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注射せずに「インフルエンザ」のワクチン接種が可能に “経鼻タイプ”が今シーズンから開始

 公開日:2024/10/12

FDA(アメリカ食品医薬品局)は、鼻腔に吹き付けるタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」を自ら、もしくは介護者が投与することを初めて承認しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

FDAが承認した内容とは?

鼻腔に吹き付けるタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」に関して、自ら、もしくは介護者が投与することをFDAが初めて承認しましたが、このニュースについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

FDAは、2024年9月20日にフルミストを自分で投与すること、または介護者が投与することを初めて承認しました。フルミストは、弱毒化した生きたインフルエンザウイルスを鼻に吹きかけて使用する経鼻タイプのワクチンで、注射タイプより早く局所免疫を形成することが特徴です。以前の研究では「注射タイプのワクチンよりも経鼻ワクチンの方が小児で効果がある」とされていましたが、最近の研究では「経鼻ワクチンと注射タイプの効果は同等である」ということが示されています。

フルミストの対象は、2~49歳に設定されています。ただし、「ワクチンに含まれる成分に対して激しいアレルギー反応を示す人」「解熱鎮痛薬のアスピリンを服用している小児および10代」「喘息を持つ2~4歳」「免疫力が弱く慢性疾患がある人」「妊娠中の女性」「脾臓が機能していない人」には使うことができません。フルミストの副反応については、成人の場合、発熱や喉の痛み、鼻水といったインフルエンザのような症状が出る可能性があります。小児の場合、喘鳴、嘔吐、筋肉痛が副反応として表れます。

現時点で、フルミストを自宅で使用するためには、医師による処方箋が必要になります。アメリカでは近いうちに「オンライン薬局でフルミストを提供する」という情報もあるので、自宅から出ることなくフルミストを投与することが可能になりそうです。フルミストが配送される際には、保管方法や使用方法に関する詳しい説明書も同梱される方針です。

フルミストは日本でも使える?

今まで伺ったお話はアメリカでのフルミストの仕様についてですが、日本でもフルミストを利用することができるのでしょうか?

中路 幸之助 医師中路先生

日本では、今シーズンから製薬会社の第一三共が「フルミスト点鼻液」の販売を開始しています。鼻から接種するインフルエンザワクチンの発売は、日本では初めてとのことです。接種対象年齢はアメリカでの年齢と異なり、2歳以上19歳未満です。なお、フルミストは、イギリスのアストラゼネカの子会社が開発したワクチンで、2023年3月に日本での製造販売承認が取得されています。今回は季節性インフルエンザA型で2種、B型で1種の3種類のウイルスに効果がある「3価ワクチン」を開発し、2024年8月に厚生労働省から一部変更承認されていました。

今回のニュースへの受け止めは?

FDAがフルミストを自ら、もしくは介護者が投与することを初めて承認したことへの受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回、経鼻ワクチンが承認されたことで、季節性インフルエンザの予防における新たな選択枝が増えたことの意義は大きいと考えます。年齢などの使用にあたりいくつかの制限はありますが、予防効果が約1年と長く持続する点や、実際の流行株がワクチン株と異なっても発症を軽減する効果も期待されています。ただし、生ワクチンを経鼻投与するため鼻閉・鼻水などの上気道炎の症状は、従来の注射より発現する頻度が高いことも知っておく必要があるでしょう。

まとめ

鼻腔に吹き付けるタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」を自ら、もしくは介護者が投与することを、FDAが初めて承認しました。日本でも2歳以上19歳未満を対象に今シーズンから提供されており、注射に苦手意識を持つ子どもにとって接種の選択肢が広がりそうです。

この記事の監修医師