子どものひざの痛み…もしかしてオスグッド? 予防・再発防止のポイントを医師に聞く【親御さん必見!】

部活やクラブ活動に励む成長期のアスリートにとって、ひざの下に痛みを感じる「オスグッド・シュラッター病」は、決して珍しくないスポーツ障害です。放置してしまうと痛みが慢性化したり、成長期を過ぎても痛みが残ったりする可能性もあるため、早期の対応が重要だとされています。そこで今回は、発症のメカニズムや受診のタイミング、治療法から予防・再発防止のポイントまで、つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長の中谷創医師に詳しく解説していただきました。

監修医師:
中谷 創(つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック)
オスグッド・シュラッター病とは?

編集部
はじめに、オスグッド・シュラッター病について教えてください。
中谷先生
オスグッド・シュラッター病は、成長期の子どもに多く見られるひざのスポーツ障害で、ひざの前面に痛みや炎症が生じる疾患です。太ももの前にある大腿四頭筋がひざ下の靭帯を通じて骨を引っ張る動作を繰り返すことで、成長軟骨に過度な負荷がかかり、痛みが生じます。進行すると骨が変形し、大人になっても痛みが残る可能性もあります。
編集部
どのようなことが原因で発症しますか?
中谷先生
主な原因は、成長期における急激な骨の成長と、運動による過度な負担の組み合わせです。特に成長期には骨が急速に伸びる一方で、筋肉や腱の柔軟性が追いつかず、筋肉が硬くなる傾向にあります。このアンバランスな状態で運動をおこなうと、ひざ下の靭帯への引っ張りが強くなり、痛みが生じやすくなります。以前は柔軟だった子どもでも、成長に伴って急に身体が硬くなることがあり、それが発症の引き金となることもあります。
編集部
発症しやすい人やスポーツなどはありますか?
中谷先生
オスグッド・シュラッター病は、ジャンプ動作の多いバスケットボールやバレーボール、走行中に切り返し動作の多いサッカーをしている子どもに多く見られます。また、成長期で急激に身長が伸びた子ども、特に男子で多く見られる傾向にあります。女子にも見られますが、一般的に関節の柔軟性が高いため、発症頻度は男子に比べて少ない傾向があります。また、練習量が多く休養が不足している場合にも発症リスクが高まります。
オスグッド・シュラッター病の症状と受診のタイミング

編集部
オスグッド・シュラッター病の初期症状について教えてください。
中谷先生
最も初期の症状は運動時のひざの下の痛みや違和感です。特に走る、ジャンプする、階段を上るといった動作で痛みを感じることが多く、運動をしていないときは気にならないため見過ごされやすいのが特徴です。症状が進行すると痛みが強くなり、日常生活でも違和感を覚えるようになります。
編集部
症状を放置すると、どのようなリスクがあるのですか?
中谷先生
放置してしまうと、痛みが慢性化することや成長軟骨への過剰な負荷により骨が変形してしまう可能性があります。変形が残った状態で成長が終わると、大人になってからも痛みが再発したり、運動時に支障が出たりするケースもあります。また、痛みによってフォームが崩れたり、ほかの部位に負担がかかったりするなど、長期的な影響を招くこともあります。
編集部
病院を受診する適切なタイミングについても教えてください。
中谷先生
成長期の子どもに起こるひざの痛みは、早めに受診していただくことが理想です。痛みが軽度であっても、「少し気になる」「最近よく痛がる」といった段階での受診が望ましく、早期に対処することで治療期間を短くし、早期にスポーツ復帰することが可能になります。
治療から復帰までの流れと予防方法

編集部
治療方法の選択肢には一般的にどのようなものがありますか?
中谷先生
オスグッド・シュラッター病の治療は、「保存療法」が基本です。痛みがあれば運動を中止し、安静を保つことが第一です。日常生活においてもひざ下の靭帯への負担を軽減するため、専用のサポーターを使うこともあります。また、大腿四頭筋や股関節周囲のストレッチをおこない、柔軟性を高めることで再発を防ぎます。まれに、成長軟骨が剥がれてしまい手術が必要となるケースもありますが、多くの場合は保存療法で改善します。
編集部
治療の後、スポーツ復帰するまでにはどのくらいの時間がかかりますか?
中谷先生
症状の程度によりますが、歩くだけでも痛いという重度の場合は、スポーツ復帰までに3カ月から半年以上かかることもあります。一方で、運動時のみの軽い痛みであれば、1カ月程度の安静で回復しスポーツ復帰できる場合もあります。無理をして悪化させないよう、段階的に運動を再開し成長に合わせてトレーニングを継続することが大切です。
編集部
予防方法や再発を防止する方法はありますか?
中谷先生
オスグッド・シュラッター病の予防に最も重要なことは、大腿四頭筋の柔軟性を保つことです。そのためにはストレッチを継続的におこなうことが必要です。また、骨盤や腰回りの筋肉の安定性を高めるトレーニングも効果的です。骨盤が前傾するとひざに負担がかかりやすくなるため、腸腰筋(ちょうようきん)などのインナーマッスルを鍛えることも予防につながります。運動後のアイシングやクールダウンも再発防止に有効です。
編集部まとめ
成長期の子どもに多くみられるオスグッド・シュラッター病は、「成長痛」と片付けられがちですが、早期に適切な対応をとることで痛みを長引かせずに済むケースも多くあります。とくに成長期は筋肉と骨のバランスが崩れ、ひざへの負担が大きくなることがあります。ストレッチやリハビリテーションなどを継続しつつ、必要に応じて専門医の診察を受けることが重要です。本稿が読者の皆様にとって、オスグッド・シュラッター病に対する理解と予防意識を深めるきっかけとなりましたら幸いです。
医院情報
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アクセス | 東急東横線「祐天寺」駅東口2を出てすぐ |
診療科目 | 整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科 |