子どもの成長期の痛みは「成長痛」だけではない? 「骨端症」と「成長痛」の違いについて医師が解説
成長期には、多くの子どもたちが足や腕などの痛みを経験します。成長に伴う痛みについて「成長痛」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、様子をみて良い成長痛と、成長痛と間違えて認識されがちな「骨端症」という病気も成長期の痛みの原因となることをご存知でしょうか。今回は、日本整形外科学会専門医で医療法人社団新潮会理事長である北城先生に、「成長痛」と「骨端症」について正しい情報を伺いました。
監修医師:
北城 雅照(足立慶友整形外科)
目次 -INDEX-
「成長痛」とは何なのか 背が伸びることとの因果関係は?
編集部
成長痛とは何歳くらいに発生するのでしょうか?
北城先生
一般的に、成長痛と呼ばれる症状は、10歳より前の小児によく見られます。成長痛は膝や足首などに痛みが生じることが多いですね。一方、10歳以上の思春期にみられる痛みも成長痛と呼ばれがちですが、これは骨端症と呼ばれる病気であることが多く、成長痛とは異なります。
編集部
成長痛と骨端症は違うのですね。成長痛では一般的にどのような症状が出るのでしょうか?
北城先生
小児の成長痛は、夕方から夜にかけて膝や足首の痛みを訴える事が多いですね。時にはぐずったり泣いてしまったりすることもありますが、痛みが出ている日の翌日には、痛みがなくなり元気になっていることが特徴です。
編集部
どのようなことが原因となって成長痛が起こるのでしょうか? 背が伸びることと因果関係はあるのでしょうか?
北城先生
小児の成長痛の原因については、成長軟骨という、身長が伸びるために必要な軟骨が関係しているとされているものの、痛みの正確な機序はわかっていません。
思春期の骨端症とは? 治療は必要? どのような症状が出る?
編集部
思春期の骨端症という病気についても教えてください。
北城先生
骨端症とは、思春期前後の子どもに起こり、骨の成長の場所である「骨端線」という組織が痛くなる病気です。中学生くらいになると成長が止まり、骨端線もなくなりますが、それまでの間、骨端線に負荷や機械的な刺激が加わると、骨端症が起こり痛みや炎症が生じます。骨端症の代表的なものに、オスグッド病、シーバー病(踵骨骨端症/しょうこつこったんしょう)というものがあります。
編集部
オスグッド病、シーバー病はどのような病気でしょうか?
北城先生
オスグッド病は、成長期において、膝蓋骨(しつがいこつ)と脛骨粗面(けいこつそめん)をつなぐ膝蓋靭帯に繰り返しのストレスがかかり、炎症や剥離が生じる病気です。膝の痛みや違和感、腫れがあり、激しい運動をすることが困難になる場合もあります。他方、シーバー病は、踵に腫れや痛みを生じます。アキレス腱や足底腱膜から引き起こるストレスが原因で、踵骨の成長部位に損傷が生じることで発症します。特に運動をする際に繰り返される激しい運動がリスク因子とされています。どちらも思春期前後に多くみられる骨端症状の一種ですね。
編集部
治療は必要なのでしょうか?
北城先生
軽度の場合は、安静や運動制限、ストレッチなどが効果的です。また、ふくらはぎの緊張を和らげるために踵を高くするインソールや、膝にかかる圧を分散させるようなバンドやサポーターを使う事があります。しかし、症状が重度の場合には、手術が必要になることもあります。症状が悪化する前に専門医の診察を受け、適切な治療を行うことが必要です。
成長痛や骨端症で注意するポイントは? 受診のタイミングを専門医に聞く
編集部
成長痛かも? と思ったときに家庭でできることを教えてください。
北城先生
小児の成長痛の場合は、翌日には痛みがなくなることが多いので、さすってあげて様子をみてもらえば大丈夫です。ただし、翌日にも痛みが続いていたり、足を引きずったりするような症状があれば、ほかの病気が隠れている可能性があるので注意する必要があります。
編集部
病院にかかるべきか迷ったときのために、受診するタイミングについて教えてください。
北城先生
小児の病気で見逃しがちな症状の一つに、足を引きずって歩くことがあります。家では気づかないこともあるため、保育園や幼稚園で歩き方に違和感があると指摘された場合は、成長痛と油断せず、一度受診することをおすすめします。小児の場合、整形外科の中でも小児整形を扱っている病院を選ぶと良いと思います。
編集部
骨端症が疑われる場合の注意点も教えてください。
北城先生
思春期の子どもが痛みや違和感を感じた場合、骨端症の可能性があります。特に、膝や踵の部分に痛みや腫れが生じる場合はオスグッド病やシーバー病を疑う必要があります。痛みが続いた場合は、放置せずに病院を受診し、早期治療を行うことが大切です。運動中に痛みや違和感がある場合は、無理をせずに休むことも大切です。
編集部
骨端症のときにしてはいけない運動はありますか?
北城先生
骨端症であるオスグッド病やシーバー病では、骨端部に負担がかかるスポーツを行うと、症状が悪化する場合もあります。具体的には、着地の衝撃が強いバスケットボールやバレーボールなどのジャンプが多いスポーツ、長時間のランニングやサッカーなど、負荷の高いスポーツは避けた方が良い場合もあります。ただし、完全に運動を禁止するわけではなく、痛みや症状に応じて運動量や強度を調整することが必要です。運動前に医師や専門家の指導を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
子どもが膝や踵に痛みを訴えたら、成長痛や骨端症が考えられます。成長痛は安静にしていると治りますが、骨端症は放置すると進行することがあります。痛みが続く場合は、早めに専門医に相談しましょう。子どもたちが健康で元気に成長するためにも、親がしっかりとサポートしていくことが大切です。
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