お腹の調子を整える食事を教えて! 胃腸にやさしい食べ物と食べ方を管理栄養士が解説
食べ過ぎや飲み過ぎ、早食い、偏った食事、ストレスなどでお腹の調子を崩すことがある方は多いと思います。胸やけや胃もたれ、胃の痛み、便秘や下痢などで食欲がない時は、どんなものを食べれば良いのでしょうか。今回は“食べ物”と“食べ方”という観点から、胃腸にやさしい食生活について「管理栄養士」の上辻さんにお話ししていただきました。
監修管理栄養士:
上辻 知津子(管理栄養士)
お腹の調子が悪い時、食事はどうする?
編集部
そもそも、お腹の調子が悪い時でも何か食べたほうが良いのでしょうか?
上辻さん
お腹の調子が悪いといっても症状は様々あると思います。吐き気を伴う場合では、食べたくても食べられないこともあります。そんな時は無理に食べなくてもいいですが、脱水症状を起こしやすいので、スポーツ飲料などで水分補給をすることが大切です。絶食によって症状が改善してきたら、おかゆやうどんなど、胃腸にやさしい食べ物を少しずつ食べるようにしましょう。
編集部
胃腸にやさしい食べ物とはどのようなものですか?
上辻さん
胃腸が弱っている時は休ませてあげることが重要なので、消化しやすい食べ物が胃腸にやさしいと言えます。その点、糖質は消化吸収が早いのでおすすめです。脂質は消化に時間がかかるため、甘いものでもケーキやチョコレートは胃腸にやさしくありません。揚げ物や脂肪分の多い肉類も同様です。また、香辛料、酸味・塩味が強いもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料、冷たい食べ物は、胃腸を刺激するので避けたほうが無難でしょう。食物繊維が多い野菜、海藻、きのこ、豆類、玄米も胃腸に負担がかかります。
編集部
食物繊維は胃腸に優しいイメージがあるので意外です。
上辻さん
食物繊維とは、ヒトの消化酵素で消化されない成分のこと。食物繊維が多い食べ物は消化に時間がかかります。そのため、糖質などと一緒に摂ると糖質の消化吸収に時間がかかり、血糖値の急上昇や肥満を防ぐ効果が期待できます。また、食物繊維は腸内の善玉菌を増やす効果もあるので、普段は積極的に摂りたいところです。しかし、胃腸を休ませたい時は減らしたほうが良いとされています。
調理法や食べ方にも気をつけよう
編集部
食物繊維の少ない野菜や脂身の少ない肉や魚は、食べても大丈夫ですか?
上辻さん
食べて症状が悪化しなければ問題ありません。野菜は柔らかく煮ると消化が良くなります。お腹の調子が悪い時は、野菜スープ、煮物、煮浸しなどがおすすめです。たんぱく質食品を摂るなら、卵、豆腐、白身魚、鶏のささみなどが良いでしょう。卵は、だし巻きや茶碗蒸し、温泉卵、卵とじなど、柔らかくて温かい料理になるのでおすすめです。白身魚は煮付けか焼き魚がいいですね。ただし、たんぱく質食品は加熱し過ぎると硬くなるので、火を通しすぎないように注意してください。
編集部
食べ方で気をつけたほうが良いことはありますか?
上辻さん
おかゆやうどんでも、一気に食べると胃腸に負担がかかります。食べ物は何でもよく嚙んで、ゆっくり食べることが大切です。唾液には消化酵素が含まれているので、よく嚙むことで食べ物が消化されやすい状態になります。嚙んでいるうちに胃や腸からも消化液が分泌されますし、さらに、満腹中枢が刺激されるため、食べ過ぎも抑えられます。よく嚙む以外には、決まった時間に食事を摂ることも重要です。
編集部
食べる時間も重要なのですか?
上辻さん
1日3食、決まった時間に食べるようにすると、体のリズムが整いやすいと言われています。体のリズムが整うと、胃腸の調子も整うでしょう。朝食を食べなかったり昼ごはんを食べそびれたりして空腹の時間が長くなると、胃液の酸度が高くなり、粘膜を傷つけることがあります。また、夜遅くに食べると、胃もたれや胸やけを起こしやすくなります。夜は体が休息モードとなり、消化吸収のスピードも遅くなるのです。
胃腸を丈夫にする食生活のポイント
編集部
普段の食事で胃腸を丈夫にする方法はありますか?
上辻さん
何でも食べられる状態の時こそ、よく嚙んで食べる、決まった時間に食べることを意識したいですね。さらにプラスして胃腸を丈夫にするには、ビタミンA、ミューシレージ(英:mucilage)、ビタミンUを積極的に摂ることをおすすめします。また、喫煙やストレスも胃腸の働きに影響するので、食事だけでなく生活習慣全体を見直すことも重要です。
編集部
ビタミンA、ミューシレージ、ビタミンUはどのようなものですか?
上辻さん
ビタミンAは荒れた胃粘膜の修復や保護に役立つ栄養素です。うなぎや豚レバーに多く含まれますが、人参・ほうれん草・かぼちゃなどの緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンは、体内でビタミンAに変換されます。β-カロテンは摂り過ぎの心配がないので、緑黄色野菜を毎日しっかり食べましょう。ミューシレージは山芋などのネバネバに含まれる成分で、粘膜を保護する働きがあります。山芋には消化を助ける成分も含まれるのでおすすめです。ビタミンUは別名「キャベジン」といい、胃腸薬にも配合されています。キャベツやブロッコリーに多く含まれる栄養素です。
編集部
喫煙やストレスは胃腸にどのような影響を与えるのですか?
上辻さん
タバコを吸うと血管が収縮するため、全身の血行が悪くなります。血流が低下すると胃の働きが悪くなるだけでなく、胃酸から胃粘膜を守るための粘液が減り、胃潰瘍の原因となります。ストレスは自律神経のバランスを崩す一因です。自律神経は胃腸の働きをコントロールする神経なので、ストレスによって便秘や下痢になることもあります。ストレス解消のために食べたり飲んだりするのも良くないため、モヤモヤする時は体を動かす、好きな音楽を聴く、ゆっくりお風呂に入るなどで対処しましょう。
編集部まとめ
お腹の調子が悪い時は、脂質が多い食べ物や刺激物は控え、消化が良い食べ物を選ぶと良いとのことでした。食物繊維は腸内環境を整える働きがありますが、消化が悪いので胃腸が弱っている時は減らしたほうが良いことも分かりました。胃腸を丈夫にするには、日頃からよく嚙んで食べ、規則正しい生活で体のリズムを整えるようにしましょう。