「里帰り出産」のメリット・デメリットとは? 医師が語る「意外な落とし穴と注意点」

出産を迎えるにあたって、「自宅近くの病院」か「里帰り出産」で迷う人も多いのではないでしょうか。慣れた実家で家族の支えを受けられる安心感は大きい一方、医療面や育児環境には注意すべき点もあります。今回は、里帰り出産のメリット・デメリットや注意点を、「医療法人社団喜咲会ローズマタニティクリニック」の前先生に医学的視点から解説していただきました。

監修医師:
前 和幸(ローズマタニティクリニック)
里帰り出産のメリット

編集部
里帰り出産の一番のメリットはなんですか?
前先生
やはり「サポート体制が整うこと」です。出産前後は心身ともに大きな変化がある時期です。その時期を慣れ親しんだ実家で過ごし、家族に育児を手伝ってもらえる安心感は非常に大きいと言えるでしょう。特に初産の妊婦さんにとっては、赤ちゃんのお世話を学ぶうえでも、お母さんや家族の存在は頼もしいものになります。
編集部
体調面での利点もあるのでしょうか?
前先生
はい、あります。妊娠後期から出産、産後まで、実家で過ごすことで無理をせずに済みます。家事や買い物などを家族が代わりにやってくれるため、妊婦さん本人は自分の体と赤ちゃんのことに集中することができます。そのため、産後の回復もスムーズになりやすいとされています。
編集部
精神的なメリットについても教えてください。
前先生
妊娠中や産後はホルモンの影響で気分が不安定になりがちですが、実家という安心できる環境にいると、精神的に安定しやすいと思います。また、経験豊富なお母さんに不安なことをすぐ相談できれば、大きな支えになるでしょう。1人で抱え込まない環境が心の健康に寄与します。
編集部
上の子がいる場合、一緒に里帰りすることは有効ですか?
前先生
とても有効だと思います。上の子のお世話を家族に任せられるため、産後すぐは新生児のケアに集中できますし、上の子も祖父母にかまってもらえることで安心感が得られます。家族みんなで子育てする感覚が得られるのも、里帰り出産ならではのメリットと言えるでしょう。
里帰り出産のデメリット

編集部
里帰り出産にはデメリットもあると聞きます。
前先生
そうですね。まず挙げられるのは、出産する病院と妊婦健診を受けていた病院が別になることで、医療情報の引き継ぎが不十分になりがちな点です。出産直前での病院変更は、トラブル時の対応にも影響を与える可能性があります。そのため、早めの転院が重要です。
編集部
パートナーと離れてしまうことは問題になりませんか?
前先生
これは意外と見落とされがちな点ですが、里帰り出産をすると、産後の育児を一緒に始める機会が失われてしまい、パートナーとの距離感に影響を与えることもあります。特に初めての子育てでは、夫婦で協力する経験が重要なので、事前にしっかり話し合っておきましょう。
編集部
家庭環境によっては、実家がストレスになることもあるのでしょうか?
前先生
はい、必ずしも実家が快適であるとは限りません。親世代との価値観の違いや、家のルールが負担になるケースもあります。特に育児への意見の食い違いがストレスになることもあるので、適度に距離感をとったり、自分の時間を持ったりすることも必要だと思います。
編集部
実家の負担が大きくなるという声もあります。
前先生
たしかに、実家の家族にも体力的・精神的な負担がかかります。高齢の親にとっては、長期間のサポートが大きな負担になることもあるでしょう。里帰りを選ぶ際には、家族の同意や協力体制をしっかり確認することが前提となります。
里帰り出産をするときに気をつけるべきこと

編集部
里帰り出産をする際、病院選びで注意することはありますか?
前先生
重要なのは、里帰り先で出産を受け入れてくれる病院を早めに探すことです。特に最近は分娩制限をしている産院も多く、受け入れ先を見つけることが困難な地域もあります。また、妊娠初期のうちに予約を取らなければならない産院もあります。妊婦健診の情報共有や紹介状の準備なども含め、スムーズな移行を計画的に進めましょう。
編集部
移動のタイミングはいつがベストでしょうか?
前先生
一般的には、妊娠32週頃までには里帰りするのが望ましいとされています。それ以降はお腹も大きくなり、移動が負担になります。長距離移動は体に負担がかかるため、公共交通機関を使う際も体調を最優先に考えて、無理のない時期に移動しましょう。
編集部
里帰り中の過ごし方でアドバイスはありますか?
前先生
何もしない時間を持つことも大切です。慣れない環境での緊張や、家族との関係で気疲れすることもあるので、できるだけリラックスして過ごすことを意識しましょう。お産に向けて、心身の準備期間としてゆったりした気持ちで過ごすことが大事です。
編集部
産後、パートナーとの育児分担がうまくいかなくなると聞きます。
前先生
産後すぐにパートナーが育児に関わるチャンスを逃してしまうのは、たしかに懸念される点です。ですから、産後の生活をどう再スタートするか、戻るタイミングや役割分担についても、あらかじめパートナーと話し合っておくとスムーズです。「帰ったら一緒にやろう」という合意をあらかじめとっておくようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
前先生
里帰り出産にはメリット・デメリットの両方があるため、慎重に決定しましょう。ただし、里帰り出産をする場合、これまでの産院と里帰り先での産院との間ではどうしても情報量に差が出てしまうので、不安を感じるのも事実です。実際、産婦人科の医師の間では、里帰り出産のデメリットを強く唱える人も少なくありません。家庭環境や事情などもあるため、まずはパートナーとじっくり相談し、どちらにするか検討することをおすすめします。
編集部まとめ
慣れた実家で出産できるというのはたしかに大きなメリットですが、医学的な安全性を考えると、里帰り出産には不安がつきまとうのかもしれません。どちらにするか、パートナーとしっかり話し合って慎重に決めるのが良さそうですね。
医院情報

| 所在地 | 〒336-0026 埼玉県さいたま市南区辻7丁目8-17 |
| アクセス | JR埼京線「北戸田駅」 徒歩14分 |
| 診療科目 | 産科 婦人科 |




