~実録・闘病体験~ 青春時代の関節痛は成長痛に限らない。中学生で判明した若年性特発性関節炎
リウマチという病名は聞いたことがあっても、リウマチの一種である「若年性特発性関節炎」という病名はあまり馴染みがないのではないでしょうか。今回は、中学生の時に若年性特発性関節炎と診断され、「この先薬を飲み続けないといけない」と言われた有紀さんに話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年10月取材。
体験者プロフィール:
有紀さん
1995年6月16日生まれ。熊本県在住。幼稚園の頃に関節の症状が出現し中学生で若年性特発性関節炎と診断を受ける。障がい者手帳所持。「障がいがあっても毎日楽しく♥」「リウマチが世間に認知されますように!」と日々の生活をSNS(https://www.instagram.com/yuuuu.616/)にて発信中。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「病気だと嫌われる」と心配だった
編集部
若年性特発性関節炎が判明した経緯について教えてください。
有紀さん
幼稚園の時から鉄棒などが出来ず、自分でも運動神経がないと思っていました。小学校ではバスケットボール部に入っていましたが、ゴールまでボールが届かなかったり、関節痛があったりしました。ある日、小指が曲がっていることに気づき、しばらく様子を見ていると隣の薬指も変形してきたので、総合病院に行きました。そこでは「そのままでも大丈夫」と言われたのですが、中学校に上がったときにどうしても気になったので、有名な整形外科で検査を行った結果、リウマチ内科を紹介され、そこで「若年性特発性関節炎」と診断されました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
有紀さん
関節は元には戻らず、この先ずっと薬を飲み続けなければいけない。今の医療では完治ということはなく、進行を遅らせることしかできないと言われました。この時点でもう、手全体が固くなってしまっていて、指は変形し、手首の可動域が狭くなっていました。「メトトレキサート」という薬を服用し、痛みが強い時は、ステロイドを使うと言われました。あれから12年経ちましたが、現在も同じ薬を飲み続けています。
編集部
病名が判明した時の心境について教えてください。
有紀さん
ショックでした。この先、薬を飲み続けないといけないこと、運動が制限されることなどが、当時青春真っ只中の私には絶望的でした。友達に嫌われてしまわないか心配で、周りにも話せず、今後どうなっていくのか不安でいっぱいになりました。
友人が何も言わずに助けてくれた
編集部
生活はどのように変化しましたか?
有紀さん
葉酸の摂取を控えるように言われ、お茶は麦茶、野菜も葉酸が少ないものを摂るようにしました。メトトレキサートには光線過敏症という副作用があり、太陽に当たりすぎは良くないので、日焼け止めや日傘を使い、体育も見学にしていました。学校には病気の説明をし、できることは自分で行い、できないことは補助してもらうようになりました。
編集部
みんなと同じことができないというのは辛いですね。心の支えはなんでしたか?
有紀さん
学生の頃は、友達です。仲の良い友人には全てを話していました。高校は家政科だったのですが、食材の下処理やミシンのセットが大変だったとき、何も言わずに助けてくれたのを覚えています。障がいがあるからと特別扱いせず、普通に接してくれたのもとても嬉しかったです。
編集部
現在の心の支えは?
有紀さん
現在はパートナーです。今は仕事の都合で離れて暮らしていますが、一緒に暮らしていたころは、家事をほとんどやってくれていました。痛みがある時はマッサージをしてくれるなど、身体的にも精神的にもすごく支えてもらっています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、なんと言いたいですか?
有紀さん
「中学や高校生活をもっと楽しんで」と言います。「体がうまく動かなくても悲しまないで、意外と人は優しいから頼ってごらん、思い切り青春を楽しんで」とも言いたいです。
編集部
現在の体調や生活の様子について教えてください。
有紀さん
内服は続けながら、2週間に1回、アクテムラの皮下注射をお腹に打っています。最近は朝のこわばりが、無くなってきて快適です。でも副作用が強く、髪の毛が抜けやすくなりました。また、口が乾いてむし歯になりやすいので、定期的に歯科検診にも行っています。病院は治療費が高く、1回5万円ほどかかるので、何のために仕事をしているのか時々わからなくなります。
編集部
日常生活でどんなことが大変ですか?
有紀さん
現在、指は4本曲がり、手首も動かしにくく、親指は両方とも脱臼してズキズキと痛みます。仕事はパソコンを使うので一日が終わると手指はもちろんのこと、全身が疲れ果てて動けません。手に力が入らないので調味料の蓋などは開けられず、シャンプーや歯磨きも大変です。ドライヤーは重たくて持てない時もあります。
指の関節はとても小さいけれど
編集部
若年性特発性関節炎を意識していない人に一言お願いします。
有紀さん
リウマチは女性に多いと言われています。年配の方の病気というイメージかもしれませんが、若い方の発症もあります。朝から関節がこわばる、関節が痛い、動きづらいなどの症状があったら整形外科を受診してください。若年性特発性関節炎は、成長痛と勘違いして受診が遅くなりがちだそうです。気になったら早めに病院に行ってください。
編集部
医療従事者に望むことはありますか。
有紀さん
特にはありません。大変な状況下(コロナ禍)で、病院を開けていただき、薬をいただけるだけで充分です。
編集部
最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
有紀さん
リウマチという病名は知られていますが、若くても発症することはあまり知られていません。でも、SNSなどで発信していると、同病の患者さんは本当に沢山います。ぜひこの機会にリウマチを知ってください。また、周りに関節の痛みにお困りの方がいましたら、一度受診を勧めてあげてください。また、リウマチの主症状は手指の変形や疼痛です。指の関節はとても小さいですが、日常生活の支障はとても大きく、全身が疲弊します。それが周りに理解されにくく、症状の苦痛に加え精神的苦痛が大きいです。老若男女問わず見た目ではわからない障がい者の方は沢山います。ヘルプマークをつけている方が満員の電車やバスにいる場合は、ご配慮お願いいたします。
編集部まとめ
診断された当時は「嫌われたらどうしよう」と思っていたけれど、やっぱり心の支えは友人やパートナーだという有紀さん。昔の自分に「人は優しいから頼ってごらん」と声をかけたい、と言っていました。最初はひとりで頑張っていたのですね。そして「リウマチは若くても発症する」「成長痛と思って受診が遅くなりがち」というところから、症状があったら自己判断せず受診するようメッセージをいただきました。有紀さん、ありがとうございました。