「訪問診療」の事前準備で必要なことはご存じですか? 患者・家族の心構えも医師が解説
高齢化が進むにつれて、今後は訪問診療(在宅医療)を希望する患者数はますます増えることが予想されます。訪問診療を利用する際、どのような事前準備が必要でしょうか。また、家族はどのような心構えをすればいいのかも知っておきたいところです。今回は「久光クリニック」の石田先生に解説していただきました。
監修医師:
石田 隆雄(久光クリニック)
訪問診療(在宅医療)を利用するときの事前準備とは?
編集部
訪問診療はどのような人が対象ですか? 勧められるのはどんなケースですか?
石田先生
主に、歩行力が落ちていたり、認知症を発症していたりするといった理由で、1人での通院が困難なケースが対象です。
編集部
これから訪問診療をお願いしたいのですが、どのような事前準備が必要でしょうか?
石田先生
まずは、包括支援センターへ相談することをおすすめします。包括支援センターではケアマネージャーを紹介してくれますし、お住まいのエリアで往診をおこなっている医療機関も提案してくれます。すでに介護認定を受けて、サービスが提供されていればケアマネージャーがついているはずなので、担当のケアマネージャーに相談してもいいでしょう。
編集部
まずはケアマネージャーに相談が必要なのですね。
石田先生
あるいは、現在通院している病院のソーシャルワーカーにご相談いただくか、利用を検討している医療機関へ直接相談しても構いません。
編集部
その後は?
石田先生
訪問診療を利用できるかどうか、診療内容はどのようなものかなどを直接、医療機関の相談員や看護師などと面談します。その際には、お住まい、現在の病状、診療のご希望などを率直に伝えるようにしましょう。患者さん一人ひとりに合わせた治療を提供するため、自分の希望と診療方針が合っているかなどを確認することは重要です。
編集部
その際に注意点はありますか?
石田先生
多くのケースで、訪問診療をおこなっている医療機関から「現在、治療を受けている病院から紹介状をもらってきてください」と言われると思います。場合によっては紹介状が不要なこともありますが、あった方がその後の話がスムーズに進むことも多いので、事前に用意することをおすすめします。
訪問診療依頼〜開始まで
編集部
そのほか、訪問診療が開始する前に確認することはありますか?
石田先生
診療内容や費用、緊急時の連絡方法、診療の頻度などを確認しておくといいでしょう。訪問診療をお願いすることが決まれば、利用開始時期を相談します。
編集部
その後は?
石田先生
医師が初回訪問(あるいは事前訪問)した際に、医師から訪問診療についてご説明し、診療計画を提案します。その後は決まった日時に医師と、必要があれば看護師やアシスタントなどが訪れ、訪問診療が開始となります。
編集部
必要な書類はありますか?
石田先生
「かかりつけ医からの診療情報提供書」「医療保険証」「介護保険証」などが必要となります。そのほか服用している薬に関する情報や、公費関係の書類、印鑑などが必要になることもあるので、詳しくは医師や相談員にご確認ください。
訪問診療をおこなう際の心構え
編集部
訪問診療を開始するにあたり、どんなことに注意すればいいでしょうか?
石田先生
まずご家族にとっては、頑張りすぎないことが大切です。在宅医療が始まると、どうしてもご家族の看護や介護の負担が大きくなり、誰か1人に負担が大きくのしかかることも少なくありません。しかし、1人で抱え込まず、周囲と協力できる体制を作って、できるだけみんなで患者さんを支えることが大切です。
編集部
ほかに気をつけたいことは?
石田先生
自宅での療養生活を支えるには、家族も患者もある程度、医療に関する知識や理解が必要になります。もし看護や介護をする上でわからないことがあれば、医師や看護師に相談するなど、いざというときの相談ルートを明確にしておくといいかもしれません。
編集部
そのほかには?
石田先生
医療のことだけでなく、生活や経済的なことなどで不安があれば介護・福祉のスタッフや自治体など、まわりの人に相談するなどして、周囲の助けを借りることも大切です。
編集部
患者本人だけでなく、家族も心構えが必要ですね。
石田先生
そうです。それから大事なのは、いざ具合が悪くなったとき、どういう風にすればいいのかをイメージしておくことです。すぐに救急搬送をおこなうのか、それとも可能な限り在宅医療を継続するのか、あるいは絶対に在宅医療を続けたいのかなど、ご家族で話し合っておくと、緊急時の対応に困らなくて済むと思います。
編集部
そういう話し合いをする際には、患者の意志を優先すべきでしょうか?
石田先生
もちろん、患者本人の意志は重要ですが、家族がその希望を叶えられるのかということも重要です。患者と家族、どちらの意見も取り入れながらうまく折り合いをつけることで、双方にとって満足のいく在宅医療につながります。平時のうちからそうしたことを話し合い、いざというときのイメージを持っておくといいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
石田先生
現在、高齢化が進むにつれて、訪問診療を希望する人は非常に多くなっています。しかし実際は、具合が悪くなってから導入するケースが少なくありません。そうなると訪問診療を開始するハードルが高くなったり、ご自宅でできることに制限が生じたりすることもあります。具合が悪くなる前に訪問診療を開始していれば、先手を打ってケアすることができるので、ぜひ相談しやすい医療機関を探して、気軽に話を聞いてみることをおすすめします。
編集部まとめ
訪問診療を希望する高齢者は増えていますが、それを実現するには、高齢者を支える家族の協力は不可欠です。家族で話し合いの場を持ち、「本人が本当に望んでいることは何か?」「それに対し、家族は何ができるのか」など意見を1つにしておくことが何よりも大切です。
医院情報
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