「ヴィーガン」って本当に健康や美容に良いの？ 産業医が解説するメリットと注意点

佐藤先生

ヴィーガンとは、「完全菜食主義者」と呼ばれる人たちのことで、動物性食品を一切摂取しないライフスタイルを指します。食事内容としては、赤身肉や白身肉・魚介・乳製品・卵・蜂蜜・ゼラチンなどを避け、野菜や果物・豆類・穀物・ナッツなど植物由来の食品が中心となります。ヴィーガンの考え方の一つには、「動物を苦しめない」という倫理的な側面も含まれており、食品に限らず、皮製品やシルク、ウールなどの動物由来の製品も使用しないことが特徴です。ヴィーガンの本筋からは離れるかもしれないですが、環境や動物愛護の側面以上に、私のように健康の最適化の方法としてヴィーガンのスタイルをとっている人もいます。

佐藤先生

佐藤先生

佐藤先生

ヴィーガンの食事は動物性食品を完全に排除するため、栄養バランスを取るのがやや難しくなっています。たとえば、植物由来の非ヘム鉄は動物由来のヘム鉄より吸収率が低いため、鉄分不足のリスクが高まります。そのため、妊娠中の女性や成長期の0～12歳の子ども、病気療養中の方などは、特定の栄養素が不足しやすいため、十分に対策したうえでヴィーガンを開始する必要があります。

佐藤先生

一部のヴィーガンが栄養不足により痩せすぎたり、顔色が悪くなったりすることがあり、それが「老けた」と感じられることもあります。一方で、果物や野菜に含まれるビタミンCを積極的に摂取することで、動物性食品の約64倍の抗酸化物資が得られます（3）。そのため、植物ベースの食事に切り替えると、3週間で全身の炎症の指標が29%減少するという報告もあり（4）、老化の原因である全身の炎症を減らして若く保つ可能性を秘めています。

佐藤先生

そうですね。「どのように」食べるかも大切です。重要なことの一つは「食事の摂り方」です。現在では多くの人が知っていて、注意が必要なことの一つは、「炭水化物の食べ過ぎによる急激な血糖値の上昇」です。食後高血糖は、体内のたんぱく質と結びついて終末糖化産物（AGEs）を作り出します。AGEsは肌のハリを失わせ、シワやくすみの原因となるため、老化を加速させる要因となります（5）。

佐藤先生

はい。それは「脂質のとり方」です。炭水化物の食べ過ぎがよくないことは多くの人が知るようになりましたが、逆に現在でも多くの人が知らず、同じように注意が必要なことの一つは、高脂質食による急激な血中の中性脂肪やコレステロール値の上昇です。食後高脂質は、酸化ストレスや腸内細菌から出る炎症物質のエンドトキシンが増加し、動脈硬化がより進行しやすくなって老化を早めます （6,7）。

佐藤先生

週に1回の緩やかなヴィーガンでも十分にメリットがありますよ。たとえば、ポール・マッカートニーが提唱した「ミートフリーマンデー」は、月曜日だけお肉をお休みするという簡単に取り組める方法です。これだけでも、家畜の消費を減らし、温室効果ガスの削減につながります。コレステロールや脂肪の摂取も抑えられるので、健康管理としても良い影響が期待できます。

佐藤先生

野菜たっぷりのカレーや、かぼちゃやレーズン、枝豆を使ったサラダは、ボリュームもあり栄養価が高いヴィーガンメニューです。最近では外国人観光客の増加に伴って、ヴィーガン対応のレストランも増えてきているので、満足感のあるメニューが気軽に楽しめます。また、朝食にはご飯と納豆、お漬物、豆腐のお味噌汁など、発酵食品を取り入れると良いでしょう。

佐藤先生

ヴィーガン食には、普段から使い慣れた食材の代用がたくさんあります。たとえば、肉の代わりに豆腐や厚揚げ、シイタケ、大豆ミートなどを使うと、しっかりと食べごたえのある料理が作れます。魚介類の代わりには、海苔や昆布などの海産物が活躍しますし、チーズや牛乳は、豆乳やアーモンドミルク、ヴィーガンチーズに切り替えれば大丈夫です。これらの代用品は、身近なスーパーや通販でも購入できます。自分にとって無理のない範囲で、ぜひ取り入れてみてください。