子どもが夕方から夜にかけて足の痛みを訴える…これって「成長痛」?
小学生低学年くらいの子どもに多くみられる「成長痛」。聞き馴染みのある言葉ですが、一体なぜ、成長痛が起こるのかをご存知でしょうか。また、成長痛が起きたとき、どのように対処すればいいのかも知りたいところです。今回は「所沢あかだ整形外科」の朱田先生に、成長痛について教えていただきました。
監修医師:
朱田 尚徳(所沢あかだ整形外科 院長)
富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療に務めている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。
目次 -INDEX-
成長痛とは?
編集部
成長痛について教えてください。
朱田先生
一般的には、幼稚園や小学校低学年くらいの子どもに現れる足の痛みを成長痛と言います。骨や関節などに異常はないにもかかわらず、痛みが出るのが特徴です。
編集部
具体的に、どの部分が痛むのですか?
朱田先生
よくあるのは、膝のまわりやふくらはぎ、すね、足の甲、かかと、股関節、太ももの付け根などです。ただし、子どもは痛みがある場所をうまく伝えることができないこともあり、はっきりと「ここが痛い」というのではなく、漠然と「足が痛い」と感じることが多いようです。
編集部
どのような時に痛むのですか?
朱田先生
夕方から夜にかけて、痛むことが多いようですね。それ以外でも、朝方や運動後などに痛みを感じることもあります。毎日痛むのではなく、週1〜2回や月1回程度など、不定期で痛みを感じるケースが大半です。
編集部
痛みはずっと続くのですか?
朱田先生
そんなことはないですよ。例えば、患部をさすることで痛みが消えていくこともあります。また、学校へ行っている間や遊んでいるときなど、何かに夢中になっているときは、あまり痛みを感じません。
なぜ、成長痛が起きる?
編集部
成長痛はどのように診断されるのですか?
朱田先生
医学的には「疼痛(とうつう)は8時間以上持続しない」、「来院時には無症状である」、「診察上圧痛、腫脹などの異常所見を認めない」、「単純X線検査で異常を認めない」という診断基準が設けられています。そして、これらをすべて満たしたときに成長痛という診断を下します。ただし、成長痛は医学的に認められた疾患ではないため、上述の基準を満たしていなくても成長痛と診断するケースもあるのが実状です。
編集部
「成長痛は医学的に認められている疾患ではない」とは、どういうことですか?
朱田先生
成長痛は正式な病名ではなく、「症状である」ということです。先ほど挙げた通り、成長痛と診断する際の定義が定められていますが、実際には、3〜12歳くらいの子どもで、これまで述べてきたような症状が2週間~1カ月程度続いた場合は成長痛とみなされることが多いですね。
編集部
なぜ、成長痛が起こるのですか?
朱田先生
現在、成長痛は「骨が成長することによって生じる痛み」と考えられていますが、医学的な根拠は見つかっていません。現在、原因として考えられているのは、成長に伴う体の構造的変化とそれによる身体的なアンバランスさが挙げられています。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
朱田先生
3〜12歳くらいの子どもの体は、日々成長し続け、どんどん筋肉が発達したり、バランス感覚がよくなっていったりします。成長に伴い、体の動きや機能は大きく進化し、できることが増えていくのです。言い換えるのなら、毎日変化し続ける体で、新しいことをやり続けなければいけないということです。しかし、動きが安定しなかったり、体に負荷がかかったりすることがあるため、成長痛が起こると考えられています。
編集部
なるほど。体がどんどん成長していく一方で、本人は体の使い方に慣れず、痛みが生じるのですね。
朱田先生
はい。そのほかに、ストレスも原因であると言われています。幼少期は、人間関係も複雑に変化していく時期です。友達の好き嫌いや勉強の優劣なども明らかになってくるでしょう。また、弟や妹が生まれると、親との関係でストレスを感じることもあるかもしれません。それらのストレスが原因となって、痛みが生じているのではないかとも考えられています。
編集部
成長痛は必ず起こるのですか?
朱田先生
程度の差はありますが、ほとんどの子どもに生じると考えられています。ただしその一方で、成長痛がまったく起きない子どももいますね。
成長痛の対処法について
編集部
成長痛による痛みが出たら、どうすればいいでしょうか?
朱田先生
成長痛に特別な治療法はないため、対症療法で対応します。先述したように患部をさすったり、触ってあげたりすると痛みが和らぎますから、保護者が優しくケアしてあげるといいでしょう。また、マッサージをしたり、湿布を貼ったり、スキンシップを図ったりするのもいいかもしれません。
編集部
それでも痛みが治らないときは?
朱田先生
小児科や整形外科などの医療機関に相談してください。解熱鎮痛剤を飲めば痛みが収まるので、無理に我慢させるようなことはせずに受診して処方してもらいましょう。
編集部
痛みが出てもすぐに引く場合は放置しても大丈夫ですか?
朱田先生
場合によりますが、成長痛と思っていたら違う病気だったということも考えられるので、不安であれば一度医師に診てもらいましょう。例えば、気づかないうちに骨折していたり、炎症を起こしていたりするほか、非常に稀ですが骨のがんもあり得ます。また、成長痛と診断されて症状が続く場合、1カ月に一度は定期的に診察してもらうことをおすすめします。
編集部
どんな症状に気をつければいいでしょうか?
朱田先生
「痛みが長時間持続する」、「痛みが生じる部位が毎回同じである」、「痛みがだんだんひどくなる」などの場合には、速やかに受診してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
朱田先生
幼稚園や小学校低学年くらいの子どもが足の痛みを訴えたら、大半のケースが成長痛です。成長痛は原因が特定できず、すぐに消えてしまうタイプの痛みで、ほとんど心配はいりませんが、万が一のこともあるので、念のため医師に相談することをおすすめします。また、小学校高学年になると、成長痛ではなくスポーツによる痛みが生じることもあります。この場合は、放置すると痛みが悪化したり、外傷がひどくなったりすることもあるので、整形外科に診てもらいましょう。
編集部まとめ
幼稚園や小学校低学年くらいの子どもは、痛みを上手に訴えることが困難です。また、無理に痛みを我慢させてしまうと、痛みが大きなストレスになり、ますますひどくなることもあるそうです。「成長痛だから放っておいても大丈夫」と考えるのではなく、念のため医師に相談するのがベターです。
医院情報
所在地 | 〒359-0037 埼玉県所沢市くすのき台3丁目18-2 マルナカビレッジ壱番館 2階 |
アクセス | 西武新宿線、西武池袋線「所沢駅」東口 徒歩3分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科 |