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足の血管が浮き出る「下肢静脈瘤」になりやすい人の4つの特徴とは? 治療法・予防策も医師が解説

 更新日:2025/07/16

特に高齢の女性に多くみられる「下肢静脈瘤」。放置すると皮膚炎や潰瘍などを引き起こすこともあり、日常生活に支障が及ぶことも少なくありません。手術が第一選択となりますが、場合によっては再発することもあるそうです。下肢静脈瘤の再発を防止するには、どのようなことに気をつければいいのか、「相模原町田血管外科クリニック」の大久保先生に解説していただきました。

大久保 博世

監修医師
大久保 博世(相模原町田血管外科クリニック)

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北里大学医学部卒業。その後、北里大学医学部、大和市立病院、済生会横浜市東部病院などで血管外科医として経験を積む。2020年、神奈川県相模原市に「相模原町田血管外科クリニック」を開院。医学博士。日本外科学会認定外科専門医・心臓血管外科専門医、日本脈管学会専門医、日本血管外科学会認定血管内治療医。北里大学医学部心臓血管外科非常勤医師。

下肢静脈瘤が起こりやすい人・原因

下肢静脈瘤が起こりやすい人・原因

編集部編集部

下肢静脈瘤を発症しやすい人の特徴はありますか?

大久保 博世先生大久保先生

下肢静脈瘤のリスクの高い人の特徴としては、以下の項目が挙げられます。
  • 女性
  • 高齢者
  • 立ち仕事
  • 遺伝
女性は男性の約3倍、下肢静脈瘤を発症しやすいことが研究によって判明しています。特に、生理前や妊娠中はホルモンの影響で血液量が増加するため、女性は静脈弁が壊れやすいと考えられています。

編集部編集部

なぜ、立ち仕事が関係するのですか?

大久保 博世先生大久保先生

立位の姿勢では足が心臓から最も遠くなるため、重力の影響を強く受けます。さらに立ったままあまり動かないとふくらはぎがポンプとして機能しなくなるため、弁への負担がより大きくなってしまうのです。

編集部編集部

加齢も重要な要因なのですね。

大久保 博世先生大久保先生

年齢とともに血液を戻すポンプとして働くふくらはぎの筋肉が衰えてしまうため、弁にかかる負担が大きくなります。さらに、加齢によって静脈の弁や血管壁が弱くなり、血液が逆流しやすくなることで、下肢静脈瘤の発生リスクが上がるのです。

編集部編集部

遺伝はどれくらい関係するのですか?

大久保 博世先生大久保先生

下肢静脈瘤は、血縁者がいると発症しやすいことが研究で判明しています。「両親ともに下肢静脈瘤の場合、子どもの90%が下肢静脈瘤を発症する」という調査報告があります。

下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤の治療法

編集部編集部

再発しにくい治療法はあるのでしょうか?

大久保 博世先生大久保先生

下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザー・高周波治療)」は再発率が低く、現在では標準的な治療法とされています。静脈瘤ができた血管内にカテーテルを通して、レーザーや高周波で血管内側から焼灼する根治療法です。低侵襲で回復も早いのが下肢静脈瘤血管内焼灼術の特徴です。

編集部編集部

そのほかには、どのような治療法がありますか?

大久保 博世先生大久保先生

血管塞栓術」という伏在静脈に直接針を刺してカテーテルを挿入し、静脈瘤の原因血管内に化学性物質を注入する治療法もあります。こうすることで血管が固まり、血管を閉塞させることができるのです。

編集部編集部

血管を固めて、静脈瘤を解消するのですね。

大久保 博世先生大久保先生

ただし、全ての下肢静脈瘤ができるわけではありません。また、治療には異物を使いますが、体にどのような影響を与えるかということについて、長期的な成績はまだ確認されていません。そのほか、化学性の静脈炎や肺塞栓を引き起こすリスクも確認されています。

編集部編集部

それ以外に、どのような治療法がありますか?

大久保 博世先生大久保先生

皮膚を切開してストリッパーという特殊なワイヤーを使い、弁不全を起こしている静脈を抜去する「ストリッピング手術」という方法もあります。下肢静脈瘤に対する最も古い根治療法であり、この治療で静脈を抜いてしまっても静脈瘤内にたまった血液は正常な深部静脈へ流れるため、特に問題はありません。ただし、基本的に入院が必要です。

編集部編集部

手術をしたくないという場合には、どうすればいいのでしょうか?

大久保 博世先生大久保先生

医療用弾性ストッキングを長期にわたって着用する「圧迫療法」もあります。しかし、手術の侵襲度は非常に低く、90歳くらいの人でも全身状態が良ければ安心して受けることができるので、基本的には手術を推奨しています。

編集部編集部

どのようにして治療法を選択するのですか?

大久保 博世先生大久保先生

下肢静脈瘤には様々なタイプがあり、それに応じて治療法を選択します。また、血管の太さや症状により治療法を使い分けることもあります。例えば、主幹の静脈には血管内焼灼が効果的ですし、細い枝や表層の血管には硬化療法が向いています。そして、これらの治療を併用することもあります。

編集部編集部

手術しても再発することはあるのでしょうか?

大久保 博世先生大久保先生

あります。原因となる静脈を取り除いても、ほかの静脈に新たな逆流が起きれば再発します。下肢静脈瘤の再発防止には、生活習慣の見直しが重要です。特に多産の人や立ち仕事の人は再発リスクが高くなります。手術後、気になる症状が見られたら早めに医療機関を受診しましょう。

下肢静脈瘤の予防法

下肢静脈瘤の予防法

編集部編集部

日常生活でできる下肢静脈瘤の予防法はありますか?

大久保 博世先生大久保先生

長時間同じ姿勢を避ける、ふくらはぎの筋肉を動かす運動(かかとの上下運動)、足を高くして休むことなどが有効です。特に、同じ姿勢を長く続けることは危険です。立ち仕事でも座りっぱなしの仕事でも、定期的に休憩を挟んで体を動かす習慣をつけましょう。

編集部編集部

弾性ストッキングは予防にも効果があるのですか?

大久保 博世先生大久保先生

はい。弾性ストッキングは血流を補助して、静脈への負担を減らします。特に予防や術後ケアとして推奨されています。ただし、一般に市販されている弾性ストッキングでは圧力が不足しているため、必ず医療用のものを着用しましょう。

編集部編集部

運動は下肢静脈瘤に良いのでしょうか?

大久保 博世先生大久保先生

ウォーキングやストレッチなどの軽い運動はふくらはぎの筋ポンプを活性化させ、血流を改善します。逆に過度な筋トレは静脈に負担をかけるため注意が必要です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

大久保 博世先生大久保先生

下肢静脈瘤の治療では、大伏在静脈だけを焼灼するのではなく、分枝の血管など細かな部分も適切に処理をすることが必要です。その点が疎かだと、せっかく手術をしても再発してしまうリスクが高くなります。そのため、手術を受ける際には必ず血管外科を選択しましょう。下肢静脈瘤のことに詳しく、治療技術にも長けた医師を選ぶことが大切です。

編集部まとめ

下肢静脈瘤は決して珍しい疾患ではなく、特に座りっぱなしなどの生活習慣で繰り返し発症することもあります。発症を予防するには、適宜体を動かすなど生活習慣を見直すことが必要とのことでした。また、治療が必要な場合には再発を予防するためにも、下肢静脈瘤の治療件数が多い血管外科の医師を選びましょう。

医院情報

相模原町田血管外科クリニック

相模原町田血管外科クリニック
所在地 〒252-0303 神奈川県相模原市南区相模大野3-15-22 ロコス相模大野B棟2F
アクセス 小田急線「相模大野駅」 徒歩9分
診療科目 内科、外科、血管外科

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