【国民病】じつは多くの人が「痔」の可能性あり 医師がセルフチェック方法を解説

痔は多くの人が悩んでいる病気ですが、初期症状を見逃し、発見が遅れると悪化する可能性があるため、症状に気づいたら早めに対処することが重要です。そこで、痔のセルフチェック方法について、伊藤先生(メディカルGPクリニック横堀)に解説してもらいました。

監修医師:
伊藤 生二(メディカルGPクリニック横堀)
もはや国民病! 痔について医師が解説

編集部
痔とはどのような病気ですか?
伊藤先生
痔にはいくつかの種類があり、代表的なものに「いぼ痔(内痔核・外痔核)」「切れ痔(裂肛)」「あな痔(痔ろう)」があります。いぼ痔は、肛門周辺の血管が腫れてできるもので、内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核と呼びます。切れ痔は、排便時に肛門の皮膚が裂けて起こるもの。あな痔は、肛門周囲の感染が進んで膿がたまり、トンネル状の管(ろう管)ができる状態です。また、似たような病態として「肛門ポリープ」と呼ばれる肛門にできる良性のできものもあります。
編集部
痔になる人は多いのですか?
伊藤先生
痔は非常に一般的な病気で、決して珍しいものではありません。むしろ、日本人の約半数が一生のうちに経験すると言われているほどよく見られる疾患です。とくに便秘や長時間の座位が影響するため、現代人には多く見られます。
編集部
便秘が痔の原因になるのですか?
伊藤先生
はい、便秘は痔の原因の一つです。便秘が続くと、排便時に強くいきむことが多く、これが肛門に負担をかけ、痔核や裂け目(切れ痔)を引き起こす原因になります。また、便が硬くなることで肛門周辺が傷つきやすく、出血を伴うこともあります。便秘が長引く場合は、早期に対策を講じることが、痔の予防に繋がります。
編集部
長時間の座位が原因になることもあるのですか?
伊藤先生
そうですね。長時間の座位を続けることにより肛門に圧力がかかり、血流が悪くなって痔を引き起こすことがあります。同様に、妊婦さんもお腹が大きくなると血流が滞るため、痔になりやすいと言われています。定期的に立ち上がったり、体を動かしたりすることが予防に繋がります。
セルフチェックで痔の早期発見を

編集部
痔を放置すると、どうなってしまうのでしょうか?
伊藤先生
痔を放置すると症状が悪化し、出血や痛みがひどくなることは想像に難しくないと思います。それだけでなく、痔ろうや膿瘍、感染などを引き起こすこともあり、必要とされる治療が増えたり、時間がかかったり、手術が必要となったりすることもあります。ですから、早期発見・早期治療が重要です。
編集部
痔の早期発見にはどうすればよいですか?
伊藤先生
日常的に便の状態をチェックし、便秘や下痢の症状が続く場合は注意が必要です。また、出血や痛み、違和感があればすぐに受診することをおすすめします。肛門が痛いと感じても自分では確認できないため、知らないうちに重症化していることもありますので、痛いと感じたら我慢せずに受診しましょう。
編集部
自宅でできる痔のセルフチェック方法はありますか?
伊藤先生
- □便が硬く、排便時に痛みを感じることがある
- □便秘がちである(1週間に3回未満の便通が続いている)
- □便を出す際に強くいきむことが多い
- □便の色や形が不規則で、特に硬い便が続くことがある
- □排便時や排便後、肛門周辺に違和感や痛みがある
- □便の後に出血が見られることがある
- □便意を我慢してしまう
- □野菜や果物をあまり摂取していない
- □日常的に運動をしていない
- □水分をあまり取らないほうだ
- □酒・コショウ・からしなどの刺激物をよく摂取している
痔の治療法を教えて

編集部
痔の治療法はどのようなものがありますか?
伊藤先生
軽度の症状には薬物療法や生活習慣の改善が有効ですが、重度の場合、手術が必要になることもあります。そうは言っても、これらは痔の種類による部分が大きく、たとえばあな痔(痔ろう)の場合は、重症度にかかわらず手術療法が基本となります。
編集部
ほかの痔の治療についても教えてください。
伊藤先生
いぼ痔であれば、肛門の歯状線の外側にできる「外痔核」の場合、手術による切除が中心です。内側にできる「内痔核」であれば、「ジオン注射硬化療法(ALTA療法)」などの治療法があります。外痔核と内痔核の両方がある人は、ジオン注射療法と切除を組み合わせたハイブリッド手術がおこなわれます。
編集部
切れ痔(裂肛)の場合はどうですか?
伊藤先生
切れ痔(裂肛)の場合は、薬物療法による排便のコントロールや軟骨・座薬などによる治療が中心ですが、慢性化したケースには手術が必要となります。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
伊藤先生
痔は自分では見えない場所にできるため、痛みがあると不安になる人も多いです。中には携帯電話で撮影して確認しようとする人もいますが、症状の重さや適切な治療法を自分で判断するのは難しいものです。放置すると悪化して手術が必要になるケースもあるため、恥ずかしがらずに日本大腸肛門病学会専門医や指導医のいる医療機関に相談することをおすすめします。
編集部まとめ
痔は、初期症状の段階で適切に対処すれば、悪化を防げます。出血や痛み、違和感を覚えた場合は、早期にセルフチェックをおこない、症状の進行を防ぎましょう。チェック項目で当てはまる点が多い場合は、早めに医師に相談し、適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
医院情報

| 所在地 | 〒311-0103 茨城県那珂市横堀1291-29 |
| アクセス | JR水郡線「上菅谷」駅(最寄駅) |
| 診療科目 | 内科・外科・肛門外科・消化器内科・乳腺外科 |



