【緊急事態】「119番通報」と「往診」 どちらを選ぶ? 医師が教える最適とは?
いざというときに役立つ、119番通報と往診。どちらも救急の患者に対応してくれますが、どのように使い分けたらいいのかわからない人も多いのでは? もしもの時にどちらを利用したら良いのか、ねりま西クリニックの大城先生に教えてもらいました。
監修医師:
大城 堅一(ねりま西クリニック)
往診とは?
編集部
往診とはなんですか?
大城先生
体力低下や痛みなどが原因で、通院することができない患者さんに対して行われる医療サービスで、医師がその都度、患者さんの自宅や入居している施設などに出張して診察します。医療機関にもよりますが、24時間いつでも要請があれば対応します。
編集部
往診と似た言葉に訪問診療がありますが、往診と訪問診療の違いは?
大城先生
訪問診療とは患者さんの自宅を訪問して計画的な医療サービスを提供することであり、たとえば入院や通院が困難な人、ターミナルケアが必要な人、認知症患者や寝たきりの人などを対象に行われる定期的なサービスです。1〜2週間に1回の割合で定期的・計画的に患者さんを訪問し、診療したり、治療をしたり、薬を処方したりします。
編集部
すると、訪問診療は計画に沿った診療であり、一方往診はそうではない、ということでしょうか?
大城先生
はい、訪問診療は計画的であるのに比べ、往診は臨時的という違いがあります。そのほか、特に緊急度が高い往診については「緊急往診」と呼ぶこともあります。
編集部
日頃、どんな事態に対して往診を依頼されることが多いのですか?
大城先生
たとえば、「熱が出た」「食欲がない」などの内科的な要因から、「ベッドから落ちて動けない」など、整形外科の領域までさまざまです。
119番と往診はどちらを利用したら良い?
編集部
急に体調が悪くなったとき、119番と往診はどちらを利用したら良いのでしょうか?
大城先生
まず、診察をお願いしたい医療機関を受診したことがあるかによっても変わってきます。受診歴がある場合には往診を受け付けてくれるかもしれませんが、基本的にまったくの初めてという人は、往診を断られることがほとんどです。
編集部
それはなぜですか?
大城先生
これまでどんな病気をしたことがあるか、それに対してどのような治療を受けたか、どのような持病があり、どのような薬を服用しているのかなどの情報を把握することができないからです。そのため正しい治療を行うのが難しいこともあります。
編集部
そうなると緊急の事態には、119番の方が良いのでしょうか?
大城先生
かかりつけ医が往診をしてくれるなら、そのサービスを利用しても良いと思います。しかし、まったくの初診で往診や緊急往診をお願いする場合は、救急車の方が良いと思います。
救急車を呼ぶ時の注意点など
編集部
救急車にも消防救急(119番通報)と民間救急がありますが、どのような違いがあるのですか?
大城先生
消防救急(119番通報)は緊急性が高い患者さんを病院へ搬送するための公的救急機関のこと。サイレンを鳴らして緊急走行することができるので、いち早く病院に到着することができます。一方、民間救急は「緊急度は低いけれど、搬送を頼みたい」という場合に利用するサービス。たとえば「出張先で緊急入院したが、別の病院に転院したい」という時などに用いられます。これは民間サービスなので有料になります。
編集部
救急車を呼ぶ時の注意点を教えてください。
大城先生
急な病気や怪我をしたときなどに、救急車を呼んでいいのか迷う人もいるかもしれません。そのようなときには各自治体の救急相談窓口や救急受診アプリを活用するのがおすすめです。特にアプリは病気や怪我の緊急度を素早く判定してくれるサービスで、緊急度が高いと判断された場合にはアプリから119番通報することができるので便利です。
編集部
なるほど、判断に迷うときはそのようにすれば良いのですね。
大城先生
近年、救急車の出動件数や搬送人員数は増加しており、救急車が現場に到着するまでの時間も長くなっています。救急車は限られた医療資源であり、緊急性の高い人ができるだけ早く病院へ到着できるよう、救急車を呼ぶ前には緊急度を的確に判断する必要があります。そのため普段から訪問診療を受けたり、かかりつけ医が緊急往診を行っていたりする場合には、医療機関のサービスを上手に活用することも大切です。
編集部
医療が逼迫している、という話もよく聞かれます。
大城先生
コロナ禍ほどではありませんが、現在も救急車による救急搬送はパンクしている状態で、受け入れ先の病院も患者さんで溢れていることが少なくありません。状態をしっかり見極め、かかりつけ医の先生に対応してもらえるなら、できるだけそちらを利用するようにしましょう。それがひいては地域の医療システムを守ることにもつながっていきます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大城先生
往診や救急車をお願いした方が良いのか、それとも様子を見た方が良いのかについては判断に迷うこともあると思います。たとえば脳梗塞の場合、初期には強い痛みなどの症状がないことも多いので、様子を見てしまう人が少なくありません。しかし、そのまま放置すると命のリスクになることもありますから、気になることがあれば、まずはかかりつけ医の医師に電話で相談してみると良いでしょう。それから、普段から訪問診療を受けている人の場合、常日頃から主治医含めてACP(アドバンス・ケア・プランニング)を考えておくことが大事です。ACPとはもしものときに備え、将来の医療及びケアについて、患者さんを主体にして対処を考えておく、ということ。そうしたことが最期まで自分らしく生きるために重要ですし、また、日本の医療体制を守ることにも有効です。普段からご家族でACPについて話し合う機会を持ってみてはどうでしょうか。
編集部まとめ
突然、体調を崩したときなど、救急車や往診をお願いした方が良いか、迷うこともあります。過度に不安を感じてちょっとしたことでも救急車を呼んだり、反対に症状を放置して自己判断で経過観察をしたりするのではなく、正しく対処するため、いざというときにはまずかかりつけ医に相談しましょう。
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