乳児の赤あざ「放置でOK」は時代遅れ? 早めに治療すべきワケを医師が解説!
現在は、医療技術の進化により「乳児の赤あざは、できるだけ小さいうちに治療をおこなった方がいい」とする考えが普及しています。これまでは経過観察が一般的でしたが、果たして本当に治療をした方がいいのでしょうか。「よしクリニック」の中野先生に解説していただきました。
監修医師:
中野 貴光(よしクリニック)
乳児の赤あざができる原因
編集部
乳児にできる赤あざについて教えてください。
中野先生
代表的なものに、「乳児血管腫」があります。乳児血管腫は、未熟な毛細血管が増殖してできるあざです。
編集部
乳児血管腫は生まれつきできるのでしょうか?
中野先生
いいえ。ほとんどが生まれつきではなく、生後数週以内に赤い湿疹のような状態で表れます。はじめは表面が赤いだけですが、徐々に隆起してきます。盛り上がってくると、赤い凸凹した腫瘤状になり、いちごのように見えることから「いちご状血管腫」とも呼ばれています。
編集部
いつ頃から発症するのですか?
中野先生
一般的に生後1~4週に出現し、1歳くらいまでは増大する可能性があり、急激に大きくなることもあります。増大した腫瘤の血流が悪くなって潰瘍(かいよう)化したり、出血したりすることもあります。多くの場合、1歳以降に少しずつ盛り上がりも赤みも減少していきますが、ブヨブヨとした皮膚や赤みが残る場合もあります。
編集部
そのほかには、どのようなあざがありますか?
中野先生
「単純性血管腫」という赤あざもあります。単純性血管腫は先天性の平坦な赤あざです。一般に、大人になっても自然に消えることがなく、成長に伴って色が濃くなったり、腫瘤(しゅりゅう)を作ったりする場合もあります。
編集部
単純性血管腫は消えないのでしょうか?
中野先生
単純性血管腫の一種である、額の真ん中や上まぶたなどにできる「サーモンパッチ」や、頭部からうなじにかけてできる「ウンナ母斑」であれば、成長に伴って薄くなることがあるとも言われていますが、必ず消えるわけではありません。そのほかの部位の単純性血管腫については、消えることはありません。
編集部
赤あざにも色々な種類があるのですね。
中野先生
基本的に、赤あざと呼ばれる血管腫は良性なので、かなり大きい場合を除けば健康状態に影響を及ぼすことはありません。いちご状血管腫は自然消退するものがある一方で跡が残るケースも多く、単純性血管腫は基本的に待っても消えることはありません。そのため、まずは専門の医療機関で診断を受けて、適切な処置の開始をおすすめします。
赤あざの治療法
編集部
赤あざは、どのように治療するのでしょうか?
中野先生
基本的に、赤あざに対してはいちご状血管腫も単純性血管腫もレーザー治療が有効です。レーザーを照射する医療機器には様々な種類がありますが、赤あざには色素レーザー(Vビームレーザー)を用います。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
中野先生
色素レーザー治療では、血液に含まれている「ヘモグロビン」という色素をターゲットにしてレーザーを照射します。レーザーが血管を流れる赤血球の中の酸化ヘモグロビンに選択的に吸収されることで、血液が熱くなり、皮膚表面で増殖した過剰な血管にダメージを与えて閉塞させていきます。
編集部
一度で治療効果がみられるのですか?
中野先生
1回でも効果が出ることもありますが、血管の深さ、太さ、流れる血液の速さなど色々な条件があるため、設定を少しずつ変えながら複数回の治療をおこなう必要があります。特に、いちご状血管腫には増殖期があり、毛細血管の増殖とレーザーによる血管の閉塞が同時に進むという、いわば綱引きのような状態になります。レーザー治療をおこなっていても増大や潰瘍化を起こすことはありますが、治療を繰り返すことで拡大を抑制でき、色が次第に落ち着くことが期待できます。
編集部
どれくらいの頻度で治療をおこなうのですか?
中野先生
保険治療でのレーザー照射は、基本的に3カ月以上の期間を空ける必要があります。
編集部
治療は何回受ければいいのでしょうか?
中野先生
おおむね3〜5回くらい照射するケースが多いですね。赤あざの場合、保険治療に回数の制限がないことと、少しずつ薄くなりますが、完全には消えないこともあるので、お父さんやお母さんが納得するまで複数回の治療をおこなうことが多くなります。
「経過観察で問題ない」というのは過去の話?
編集部
子どもの赤あざは自然に消えることも多いので「経過観察でいい」という話を聞いたことがあります。
中野先生
基本的に、単純性血管腫は自然に消滅することがありません。ただし、前述したサーモンパッチやウンナ母斑は、成長に伴って自然に薄くなることもありますが、実際には消えないことも多いので、当院では全例で治療をおすすめしています。また、いちご状血管腫も1歳を超えたら少しずつ消退するとされるため、以前は経過観察で問題ないというのが一般的でした。しかし、自然に消えるまでには年単位で時間がかかりますし、隆起や赤みが残ることもあります。レーザー治療にデメリットはほぼないため、できるだけ早期の治療開始をおすすめします。
編集部
生後どれくらいからレーザー治療を開始できるのですか?
中野先生
当院の場合は、生後すぐからでも治療を開始しています。特にいちご状血管腫は、増大する前に一刻も早く打った方が効果は高くなります。
編集部
できるだけ早めがいいのですね。
中野先生
はい。レーザー治療だけでは急激な増大が抑えられないいちご状血管腫の場合や、目の近くなどのレーザー治療が危険な部位の場合には、プロプラノロール(βブロッカー)の内服治療もおこないます。レーザー治療も内服治療も、なるべく早期に始めた方が経過は良好とされています。
編集部
レーザーを照射するとき、皮膚へのダメージはありませんか?
中野先生
医療機器にもよりますが、例えば当院で使用している機器は、冷たい空気を当てながら表皮を保護しつつレーザー照射をおこなうため、多少の痛みはありますが皮膚へのダメージはほとんどありません。治療時間も数秒~数分程度で終わるので、それほど負担はないと考えていただいてかまいません。赤あざの治療の場合には、照射当日から入浴できますし、ガーゼやテープによる保護も不要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中野先生
乳児の赤あざの対処法について、「待っていれば自然に消えるから大丈夫」と説明する医療機関もありますが、適切な治療時期を逃してしまうことになりかねません。たしかに、以前は経過観察をおこなうのが一般的でしたが、現在では優れた医療機器も開発され、治療で治すことができるようになっています。乳児の赤あざが心配であれば、子どもの赤あざ治療を専門的におこなっている医療機関へ相談することをおすすめします。
編集部まとめ
乳児の赤あざは自然に消えるものもありますが、消えないものも多く、跡が残ってしまうこともあります。心配な場合は早めに医療機関に相談を。その際には、大人と子どものあざ治療は専門性が異なるので、子どもの治療を積極的におこなっている医療機関を受診しましょう。
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診療科目 | 形成外科、皮膚科、美容皮膚科 |