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急病のスペシャリスト「救急科専門医」の真の役割とは

公開日:2022/04/09  更新日:2022/04/08

テレビドラマの影響か、「コードブルー」という単語が周知されてきた救急医療。しかし、現場の声を聞くと、必ずしも容体が急変した患者さんだけを診ているわけではなさそうです。そこで、救急科専門医でもある「神田駅前クリニック内科」の遠藤先生に、具体的なエピソードも交えつつ、詳しいお話を伺ってみることにしました。

遠藤 広史医師

監修医師
遠藤 広史(神田駅前クリニック内科 院長)

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浜松医科大学医学部医学科卒業。日本医科大学救急医学教室入局を機に各医療機関へ出向、AGAクリニックの勤務歴ももつ。2021年、東京都千代田区に「神田駅前クリニック内科」を開院。主に、内科、不眠症、AGAの診療を扱っている。日本救急医学会専門医、日本集中治療医学会専門医、プライマリ・ケア連合学会指導医。

救急科専門医とは

救急科専門医とは

編集部編集部

遠藤先生は救急科の専門医なのですよね?

遠藤 広史医師遠藤先生

はい。救命救急医が一般的な言い方ですが、日本救急医学会は「救急科専門医」と名付けています。なお、同学会の認定資格ですので、国家試験は必要としません。5年間以上の専門研修を受け、資格審査ならびに試験に合格して、学会等によって認定されます。

編集部編集部

どのような実務に就いているのでしょうか?

遠藤 広史医師遠藤先生

わかりやすいのは「災害医療」でしょうか。病院へ搬送する前に、現場へ赴いて応急措置などをおこないます。また、大規模災害では、患者さんの緊急度合いを色で分けて可視化する「トリアージ」のような“現場の医療機関への振り分け”も担うことがあります。応急措置なのかトリアージなのかは、現場の自治体の判断によります。

編集部編集部

基本的には現場へ“派遣”されるのでしょうか?

遠藤 広史医師遠藤先生

いいえ。急性期疾患の院内対応もあります。また、緊急搬送やご自身で来院された場合でも緊急性・重篤性が高い場合は、救急科専門医の出番です。どんなケガや病気が持ちこまれるかはわかりませんから、オールラウンドな医療知識を求められます。いわゆる“ヤマ”を越えたら、必要により、その道の専門の医師へバトンタッチしていきます。

編集部編集部

救急科専門医は、日本に何人くらいいるのでしょうか?

遠藤 広史医師遠藤先生

日本救急医学会によると、2018年の段階でやっと5000人を越えました。以後、毎年約300人の救急科専門医が生まれています。一般的に、救急科専門医は大きな病院に在籍しています。例外として、離島などに赴かれ、お一人で取り組まれている先生もいらっしゃいます。

救急科専門医の役割

救急科専門医の役割

編集部編集部

我々市民にとって、救急科専門医がいることのメリットはなんでしょうか?

遠藤 広史医師遠藤先生

やはり、多くの命が救われるということだと思います。また、どうしてこのような治療が必要なのか、ご家族などに説明して差しあげられることも含まれます。やはり、ご家族からしたら「何をされているのかわからない不安」がありますよね。延命治療から終末期ケアに切り替えた方が好ましい場合などは、とくに納得のいく説明を心かげています。

編集部編集部

救急科専門医とはいえ、必ずしも「緊急」に限らないということですか?

遠藤 広史医師遠藤先生

緊急に限りません。むしろ、最前線で多くの症例を診てきただけに、命や重篤化の「境目」に長けている自負があります。車の運転に例えるとしたら、「この状態でハンドルを切るとスリップしてしまう境目」でしょうか。ですから、平時においてもスリップをしないような治療の提供が可能です。あるいは、同様の目線で医療チーム全体を見届けるような役割も担います。

編集部編集部

他方で緊急の場合、救急車が救急科専門医の在籍する病院へ搬送してくれるとは限りませんよね?

遠藤 広史医師遠藤先生

ドクターカーやドクターヘリの出動を除いて、救急車が救急科専門医の在籍“しない”病院へ搬送する可能性はあるでしょう。その辺は、現場からの距離や救急科専門医の数によっても変わってきます。ただし、救急科専門医がいなくても救急医療はできるので、難しい観点ですね。

編集部編集部

何か、具体的なエピソードはありますか?

遠藤 広史医師遠藤先生

では、昨今の感染症で知られるようになった「エクモ(人工肺とポンプを用いた体外循環回路による治療)」の話をしますね。診察当時、エクモの存在は、まだあまり知られていませんでした。しかし、緊急搬送され、救命が難しいと考えられていた患者さんに長期のエクモを用いたところ、見事に回復されました。後日、その患者さんからお仕事の様子をうかがったときは感無量でしたね。

編集部編集部

緊急時ではないときのエピソードもあればお聞きしたいです。

遠藤 広史医師遠藤先生

わかりました。加齢により誤嚥性肺炎を起こしたご高齢の患者さんがいらっしゃったのですが、ご家族のご希望は「再発しないように治してほしい」でした。しかし、加齢要因の場合、なかなか根本解決がかないません。私としては、人工呼吸器による入院が欠かせないと判断しました。そこで、ご家族に時間をかけて入院加療の必要性を説明し、最終的には納得いただいたという次第です。ここでも、過去の「境目」を見てきた経験が役立ったと実感しています。

救急科専門医が生まれた背景

救急科専門医が生まれた背景

編集部編集部

救急科専門医の制度が生まれた背景について教えてください。

遠藤 広史医師遠藤先生

オールラウンドに対応できる医師不足が背景にあります。かつては、「私の専門じゃないのでほかの医院へ」的なことが頻回に起きていたようです。医療には専門家が必要な一方、すぐに対応できる幅広い「受け皿」も必須なのです。

編集部編集部

何か「きっかけ」みたいな転機はあったのでしょうか?

遠藤 広史医師遠藤先生

昭和時代の交通事故の増加が一因になったのでしょう。当時、救急の外傷のうち約半数は交通事故でした。そして、適切な救急医療を受けられずにお亡くなりになった人が散見されたのです。そうしたなかで起きたのが、当時の警察庁長官の“狙撃事件”でした。長官ご自身が緊急医療の必要性を実感されたこともあり、その後の流れが大きく変わっていった一面もあるのだと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

遠藤 広史医師遠藤先生

救急科専門医は“平時にもお役に立てる”ということを、ぜひ知っておいていただきたいですね。ドラマの影響もあって急性期の急患ばかり診ているようなイメージがあるものの、それはあくまでも一面にすぎません。私たちはどの医師よりも「生死の境目」を体験しているので、それが通常の医療にも役立てられれば本望です。かかりつけ医として、なんでも心配なことがあったら、お気軽にご相談ください。

編集部まとめ

救急のスペシャリストであるということは、「素早い判断が求められる場面のスペシャリスト」でもあるということです。その経験が、平時の医療でも活かされている点に、驚きを覚えました。経験してきた場数の多さを背景に、厳しい状況でも適切な治療がおこなえる存在、それが救急科専門医なのだと感じました。むしろ、かかりつけ医として頼りたいくらいですね。

医院情報

神田駅前クリニック内科

神田駅前クリニック内科
所在地 〒101-0047 東京都千代田区内神田3-13-2 松尾ビル5階
アクセス JR「神田駅」 徒歩1分
診療科目 内科、睡眠障害、AGA