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糖尿病を放置するとどうなるかご存じですか? 糖尿病治療の全体像を医師が解説

 公開日:2025/04/04
糖尿病が放置されるとどうなるかご存じですか? 糖尿病治療の全体像を医師が解説

糖尿病を改善したり、合併症を予防したりするには、糖尿病の治療を正しく理解することが必要になります。そこで、糖尿病治療の全体像を基本からわかりやすく解説してもらうために、本駒込内科・糖尿病内科クリニックの菊野先生にメディカルドック編集部が話を聞きました。

菊野 庄太

監修医師
菊野 庄太(本駒込内科・糖尿病内科クリニック)

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福井大学 医学部医学科卒業。国家公務員共済組合連合会 虎の門病院内分泌代謝科などを経て本駒込内科・糖尿病内科クリニック院長就任。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会。

糖尿病治療の目標とは?

糖尿病治療の目標とは?

編集部編集部

糖尿病とはどのような病気なのでしょうか?

菊野 庄太先生菊野先生

血液の中に含まれるブドウ糖の濃度を数値化したものを血糖値と言います。この血糖値が、基準とされる数値を慢性的に上回っていると糖尿病と診断されます。自覚症状としてはのどの渇き、尿が増える、疲れやすいなどが知られていますが、これらの症状が見られることは少なく、健診などで見つかることが大半です。

編集部編集部

治療しないと、どうなってしまうのですか?

菊野 庄太先生菊野先生

血糖値が高いままの状態を放置すれば、糖尿病網膜症による失明、腎機能障害による透析、足壊疽(あしえそ)による足切断、高血糖昏睡、肺炎などの感染症、心筋梗塞や脳梗塞などの大血管合併症を発症し、後遺症をのこしたり、命にかかわることもあります。

編集部編集部

血糖値が高い状態のままだと、さまざまな障害が起こるのですね。

菊野 庄太先生菊野先生

はい。糖尿病治療の目的は、血糖を適切な範囲にコントロールすることで、さまざまな糖尿病の合併症の発症、進展を阻止し、健康な人と変わらない人生を目指すことです。

編集部編集部

どのくらいの血糖値を目標に治療するのでしょうか?

菊野 庄太先生菊野先生

目標とすべき血糖値・HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値や治療内容は、糖尿病の種類、年齢や合併症の程度によって異なります。現在の糖尿病の状態を受診毎に確認し、それに見合った食事療法、運動療法、必要に応じて薬物療法をおこないます。

編集部編集部

「糖尿病の種類」とはどういうことですか?

菊野 庄太先生菊野先生

糖尿病は主に2つに分類されます。1型糖尿病と2型糖尿病です。日本人の糖尿病のうち、ほぼ9割以上が2型糖尿病に分類されます。2型糖尿病は生活習慣や遺伝的要因により、体の中の膵臓からインスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効きにくくなったりすることで発症します。一方の1型糖尿病は、インスリンを産生する膵臓のβ細胞が自己免疫反応などによって破壊され、インスリンがほとんど分泌されない状態のため、高血糖状態が持続する病気です。主に小児や若年者で急に発症すると考えられてきましたが、大人でもゆっくりと1型糖尿病を発症することがあります。

2型糖尿病の治療法

2型糖尿病の治療法

編集部編集部

2型糖尿病の治療は、どのようなものになるのですか?

菊野 庄太先生菊野先生

2型糖尿病は、適切な食事療法と運動療法が治療の根幹となります。血糖値やHbA1cの値を観察しながら、無理のない食事療法、運動療法を実施し、目標の血糖コントロール達成を目指します。

編集部編集部

食事療法はどのようにおこなわれるのでしょうか?

菊野 庄太先生菊野先生

過体重や肥満がある場合には、エネルギー摂取量を再検討していきます。年齢、身体活動レベルやライフスタイルによって個別に目標体重を設定し、摂取エネルギー量の目安を患者さんと一緒に確認します。患者さんから「炭水化物を控えた方が良いのか?」という質問を受けることもありますが、過度の炭水化物制限には注意が必要です。

編集部編集部

運動療法もおこなうのですか?

菊野 庄太先生菊野先生

運動療法は患者さんの状態を見ながら、有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせておこないます。有酸素運動は心肺機能を、レジスタンス運動は骨格筋量と筋力を向上させるためにおこないます。

編集部編集部

運動療法をする上での注意はありますか?

菊野 庄太先生菊野先生

糖尿病のコントロール状態や合併症の状況によっては、運動制限が必要になる場合があるため、運動療法を開始する前には必ず医師のチェックを受け、指示を守っておこなうようにしましょう。

編集部編集部

お薬も使わないといけないのでしょうか?

菊野 庄太先生菊野先生

食事療法と運動療法を続けても、なお、血糖コントロールが不十分な場合には、薬物療法も検討します。薬物療法には、経口薬や注射薬を含め多くの種類があります。生活スタイルや年齢、体重、合併症の程度、肝臓や腎臓の働きを確認したうえで、慎重に選択する必要があります。

編集部編集部

お薬は慎重に使う必要があるのですね。

菊野 庄太先生菊野先生

はい。薬物療法を開始する場合でも少量から始め、血糖コントロールの状態をみながら慎重に調節します。生活習慣の見直しにより血糖コントロールが改善すれば、薬物療法の減量や中止が可能になることもあります。薬物療法は漫然と継続するのではなく、常に減量・中止を目指して治療していきます。

1型糖尿病の治療法

1型糖尿病の治療法

編集部編集部

1型糖尿病の治療はどのようなものになるのですか?

菊野 庄太先生菊野先生

1型糖尿病の方は、カーボカウントなどの食事療法およびインスリン治療が基本となります。

編集部編集部

1型糖尿病の方はインスリン治療が基本になるのですね。

菊野 庄太先生菊野先生

はい。比較的、緩やかに発症・進行するタイプの1型糖尿病の場合、初期にはインスリンが必要とならない時期もありますが、多くの場合、徐々にインスリンが必要となっていきます。

編集部編集部

インスリン治療はどのようにおこなわれるのですか?

菊野 庄太先生菊野先生

インスリンにはさまざまな種類が存在し、その適切な注射回数や注射量は、1型糖尿病患者さんの日常の生活スタイルや食事、運動、年齢によって大きく異なります。一人ひとりの患者さんと相談しながら、それぞれの患者さんにとって最適な治療スタイルの確立を目指します。腕に装着した間歇(かんけつ)スキャン式持続血糖測定器を用いて血糖値をはかり、血糖変動をグラフ化することで、日々の自己管理をサポートすることも可能です。

合併症にも注意が必要

合併症にも注意が必要

編集部編集部

糖尿病の治療で、ほかに気にしなければいけないことはありますか?

菊野 庄太先生菊野先生

1型・2型糖尿病に関わらず、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害や動脈硬化性疾患などの合併症にも注意し、必要に応じて合併症をチェックする検査もおこないます。

編集部編集部

神経や目や腎臓などの合併症にも気を配らないといけないのですね。

菊野 庄太先生菊野先生

はい。合併症の発症・進展予防には、血糖コントロールだけではなく、体重や血圧、脂質異常症、生活習慣の改善も重要です。これらの因子も総合的に管理、是正を目指していきます。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージがあれば。

菊野 庄太先生菊野先生

くり返しになりますが、糖尿病治療の目的は、血糖を適切な範囲にコントロールすることで、さまざまな糖尿病の合併症の発症、進展を阻止し、健康な人と変わらない人生を目指すことです。そのためには早期発見、そして早期治療が大切です。

編集部まとめ

「糖尿病は治らない」「一生治療が必要」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。それは正しいことですが、合併症の発症や悪化を防いでいくには根気よく治療を継続することが必要です。糖尿病と診断されたら必ず医師の指示に従い、治療を継続するようにしましょう。

医院情報

本駒込内科・糖尿病内科クリニック

本駒込内科・糖尿病内科クリニック
所在地 〒113-0021 東京都文京区本駒込3-1-4 シュトラーレ本駒込2階
アクセス 東京メトロ南北線「本駒込」駅2番出口すぐ
都営三田線「白山」駅A3出口より徒歩6分
診療科目 内科、糖尿病内科

この記事の監修医師

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