食後高血糖を抑える食事とは? 管理栄養士が解説
健康診断などで「空腹時の血糖値を測るので、食事は抜いてきてください」と言われたことがある方は多いでしょう。つまり、食後は血糖値が上がりやすい状態であると言えます。食後の血糖値が高い状態が続くと危険であると言われますが、なぜなのでしょうか。今回は食後高血糖について、回避する方法も併せて「管理栄養士」の石本さんに詳しく伺いました。
監修管理栄養士:
石本 めぐみ(管理栄養士)
食後高血糖はなぜ怖いのか
編集部
食後高血糖とはどのような状態なのでしょうか?
石本さん
食事を摂ると血糖値は一時的に上昇しますが、健康な人であれば2時間以内には正常値である70〜100mg/dlに戻ります。食事を摂ってから2時間後の血糖値が140mg/dl以上であると、食後高血糖と判断されます。
編集部
食後高血糖はなぜ起こるのでしょうか?
石本さん
食後高血糖の人は、インスリンというホルモンが正常に機能していない可能性があります。上昇した血糖値を下げることが、インスリンの役割です。インスリンの分泌量が少ない、またはインスリンが分泌されても効果が弱い場合は血糖値が十分に下がらず、食後高血糖が引き起こされてしまいます。
編集部
食後の血糖値が高いままだと、なぜよくないのでしょうか?
石本さん
食後高血糖が続くと、インスリンの機能不全が原因である糖尿病を発症する可能性が高くなります。糖尿病と診断されていない人でも、食後の血糖値が急上昇した後、すぐに急降下して正常値へ戻る「血糖値スパイク」がみられると危険です。急激な血糖値の変動が繰り返されると、血管壁が傷つけられて動脈硬化のリスクが高まります。
食後高血糖を抑える食事法
編集部
食後高血糖は食事で防げるのでしょうか?
石本さん
血糖は食事に含まれる糖質に由来するので、食後高血糖は食事によってある程度防ぐことができます。まずは食べ方を工夫することから始めると取り組みやすいでしょう。
編集部
食後高血糖を防ぐには、どのように食事を摂ればよいでしょうか?
石本さん
食事を早食いするとインスリンの分泌が間に合わず、血糖値が急激に上がりやすくなります。よく噛み、ゆっくり時間をかけて食事を摂ってください。朝食を食べない人は少なくありませんが、食事を抜くと次の食事では血糖値が上がりやすくなります。1日3食、できるだけ決まった時間に規則正しく食べることが大切です。
編集部
食事内容を工夫することでも効果はありますか?
石本さん
食物繊維が多く含まれる野菜や海藻などを、積極的に食事へ取り入れてください。食物繊維は腸の中で糖の吸収を遅らせて、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。食物繊維を含む食品を先に食べ、糖質の多いご飯やパンを後から食べるとより効果的です。そもそも必要以上の量の食事を摂取していると、血糖値は上昇しやすくなります。食事は腹八分目を心掛け、エネルギーや糖質を摂り過ぎないようにしましょう。
編集部
糖質を含む食べ物は体によくないのですか?
石本さん
たんぱく質・脂質と合わせて3大栄養素と呼ばれる、大切な栄養素のひとつが糖質です。糖質は体を動かすエネルギーになり、生命維持に欠かせません。しかし必要以上の糖質は、糖尿病や動脈硬化、脂質異常症といった疾患の原因になります。糖質を摂り過ぎないためには、主食・主菜・副菜をバランスよく組み合わせた食事になるように心掛けましょう。ラーメンとチャーハンといった炭水化物を重ねる食事は、糖質の摂り過ぎになるので避けてください。
食後高血糖は低GI食品で回避
編集部
食べることで食後高血糖を抑えることができる食材はありますか?
石本さん
食物繊維が豊富な野菜や海藻以外では、GI値が低い食品をおすすめします。GI値とは、食後の血糖値がどれだけ上昇するかを示す指数のことです。低GI食品を摂れば、食後の血糖値の上昇は緩やかになります。
編集部
低GI食品にはどのようなものがありますか?
石本さん
GI値が低い食材には、きのこや乳製品があります。野菜の中でも、ほうれん草などの葉物野菜のGI値は低めです。一方で、糖質が多く含まれるじゃがいもやにんじんはGI値が高いので、食べ過ぎないようにしましょう。白米やパンのGI値は高く、そばやスパゲッティのGI値は低いことを覚えておくと、外食時にメニューを選ぶ基準になります。
編集部
低GI食品の上手な摂り方はありますか?
石本さん
低GI食品を使って血糖値をコントロールする食事法に、「セカンドミール効果」を利用したものがあります。セカンドミール効果とは、最初に摂る食事(ファーストミール)が次に摂る食事(セカンドミール)の後の血糖値に影響を与えるという考え方です。ファーストミールに低GI食品を摂れば、血糖値の上昇を緩やかにする作用はセカンドミールまで持続すると考えられています。この効果は、食後高血糖の抑制にも利用できるでしょう。
編集部
食事以外で気をつけることがあれば教えてください。
石本さん
食後高血糖の予防には、運動が効果的です。食後15分から1時間の間に運動すると、血液中の糖が消費されて食後高血糖を抑えられます。ウォーキングなどの軽い運動を15分程度行うことで、効果が期待できるでしょう。また、筋肉トレーニングに取り組むこともおすすめです。筋肉量を増やせば、それだけ糖をエネルギーへ換えやすい体になります。ただし医師によって運動を制限されている人は、医師の指示に従ってください。
編集部まとめ
糖尿病や動脈硬化をもたらす食後高血糖は、食事の摂り方や摂取する食品を工夫することで防げることがわかりました。糖質が多い食品ばかり食べるのではなく、食物繊維の多い食品やGI値の低い食品も組み合わせて、食後高血糖の予防に努めましょう。