「学校の成績や仕事のパフォーマンスを上げるための食事法」を時間栄養学の専門家に聞いてみた

皆さんは「朝食を抜くと集中力が下がる」と聞いたことはありませんか? 実は、朝食が学校成績や仕事のパフォーマンスに影響を与えることが最近の研究で明らかになっています。また、朝食を摂ることは体内時計の調整にも深く関わっています。では、具体的にどのような食事法が効果的なのでしょうか? 時間栄養学の専門家、田原先生と市川先生に解説していただきました。

著者:
田原 優(広島大学大学院 医系科学研究科公衆衛生学 准教授)

共著者:
市川 知美(広島女学院大学人間生活学部管理栄養学科 教授)
「朝ごはん」は本当に重要なのか

編集部
朝食を抜くと成績が落ちるというのは本当ですか?
田原先生
学校成績と朝食摂取習慣には、正の関連があります。つまり、学校成績の良いグループは、毎日朝食を食べている子の割合が多いのです。しかし、朝食を摂ると成績が上がるのか、それとも成績が高い人は普段から朝食を食べているのか、因果関係は分かりません。
編集部
朝食を摂ることで、勉強や仕事ではどのような効果が期待できますか?
田原先生
朝食を摂ることで、体内時計を調節する効果、体温を上げる効果、交感神経を活性化する効果が期待できます。これらにより、午前中のパフォーマンスが高まると考えられています。
編集部
逆に、パフォーマンスを低下させる食習慣や食事のタイミングはありますか?
市川先生
不規則な食習慣は、日々のパフォーマンス低下と関連する可能性があります。日によって朝食や昼食を抜いたり、食べる時刻がバラバラだったりする生活は控えるようにしましょう。
朝食がパフォーマンスに与える影響とは

編集部
朝食を摂るのに効果的なタイミングがあれば教えてください。
田原先生
一般的に、起床後1〜2時間以内に食べる食事が、朝食と言えます。起床後に時間が無くても、職場に着いてすぐでもいいので、朝食を摂ることをオススメします。
編集部
学校前や仕事前の朝食では、どのような食事がパフォーマンス向上に効果的ですか?
市川先生
脳や体のエネルギー源となるのは、糖質です。朝食では、糖質を多く含むご飯やパンなどを摂取しましょう。ただし、糖質だけの食事は、血糖値の急激な上昇を招き、途中で集中力が切れてしまう場合もあります。たんぱく質や食物繊維を多く含む食品を一緒に組み合わせると血糖値の上昇が緩やかになり、勉強や仕事に集中して取り組めます。
編集部
朝食を抜いてしまったあと、パフォーマンスを回復させる食事法はありますか?
市川先生
朝食を抜いて、お昼にドカ食いしてしまうと、より昼食後に眠気が来る可能性があります。朝食を食べ損なった場合でも、バランスの良い適量な昼食を摂ることをオススメします。
パフォーマンス向上のためのワンポイントアドバイス

編集部
昼食後に眠くならない食事の方法はありますか?
市川先生
理由はまだよく分かっていませんが、昼食を食べても食べなくても、人は午後に眠気が来る性質を持っています。なので、一定の眠気はしょうがないものです。しかし、食後に血糖値が急激に変化するような食事(糖質の多い食事など)は、さらに眠気をもたらすので控える方がよいでしょう。
編集部
午後の眠気に対する対策はありますか?
田原先生
昼食後は、10分程度の短い昼寝をオススメします。昼寝によって、午後のパフォーマンスは向上します。その際、昼寝前にカフェイン飲料を摂ってから寝ると、起きた後により目覚めが良いという研究結果もあります。
編集部
パフォーマンス向上に役立つ間食は何かありますか?
市川先生
しっかりとした科学的エビデンスはありませんが、砂糖や油を多く使った菓子類よりも、おにぎりやサンドイッチ、果物、牛乳・乳製品などエネルギーと不足しがちな栄養素が手軽に補えるものがよいでしょう。間食は気分転換の役割もありますので、1日200kcal以内を目安に上手に取り入れてみましょう。
編集部まとめ
朝食は単なる食事ではなく、学校や仕事のパフォーマンスを高めるための重要な要素です。体内時計を調整し、午前中の活力を向上させるために、適切なタイミングと内容で朝食を摂ることが大切と教えていただきました。糖質を主成分としつつ、たんぱく質や食物繊維を取り入れることで、持続的なエネルギーを得ることができるようです。本稿の情報が、皆様の日々の食事法の参考となれば幸いです。