか?
今村先生
心不全は、アメリカ心臓協会(AHA)などの分類に基づき、ステージAからDまでの4段階に分けられます。例えば、がんも病期ごとにステージ1から4まで分類されていて、各ステージでやるべきことやケアの内容が明確に示されています。心不全の分類も、これと同じような意味合いを持っています。
編集部
がんとのステージ分けの違いを教えてください。
今村先生
心不全の分類の特徴は、症状が出る前の段階も含めて評価しているということです。例えば最も初期であるステージAや、その次の段階のステージBは、まだ心不全ではない人たちのグループですが、“このままだと心不全になる可能性がありますよ”という注意喚起の意味合いでグループ分けをしています。
編集部
ステージAやBでも「心不全」と呼ばれるのですか?
今村先生
厳密には、ステージAやBは「心不全予備軍」と位置づけられます。まだ心不全症状はないものの、放置すれば将来、心不全を発症する可能性が高い状態です。この段階で適切なケアを行うことで、心不全の発症や進行を防ぐことができます。
編集部
なぜ、早いステージから分類することが重要なのですか?
今村先生
一度発症すると、完全に元の状態に戻すことが難しい病気だからです。そのため、症状が出る前からリスクを管理し、進行を食い止めることが非常に重要です。ステージ分けは早期介入の目安になるため、早くから分類することが大事なのです。
ステージA・Bで気を付けることや必要なケアは?

編集部
ステージAとは、どのような状態でしょうか?
今村先生
ステージAは、まだ心臓に異常はないものの、心不全のリスク因子を持っている段階です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙習慣、肥満などが該当します。この段階では生活習慣の改善に加えて、各疾患の心血管リスク管理を考慮した治療が必要になります。心不全を発症させないことが最大の目標です。例えば高血圧患者さんの場合、診察室血圧が130/80mmHg未満、家庭血圧が125/75mmHg未満(可能であれば家庭血圧で120mmHg未満)を降圧目標とし、生活習慣が改善できるよう指導します。2026年2月に公開された心不全予防に関するステートメントから、生活習慣改善を行っても降圧目標が達成できない場合は、速やかに降圧薬による薬物治療を開始することが明記されました。
編集部
ステージBでは、どのようなケアが必要になりますか?
今村先生
ステージBでは、心臓に構造的な異常や機能低下が見られますが、心不全症状はまだありません。例えば心拡大、左室肥大、弁膜症、心筋梗塞の既往がある人は、このカテゴリーに分類されます。また、心不全の診断や予後予測などに用いられる検査にNT-proBNP(慢性心不全リスク検査)というものがあり、検査数値が125pg/mL以上の人もステージBに該当します。この段階ではステージAでの治療に加えて、ステージC(症候性心不全)への移行の予防と心血管リスク管理のため、治療強化が必要になります。具体的には、降圧利尿薬、ACE阻害薬、ARBなどの降圧薬を使用し、特に体液貯留や食塩過多、食塩感受性が関与する高血圧患者さんにはARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)を用いた治療も行います。
編集部
ステージAやBで、特に重要な生活習慣を教えてください。
今村先生
血圧・血糖・体重の管理ですね。あとは、減塩、適正体重の維持、禁煙、適度な運動が重要になります。また、複数回の健診結果を変化として捉え、悪化の兆しを早めに察知する意識も大切です。
編集部
この段階で受診やフォローは必要ですか?
今村先生
はい。症状がなくても定期的な受診は重要です。特にステージBでは、NT-proBNPや心エコー、血液検査で心臓の状態を把握し、必要な治療を継続することが、将来の入院や再発を防ぐことにつながります。基本的に、ステージBでは半年に1回、ステージAでは1年に1回、NT-proBNPを受けることが推奨されています。
ステージC・Dで必要なケアは? 治療の目的は?

編集部
ステージCとは、どのような状態ですか?
今村先生
ステージCは、心臓の異常に加えて息切れやむくみなどの心不全症状が表れている段階です。多くの患者さんがこの段階で心不全と診断されます。薬物治療、生活管理、運動療法を組み合わせた包括的な治療が必要になります。
編集部
ステージCで、特に気を付けるべき点は何でしょうか?
今村先生
薬の継続、減塩、水分管理、毎日の体重測定です。体重増加や息切れの悪化は再燃のサインです。また、感染症や過労が悪化の引き金になるため、無理をしない生活を心掛けることも大切です。
編集部
ステージDは、どのような治療が行われますか?
今村先生
ステージDは、標準治療を行っても症状がコントロールできない重症心不全の段階です。入退院を繰り返すことが多く、補助人工心臓、在宅医療、緩和ケア、心臓移植などを含めた治療選択が検討されます。生活の質をどう守るかも重要なテーマになります。
編集部
ステージによって治療法やケアが異なるのですね。
今村先生
はい。詳しい治療やケアの方法はガイドラインによって定められており、特に「心不全はどのような経過をたどるのか」や、薬物療法の流れなどについても詳しく述べられています。ガイドラインはWeb上(2025 年改訂版 心不全診療ガイドライン、心不全予防に関するステートメント)で読むこともできるので、インターネットで検索して病気に関する理解を深め、治療や予防に役立ててほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
今村先生
これまでは、心不全は「発症してから治療する病気」と考えられがちでした。しかし、高齢化が進む今、どれだけ早い段階から予防できるかが重要になっています。例えば高血圧を治療する場合でも、心不全予防効果が期待できる薬を適切に選び、生活習慣病の段階から血圧目標をより厳格に管理していくことが大切です。そのためには、本人が病気を正しく理解し、予防の意識を持つことが欠かせません。積極的に医師に話を聞くなどして、病気に関する理解を深めてほしいと思います。また、心不全は高齢者だけの病気ではなく、若い人でも無理を重ねることで発症するケースがあります。健康診断で異常を指摘された場合は放置せず、必ず受診してください。特に、「息切れしやすい」「疲れやすい」「以前は普通にできていたことがつらく感じる」などの変化があれば、早めの相談が重要です。
編集部まとめ
心不全は「年を取ってから起こる病気」と思われがちですが、若い頃から予防の視点を持つことがとても重要です。高血圧や生活習慣病の段階から適切に管理し、健診での指摘や体調の変化を見逃さないようにしましょう。気になる症状があれば、早めに医療機関を受診してください。
医院情報

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| 診療科目 | 内科、循環器内科 |
| 診療時間 | 午前: 月〜土 9:00〜13:00 午後: 月〜金 15:00〜18:30 |
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