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怖い合併症「インフルエンザ脳症」にご用心 初期症状・発症しやすい年齢を医師が解説

 公開日:2025/01/20

国立感染症研究所は、2025年第1週のIDWR速報データおよび2023/2024シーズンにおける「インフルエンザ脳症」の発生状況の検証結果を発表しました。このシーズンには、インフルエンザの大流行に伴いインフルエンザ脳症の発生が増加したことが確認されています。この内容について五藤 医師に伺いました。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。現在は「竹内内科小児科医院」の院長。日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医。

インフルエンザの感染状況について

国立感染症研究所が発表している、インフルエンザの最新の感染状況について教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

国立感染症研究所は、2024年12月30日〜2025年1月5日の1週間に全国約5000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数を明らかにしました。この報告によると、全国で14万1998件の報告があり、1医療機関あたりの患者の報告数は全国平均で5.32人だということがわかりました。前週と比べると1.69人少なくなっていますが、今後も注意が必要です。

1医療機関あたりの患者の報告数が最も多くなったのは岐阜県で、13.91人でした。2番目に多くなったのは福島県で13.30人となり、次いで茨城県が12.21人、岩手県が12.05人、北海道が11.65人と続いています。東京都や神奈川県、沖縄県など、報告件数が比較的少ない地域もありますが、全国的に感染の広がりが見られるため、油断は禁物です

インフルエンザの流行に伴って、インフルエンザ脳症などを発症する子どもらが相次いでいることも報告されています。冬季はインフルエンザが感染拡大しやすく、今後も増加が予想されることから、手洗いやマスクの着用、予防接種の徹底が重要です。

インフルエンザ脳症とは? 初期症状は? 何歳に多い?

インフルエンザの流行に伴いインフルエンザ脳症の発生が増えているということですが、インフルエンザ脳症について教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルス感染後、脳に炎症を引き起こす重篤な神経系の合併症です。急性脳炎」とも呼ばれ、免疫反応やサイトカインストームが主な原因とされています。重篤化すると後遺症や死亡につながる可能性があるため、早期診断と治療が極めて重要です。日本では2003年から感染症法に基づき全例の届け出が義務づけられており、毎年インフルエンザの流行期に発生しています。

インフルエンザ脳症の初期症状としては、高熱、けいれん発作、意識障害、異常行動、嘔吐などが挙げられます。初期対応が遅れると、脳への損傷が進行するリスクが高まりますので、注意深い観察が必要です。

国立感染症研究所によると、2023/2024シーズンのインフルエンザ脳症の患者数は189人で、少なくとも8人が死亡したとのことです。なお、2019/2020年はインフルエンザ脳症の患者が258人で、このうち16人が死亡しました。主にインフルエンザ脳症は小児に発生することが多く、日本の2023/2024シーズンのデータによると、発症年齢の中央値はA型が8歳、B型が7歳でした。小児は免疫系が未成熟であり、炎症反応が過剰に働きやすいことが背景と考えられます。

インフルエンザ脳症についての受け止め

インフルエンザ脳症について、受診の目安や対処法などを教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

インフルエンザ脳症はインフルエンザに感染後、脳に炎症が起こる重篤な合併症で、迅速な対応が求められます。インフルエンザ患者に、精神状態の変化やけいれんなどの神経症状がみられた場合、抗ウイルス薬や可能であれば抗炎症薬の治療を早期におこなうことで、大幅に改善できます。インフルエンザ脳炎の重大性と早期治療の重要性について、一般の意識を高めることが不可欠です。

インフルエンザ脳症に対する具体的な対処法としては入院治療が基本で、抗ウイルス薬や抗炎症薬の投与が一般的です。例えば、メチルプレドニゾロンパルス療法は、中枢神経系の炎症を抑える効果が期待されており、早期の治療が重要とされています。また、脳圧を下げる治療として、脳低温療法や体温管理が考慮されます。さらに、重篤な場合には、特殊療法として血漿交換療法や免疫グロブリン大量療法も選択肢に含まれます。治療の有効性を上げるためには、早期診断と多様な治療法の組み合わせが重要です。患者ごとの病態に応じた個別化治療が求められ、これにより予後改善を目指しています。

編集部まとめ

インフルエンザの流行により、インフルエンザ脳症の患者数が増えています。インフルエンザの患者数は前週よりも減少していますが、いまだに患者数は多い状況なので引き続き注意が必要です。小児においては早期の診断・治療が極めて重要なので、初期症状が表れた際には素早く医療機関を受診し、医療機関の指導に従った適切な対処を心がけましょう。手洗いやマスクの着用の徹底、予防接種の実施を積極的におこない、感染拡大防止に努めましょう。

この記事の監修医師