なぜ「糖尿病治療」で糖質制限をすべきかご存じですか? メリット・デメリットも医師が解説!
糖尿病の治療では、常に血糖値が安定した状態を保つ必要があります。そのためには、一般的におこなわれているカロリー制限よりも糖質制限の方が有用です。しかし、糖質を制限する食事には、メリットもあればデメリットもあります。糖質制限の実態と注意点について、「吉田内科クリニック」の吉田先生に教えていただきました。
監修医師:
吉田 光範(吉田内科クリニック)
糖質制限とは?
編集部
糖尿病の治療で「糖質制限」という方法があると聞きました。どのようなものですか?
吉田先生
「炭水化物(糖質+食物繊維)」「脂肪」「タンパク質」を三大栄養素と言い、その中で炭水化物(糖質)を制限することが糖質制限です。ちなみに、糖質=糖類ではありません。糖質制限は、糖尿病の治療として有効と考えられているだけでなく、減量や体質改善にも効果が期待できるとされています。
編集部
具体的に、どのようにしておこなうのですか?
吉田先生
米類、小麦粉類(パン、パスタ、うどんなど)、いも類、くだもの、甘いものを控えていただきます。ただし、肉類、魚介類、卵、チーズなどの乳製品、大豆製品、オイル、バターなど、糖質が少なく脂質やタンパク質の多いものは食べることができます。
編集部
なぜ、糖質を制限する必要があるのですか?
吉田先生
糖尿病とは、血糖値が急激に高くなることを言いますが、三大栄養素のうち、血糖値をすぐに上げるのは主に糖質だけだからです。食事後は健康な人でも血糖値が上がりますが、インスリンの働きにより徐々に低下していきます。しかし、糖尿病の人はインスリンの効きが悪くなったり、そもそもインスリンの分泌量が低下したりすることで、食後血糖値がなかなか下がらなくなります。そうした事態を避けるため、血糖値を上昇させる働きの強い糖質の摂取を制限し、血糖値を上げないようにしようというのが糖質制限の目的です。
糖質制限にはどのようなメリットがあるのか?
編集部
糖質制限には血糖値を上昇させないことのほか、どのようなメリットがあるのですか?
吉田先生
糖質の摂取を制限すると、インスリンの分泌量が少なくなります。インスリンには脂肪を体内に溜め込む働きがあるため、この分泌量が少なくなれば、脂肪が体内に蓄積されにくくなります。その結果、短時間で体脂肪が減り減量効果が現れやすいのです。
編集部
そのほかに、どのようなメリットがありますか?
吉田先生
糖質の摂取を制限するだけなので、比較的簡単におこなえるというメリットがあります。複雑なカロリー計算や知識は不要です。また、糖質の摂取は制限しますが、脂質やタンパク質はたくさん摂っても大丈夫なので十分満腹感を得られるというメリットもあります。
編集部
お酒を飲むことはできるのですか?
吉田先生
糖質を多く含むビールや日本酒などは控える必要がありますが、糖質が比較的少ないウイスキー、ブランデー、焼酎などの蒸留酒は飲むことができます。ワインを飲むなら、糖質が少ない赤ワインがおすすめです。
編集部
メリットがたくさんある食事療法なのですね。
吉田先生
そうですね。糖尿病以外にも高血圧や脂質異常症、逆流性食道炎、アレルギー性疾患、うつ、不眠、冷え性などにも効果が期待できることが研究により明らかになっています。
糖質制限のデメリットと注意点
編集部
反対にデメリットはあるのですか?
吉田先生
糖質制限食は、開始直後から血糖値に大きな変化がみられます。そのため、すでに糖尿病の治療として経口血糖降下剤やインスリン注射をしている場合には、急激に低血糖を起こすことがあるため注意が必要です。低血糖の症状としては、頭痛、強い眠気、めまい、だるさなどが挙げられます。その際は、医師による適切な指導が必要です。自己判断でおこなわないようにしましょう。
編集部
そのほかにも、デメリットはありますか?
吉田先生
そもそも、炭水化物は糖質と食物繊維の総称であり、糖質制限をおこなうと自然と炭水化物の摂取量を減らすことになります。そうなれば、糖質だけでなく食物繊維の摂取量も減ることになり、結果として便秘が起きることもあります。そのため、糖質制限をおこなっているときは意識して食物繊維を多く摂取する、また、水分を多めに摂ることに気をつけましょう。
編集部
糖質制限をおこなう際に、気をつけることはありますか?
吉田先生
急激な糖質制限では、体脂肪だけでなく、一時的に筋肉量が減ることがあります。これは肉体を維持するためのエネルギー源が、糖質から脂肪、タンパク質に移行するために起こる一時的な現象です。糖質制限を続けると、ほとんどの場合、数カ月で元の状態に戻ります。また、短期的に急激な糖質制限をおこなうと、普通食に戻したとき、一気にリバウンドして体重が増加してしまうこともあります。無理せず、ストレスを溜めない程度で中・長期的に糖質制限をおこなうことが重要です。必要に応じて医師や管理栄養士の指導を受けることをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
吉田先生
人間の体にとって、一番大切なのは精神的ストレスを減らすことだと思います。精神的ストレスが大きいと病気になりやすいこともわかっています。糖質制限もシビアにやり過ぎることで精神的ストレスになるなら、ある程度緩めるべきだと考えています。そもそも、糖質は麻薬と同じような依存性があり、一度摂取をやめると逆にこれまで以上に食べたい気持ちが強くなります。もし食べずにいることでストレスが強くなるようなら、ストレスにならない程度に、上手に少しずつ食べる方法を考えてみてください。どれくらいシビアに糖質制限をすべきかについては、個人の希望や病状、性格、ライフスタイルなどによって異なります。ストレスに感じない程度で、上手な糖質制限を心がけましょう。
編集部まとめ
糖質制限を継続していた人が、ストレスのあまり反動でお菓子やパンなどをドカ食いしてしまったという話を耳にします。そうしたことがないよう、上手にストレスと折り合いをつけながら継続することが大切とのことでした。医師や管理栄養士などの知恵を借りながら、うまく糖質をコントロールしていきましょう。
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