「緑内障」の初期症状をご存じですか? “失明”を防ぐにはどうしたらいい?【医師解説】

緑内障は、日本人の失明原因の第1位とされる病気でありながら、自覚症状が出にくく、気づいたときには進行していることも少なくありません。そこで、緑内障の特徴や検査・治療、早期発見の重要性について、医師の河口奈々恵先生(河口内科眼科クリニック)に解説してもらいました。

監修医師:
河口 奈々恵(河口内科眼科クリニック)
緑内障とは? 失明することもあるの?

編集部
緑内障とは、どのような病気ですか?
河口先生
緑内障は、視神経が徐々に傷み、視野が欠けていく進行性の病気です。見える範囲が少しずつ欠けていきますが、進行するまで気づきにくいため“サイレントキラー”とも呼ばれます。進行すれば失明につながることもあり、日本人の失明原因の第1位となっています。
編集部
どうして視神経が傷んでしまうのですか?
河口先生
視神経は眼球の奥にあり、脳と目をつなぐ大切な組織です。眼球の内部には房水と呼ばれる液体があり、それが眼球の形を保つための圧力、いわゆる眼圧を生みます。眼圧が高すぎたり、正常範囲でも視神経が圧に弱かったりすると、神経が少しずつ障害されてしまうのです。
編集部
緑内障は珍しい病気なのでしょうか?
河口先生
いいえ、決して珍しくはありません。自分で緑内障だと気づいていない人が多いだけで、じつは40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障であるという調査結果もあるほどです。年齢とともにリスクは上がりますので、特に中高年の人は注意してもらいたい病気です。
編集部
日本人に多い緑内障のタイプがあると聞きました。
河口先生
そうですね。日本人の緑内障の多くは「正常眼圧緑内障」です。文字通り、眼圧が正常範囲であるにも関わらず視神経が傷むタイプなので、検診などで眼圧だけ測っても見逃されることがあります。だからこそ、視野検査や眼底検査を含む総合的なチェックが必要になります。
気づきにくい緑内障の初期症状 早期発見のためには?

編集部
緑内障の初期にはどんな症状がありますか?
河口先生
初期の段階では、ほとんど症状がありません。視野の一部が欠けても自覚することができず、本人も気づきにくいのです。かなり進行してからようやく「見えにくい」「視界が欠ける」と感じることが多く、その時点では視神経がかなり傷んでしまっているケースが多くあります。
編集部
では、どうやったら早期発見ができるのですか?
河口先生
もっとも確実なのは、眼科での定期検査です。眼圧測定、眼底検査、視野検査、さらにOCTと呼ばれる画像検査などを組み合わせて診断します。自覚症状がなくても、定期的な眼科検診をおすすめします。
編集部
定期検診は、いつ頃から、どのくらいの頻度で行けばよいでしょうか?
河口先生
40歳を過ぎたら、眼圧に異常がなくても年に一度は眼科検診を受けてもらいたいです。さらに、ご家族に緑内障の人がいる場合や、糖尿病・高血圧などの持病がある人は、より早い段階での検査をおすすめしています。
緑内障の治療や生活の注意点を医師が解説!

編集部
治療はどのようにおこなわれますか?
河口先生
まずは点眼薬で眼圧を下げることから始めます。眼圧の高い人は、眼圧をコントロールすることで視神経へのダメージを減らし、病気の進行を遅らせることができます。それでもコントロールが難しい場合は、レーザー治療や手術を検討することもありますが、どの治療も「治す」ためではなく、「進行をおさえる」ためのものです。
編集部
一度失われた視野は治らないのですか?
河口先生
残念ながら、視神経は再生しないため、一度欠けた視野は元には戻りません。だからこそ、繰り返しになりますが、早期発見が非常に大切なのです。より早い段階で治療を開始することができれば、失明を防げる可能性が高くなります。
編集部
日常生活での注意点はありますか?
河口先生
基本的な生活習慣の見直しが重要です。睡眠不足や強いストレス、喫煙などは眼圧に影響を与える可能性があるため、できるだけ避けましょう。そして何よりも、緑内障の点眼薬を忘れずに使うこと、定期的な検査を継続することが大切です。「進行をおさえる」治療というのは、効果を実感しにくいため、継続するモチベーションが得られにくいことがありますが、治療を自己判断で中断してしまうと、知らない間に進行していることがあるので注意が必要です。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
河口先生
目のことで少しでも気になることがあれば、早めに眼科を受診することをおすすめします。ものもらいなど別の症状で来院された人に検査をした結果、緑内障が見つかるケースも少なくありません。目の疾患を過度に不安になる必要はありませんが、「正しく恐れる」ことが大切です。気になる症状のある人は、先延ばしせずに気軽な気持ちで相談してみてください。
編集部まとめ
緑内障は、自覚症状が出にくく、気づいたときには視神経が大きく損傷していることもある病気です。放置すれば失明につながることもあるため、早期の発見と治療が極めて重要です。40歳を過ぎたら年1回の眼科検診を習慣化し、見えにくさを感じる前から目の健康を守る意識を持つことが大切です。定期的な眼科の受診で、早期発見に努めましょう。
参考文献:
- 緑内障ってどんな病気?(公益社団法人日本眼科医会)
https://www.gankaikai.or.jp/info/detail/glaucoma.html - 緑内障といわれた方へ―日常生活と心構え―(公益社団法人日本眼科医会)
https://www.gankaikai.or.jp/health/56/ - 緑内障(公益財団法人日本眼科学会)
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=35
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