「インフルエンザ」は検査で“陰性”でも感染の可能性があることはご存じですか?【医師解説】

発熱や倦怠感などの症状がみられる「インフルエンザ」。疑われる際には病院で検査をおこないますが、「陰性」という結果が出てもインフルエンザと診断されるケースがあることを知っていますか? 一体どういうことなのか、「グローバルヘルスケアクリニック」の水野先生に教えていただきました。

監修医師:
水野 泰孝(グローバルヘルスケアクリニック)
検査で「陰性」と出ても、インフルエンザと診断されることはある?

編集部
インフルエンザの検査で「陰性」と出ても、インフルエンザと診断されることがあると聞きました。本当ですか?
水野先生
はい、本当です。検査で「陰性」という結果が出ても、症状などからインフルエンザが疑われる際には診断がつくこともあります。
編集部
それはどういうことですか?
水野先生
そもそも、インフルエンザのウイルスには1〜3日間の潜伏期間があり、この期間は体内でウイルスがどんどん増えている状態です。特に感染の初期には検査に必要なウイルス量が不足し、検出されるレベルにまで達しないことがあります。このような場合には、検査をしても陰性と出ることがあるのです。
編集部
検査では陰性だけど、体内にはインフルエンザのウイルスがあるということですね。
水野先生
はい、このようなことを「偽陰性」と言います。一般的には、発熱などの症状が出てから半日~1日程度が経過するとウイルスが増えますから偽陰性の可能性は減ります。反対に、発症して数日が経過すると再びウイルスの量が減少するため検出限界以下となり、偽陰性になる場合もあります。
編集部
感染の初期や発症してから数日経ってしまった場合には、偽陰性の可能性があるのですね。
水野先生
そうですね。インフルエンザの診断では検査結果だけでなく、症状や流行の状況などを総合的に考察することが必要になります。
インフルエンザの検査内容

編集部
そもそもインフルエンザの検査とは、どうやっておこなうのですか?
水野先生
一般的には鼻や喉から粘液を採取して、インフルエンザウイルスを検出します。このような検査を「抗原検査」と言います。
編集部
抗原検査とはなんですか?
水野先生
簡単に言うと、病原体そのものが含まれているかを調べる検査のことです。採取した検体を試薬に混ぜて、検査キットに数滴垂らします。もし検体の中にインフルエンザウイルスがいればキット上に線が出現します。これにより陽性と判断します。
編集部
検査の精度はどれくらい高いのですか?
水野先生
インフルエンザの検査は非常に精度が高いとされていますが、検査をおこなうタイミングによっては50〜70%に下がってしまいます。そのため、インフルエンザの診断では検査をおこなうタイミングが重要になります。
編集部
そのほかにも、検査方法はあるのでしょうか?
水野先生
PCR法やウイルス分離法などの方法もあります。PCR法は、インフルエンザウイルスの遺伝子を数千万倍に増やしておこなう検査で、ウイルス分離法はインフルエンザウイルスを鶏卵などのなかで増やし、ウイルスの性質を確認する検査です。しかし、これらは一般的におこなう抗原検査と比べて時間がかかるというデメリットがあり、迅速に治療をおこなうことができません。そのため、通常は抗原検査がおこなわれています。
編集部
様々な検査方法があるのですね。
水野先生
最新の検査方法として、AIを使ったインフルエンザ検査もあります。これはAIを搭載した特殊なカメラで喉の画像を撮影し、インフルエンザの典型的な所見を確認する検査です。これに問診を組み合わせ、インフルエンザを診断するのです。
編集部
AIを使った検査方法もあるのですね。
水野先生
ただし、この検査はまだ新しく、一部の医療機関でしかおこなわれていません。しかし一方で、「粘液を採取するとき、鼻に綿棒を入れるのが苦痛」という人にとっては楽に感じられるのではないかと思います。保険も適用になるので、興味がある人は医師に相談してみるといいと思います。
インフルエンザの検査を受ける際の注意点

編集部
インフルエンザの検査を受ける時の注意点を教えてください。
水野先生
検査を受けるタイミングが大切です。インフルエンザに感染してすぐではなく、発熱などの症状が出てから半日程度経過した後に検査を受けるのが望ましいと言われています。また、発症から時間が経ちすぎると検査の精度が低下するので、熱が高いなど症状があるうちに検査を受けることをおすすめします。
編集部
そのほか、どのようなことに注意する必要がありますか?
水野先生
検査結果で陰性と出ても、必ずしもインフルエンザにかかっていないわけではない点を覚えておきましょう。検査結果だけで判断するのではなく、医師の問診や流行状況なども総合的に考慮しましょう。また、「インフルエンザではない」と診断されても、体調が悪いときには外出を避ける、なるべく人と接触をしないなどの心がけも大切です。
編集部
検査費用はどれくらいですか?
水野先生
医療費の自己負担が3割の場合、診察料などを除く検査そのものの費用は、抗原検査・AIを使った検査ともに1000円程度です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
水野先生
インフルエンザに限ったことではありませんが、感染症を人にうつさないためにも、発熱したり体調が悪かったりしたら、人と接触しない、仕事を休むといったことを改めて確認してほしいと思います。また、現在は医療機関を受診する際に体調が悪くてもマスクをつけずにいる人が散見されます。健康な人であれば感染症に罹患する確率はそれほど高くありませんが、病院には免疫力が低下した人がたくさんいます。熱が高い、咳がひどいなどの症状で病院を受診する際には、他人への感染を予防するためにも、必ずマスクを着用してください。感染症の拡大を予防するためにも、基本ルールを改めて見直してほしいと思います。
編集部まとめ
「インフルエンザにかかったのではないか?」と思った場合、検査を受けることは有効ですが、それよりも大事なのは体調が悪かったり熱が高かったりして感染症が疑われる場合には、他人との接触を避けることです。そうすることで感染拡大を防ぐことができます。新型コロナウイルスが5類へ移行して以来、そうした社会的なルールが曖昧になっている人もいるかもしれませんが、もう一度確認してみてはどうでしょうか。
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