女性が『膀胱炎』になりやすく・再発しやすい理由とは? 治療後に頻尿が続くワケも医師が解説

「膀胱炎の治療は終わったはずなのに、トイレが近いまま……」。そんな経験はありませんか? 抗生剤で治療した後も頻尿や残尿感が続くと、不安な人もいると思います。そこで、医師の矢野仁先生(よつかいどう泌尿器科クリニック)に、膀胱炎や治療後の頻尿がなぜ起こるのかなど、気になることに答えてもらいました。

監修医師:
矢野 仁(よつかいどう泌尿器科クリニック)
頻尿ってどういう状態? 医師が解説

編集部
頻尿とはどのような状態を指すのでしょうか?
矢野先生
頻尿とは「尿の回数が多い状態」を指します。一般的に、日中に8回以上、夜間に1回以上トイレに行くと頻尿とされますが、生活習慣や水分摂取量、体質などによって個人差があります。回数はあくまで目安なので、これより少なくても「トイレが近いことが気になる」「我慢できない」といった不快感がある場合は、一度医療機関に相談してもらって大丈夫です。
編集部
頻尿の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
矢野先生
頻尿の原因はさまざまです。膀胱炎などの感染症のほか、加齢やホルモンの変化、過活動膀胱、前立腺肥大、糖尿病、ストレスなども関係します。また、水分を過剰に摂ったり、カフェインやアルコールを摂取したりすると一時的に尿が頻回になりますし、妊娠中などは、胎児によって膀胱が圧迫されるため、十分に尿を溜めておけなくなり、頻尿になることがあります。
編集部
膀胱炎について教えてください。
矢野先生
膀胱炎とは、膀胱の内側の粘膜に炎症が生じる病気で、主に細菌感染が原因となります。とくに女性に多く見られますが、これは女性の尿道が短く、肛門との距離が近いため、細菌が膀胱に入りやすい構造をしているからです。排尿を我慢したり、免疫力が低下していたりしても発症の要因となります。また、再発しやすいのも特徴の一つです。
膀胱炎の症状や治療について

編集部
膀胱炎はどんな症状が出るのですか?
矢野先生
膀胱炎の主な症状は、頻尿、排尿時の痛み(排尿痛)、残尿感、尿の濁りや血尿などです。発熱を伴わないことが多いですが、進行すると腎盂腎炎になり高熱が出る可能性もあります。頻尿や排尿痛が気になった場合などは、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
編集部
膀胱炎の治療にはどんなものがありますか?
矢野先生
急性膀胱炎の治療では、原因菌に合った抗生剤を数日間服用します。通常、服薬開始から数日で症状は軽快しますが、自己判断で中断せず、医師の指示通りに最後まで飲みきることが重要です。水分を多めに摂って、尿をしっかり出すことも有効です。
編集部
治療後、どのくらいで治りますか?
矢野先生
多くの人は、治療を始めて2〜3日以内に排尿時の痛みや頻尿などの症状が軽くなってきますし、長くても1週間程度で症状が改善したと感じる場合がほとんどです。しかし「改善した」とは感じても、完全に症状が消えたと感じるまでにはもう少し時間がかかることもあります。
編集部
治療を終えても、頻尿が続くことがあるということでしょうか?
矢野先生
はい、あります。抗生剤で菌が消えても、炎症による膀胱の過敏状態が続いていると、頻尿や違和感が残ることがあります。とくに女性では、症状が消失したと感じるまでに2週間以上かかるケースもあります。焦らず様子を見ることが大切です。
治療後も続く頻尿、どうしたらよいか教えて

編集部
なぜ菌がいなくなっても、頻尿が続いてしまうのでしょうか?
矢野先生
膀胱の粘膜が炎症により敏感になっている状態が続くためです。これは「膀胱が回復途中」と考えていただけるとよいかと思います。精神的な不安がストレスとなり、症状を長引かせてしまうこともありますので、過度に不安にならずに様子を見てもらえればと思います。
編集部
様子を見ていれば自然に治るものなのでしょうか?
矢野先生
自然に治る場合がほとんどです。とくに、痛みや血尿、発熱がない、尿の状態も正常であるといった場合は、炎症後の一時的な過敏状態と考えられますので、頻尿以外の症状がない場合はあまり心配しなくてもよいでしょう。ただし、2週間以上頻尿が続く、症状が悪化する、別の症状が出てくるといった場合は、受診をおすすめします。また、頻尿が生活に支障をきたしている場合も相談いただけたらと思います。
編集部
治療後にまた膀胱炎が再発することもあるのでしょうか?
矢野先生
あります。繰り返しになりますが、とくに女性は膀胱炎を発症・再発しやすいのです。排尿習慣や衛生環境なども影響しますので、再発しないためには、トイレを我慢しない、水分をしっかり摂る、排尿後に清潔を保つなどの工夫が大切です。何度も再発するようなら、体質的な要因や別の病気の可能性も検討して検査します。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
矢野先生
膀胱炎は、女性の6割が罹患するとされ、女性にとって経験する機会が多い泌尿器科疾患です。また、3分の1の人が、1年のうちに再発するという報告もあり、医療機関にたびたび受診される人も珍しくありません。生活習慣や衛生状態が原因になることもあるため「自身に問題があるのでは?」と悩む人も多くいますが、実際には、尿路結石や排尿障害など、別の病気が原因となっていることもあります。思い当たる症状に困っている人は、遠慮なく、泌尿器科を受診してもらえればと思います。
編集部まとめ
膀胱炎が治ったはずなのに続く頻尿は、もしかして再発? と不安になってしまうかもしれませんが、「治療は終わっているのに症状が残る」背景を知ることで、少し安心できるかもしれません。過度に不安になることはありませんが、長引くときは別の疾患が隠れている場合もあるため、我慢せずに泌尿器科を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。
医院情報

| 所在地 | 〒284-0001 千葉県四街道市大日371-1 |
| アクセス | 総武本線「四街道」駅より徒歩20分 |
| 診療科目 | 泌尿器科、内科 |




