【骨折に要注意】「糖尿病」患者の骨粗しょう症発症リスクについて教えて

骨粗しょう症を発症すると、わずかな衝撃で骨折をしてしまい、日常生活に大きな支障を招くこともあります。実は糖尿病と骨粗しょう症は密な関係にあり、糖尿病を発症すると骨粗しょう症のリスクも上昇します。一体なぜ、そのようなことが起きるのか、本駒込内科・糖尿病内科クリニックの菊野先生にメディカルドック編集部が詳しく聞きました。

監修医師:
菊野 庄太(本駒込内科・糖尿病内科クリニック)
糖尿病と骨粗しょう症の関係は?

編集部
糖尿病になると骨粗しょう症のリスクが上がると聞きました。本当ですか?
菊野先生
はい、本当です。研究によると、1型糖尿病の患者さんで7倍程度、2型糖尿病の患者さんで2倍程度も骨折しやすいことがわかっています。
編集部
なぜ、糖尿病になると骨粗しょう症になりやすいのですか?
菊野先生
骨粗しょう症とは、骨強度が低下して、骨折リスクが増加する病気です。骨強度は、「骨密度」と「骨質」の2つの要素で決まります。骨密度は、皆さんが検診などで測定されることもある、馴染みのある検査値だと思います。一方の骨質とは、普段聞きなれない言葉だと思いますが、骨の微細構造などで規定される骨の状態のことをいいます。糖尿病患者さんでは、インスリン分泌の低下や慢性的な高血糖により、骨密度の低下や骨質の劣化が起きてしまいます。そのため、骨粗しょう症になりやすいのです。
糖尿病患者が骨粗しょう症になりやすいメカニズム

編集部
糖尿病になると骨密度が低くなったり、骨質が悪くなったりするのですね。
菊野先生
はい。インスリンは、骨を作る骨芽細胞を増殖させる働きがあるため、インスリンが欠乏している1型糖尿病患者さんでは骨密度が低くなります。一方で、肥満やインスリン抵抗性のある2型糖尿病患者さんでは、骨密度は相対的に高いものの、骨質劣化による骨強度低下が考えられています。
編集部
糖尿病の人は、骨密度が高くても安心できないのですか?
菊野先生
その通りです。1型、2型のいずれの糖尿病患者さんでも、骨質の劣化が進んでおり、これが骨強度低下と骨折リスク上昇に関与していると考えられています。1型、2型に関わらず、糖尿病患者さんは骨密度から予測される骨折リスクよりも、実際の骨折リスクが高くなっています。
編集部
糖尿病の状態だと、健康な骨ができにくくなるということですね。
菊野先生
はい。糖尿病では、相対的にインスリンが不足していることや慢性的に血糖値が高いことで、骨の構造に変化が起こり、酸化ストレスなどの要因も重なり合って、骨質を劣化させていると考えられています。
糖尿病の人が骨折を防ぐには?

編集部
そのほかにも、糖尿病の人が骨折しやすくなる原因はありますか?
菊野先生
糖尿病罹病期間が長いほど、また血糖コントロール状況が悪いほど、骨折リスクが上昇するという報告があります。とくに糖尿病治療中のご高齢の患者さんや、腎機能障害のある患者さんでは、低血糖のリスクが高くなります。これが転倒の原因となって、骨折率を上昇させるという可能性も考えられています。
編集部
低血糖や転倒にも注意が必要なのですね。
菊野先生
その通りです。ご高齢の糖尿病患者さんの筋肉量の減少(サルコペニア)も、運動機能やバランス機能を低下させ、転倒の原因となります。こうした骨折にも注意が必要です。
編集部
筋肉量の減少にも注意が必要なのですね。
菊野先生
はい。筋肉量が落ちないよう、バランスの良い食事療法で、過度の痩(や)せにならないようにすることも大切です。
編集部
ほかにどんなことに注意すればいいのでしょう?
菊野先生
定期的に骨密度検査をして、必要に応じて骨粗しょう症の治療を受けるようにしましょう。骨密度が高くても安心せずに、血糖コントロールと同時に、転倒などによる骨折を予防していくことが大切です。そのため、医療機関で相談し、自分にとって適した血糖管理目標値を確認してもらい、低血糖やサルコペニアを予防しながら、糖尿病治療を継続するようにしましょう。目標とすべき血糖値・HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値や治療内容は、糖尿病の種類、年齢や合併症の程度によって異なります。
編集部
最後に読者へのメッセージがあれば。
菊野先生
糖尿病患者さんでは、骨密度から予測されるよりも、骨折リスクが大きいと言われています。骨密度が高くても油断せずに、糖尿病の病歴の長い人や、血糖コントロール状況に不安のある人は医療機関で相談し、自身に合った治療目標を確認してもらい、治療を継続していくようにしましょう。
編集部まとめ
骨粗しょう症はただ「骨折をしやすくなる」というだけでなく、骨折を原因として寝たきりや要介護の状態に進行することもある、危険な病態です。骨粗しょう症というと高齢者のもの、というイメージがあるかもしれませんが、糖尿病患者さんは骨粗しょう症のリスクが高いため、骨の健康にも気を配るようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、糖尿病内科 |