「往診」を受けるための条件や費用相場、訪問診療との違いを医師が解説
高齢化が進む現代では、在宅医療のニーズが非常に高まっています。そんな在宅医療で悩むのが「往診」。往診の場合には費用が特別に加算されることもあり、往診をお願いするか、様子を見るかの判断で悩む人も多いと思います。はたして、往診をお願いする判断基準はどのように考えればいいのでしょうか。「かわいクリニック」の河井先生に伺いました。
監修医師:
河井 誠(かわいクリニック)
在宅医療の往診とは?
編集部
まず、「往診」について教えてください。
河井先生
そもそも、患者さんが受けられる医療には「外来医療」「入院医療」「在宅医療」の3種類があります。外来医療は病院などに通院して治療を受けることで、入院医療は病院などに入院して治療をおこなうことです。そして、在宅医療は患者さんの自宅などで治療を受けることです。この在宅医療のうち、医師が患者さんの自宅に赴いて医療を提供することを「定期訪問」や「往診」と言います。
編集部
定期訪問と往診は、どのように違うのでしょうか?
河井先生
定期訪問は通院が困難な患者さんに対して、医師があらかじめ治療の計画を立てて定期的に患者さんのご自宅を訪問して診療をおこないます。他方で、往診は患者さんからの訴えなどにより、医師が「緊急性がある」と判断した場合、予定外に患者さんのご自宅に赴いて診療をおこないます。つまり、スケジュール通りにおこなうのが定期訪問、予定外(臨時)におこなうのが往診となります。
編集部
「急に体調が悪化したので来てほしい」とお願いする場合は、往診になるのですね。
河井先生
たしかにそうなのですが、往診は救急車のように、すぐに医師が訪問するものではない点には気をつけていただきたいです。往診依頼のご連絡をいただいてから医師が出向くまで、だいたい2~3時間かかります。もし、緊急性が高いと判断した場合には、往診ではなく救急車を呼ぶことをおすすめすることもあります。
往診で受けられる医療サービス・ケア内容は?
編集部
訪問診療を受けていないと、往診をお願いすることはできないのですか?
河井先生
そうですね。基本的に往診は普段、定期訪問をおこなっている患者さんが対象となります。もし定期訪問をおこなっていない場合は臨時往診の対象外になってしまいます。
編集部
往診をお願いしたい場合、どうすればいいのでしょうか?
河井先生
例えば当院では、定期訪問をおこなっている患者さんが急に具合が悪くなった場合など、ご連絡をいただければ24時間体制で往診をしています。また、必要に応じて近隣の基幹病院や在宅療養後方支援病院などとも連携し、入院などの手配をすることも可能です。往診の内容は訪問診療を受けている医療機関によって異なるので、確認しておきましょう。
編集部
往診では、どのような医療サービスを受けることができるのですか?
河井先生
基本的に、訪問診療や往診はクリニックでおこなう診察や検査、看護などと同等のサービスを受けることができます。そのため、病状が急に悪化した場合など、お困りのことがあればいつでもご連絡ください。
編集部
往診でも担当の先生に診てもらうことができるのですか?
河井先生
医療機関によって異なります。例えば、医師がシフト制になっている医療機関では、夜間や休日はほかの医師が担当することもあります。また、急変時の対応は訪問看護ステーションなどと連携して実施している医療機関もあります。
家族が知っておきたい往診の費用相場と依頼するか様子を見るかの判断基準
編集部
往診の場合、費用はどれくらい加算されるのですか?
河井先生
往診1回あたり、1割負担で1000円~4000円です。ただし、時間帯によって異なり、日中の場合は約1000円、夜間や深夜だと2000~4000円が目安となります。また、初診月、疾患、処置、加算、必要に応じた検査(採血、採尿)などの内容により、金額が異なることもあります。
編集部
「往診を依頼するべきか、様子をみるべきか」の判断基準はありますか?
河井先生
症状によります。例えば発熱の場合、37.5度以下で頭痛や腹痛、嘔吐などの症状がみられなければ、様子を見てもいいでしょう。ただし、38度を超えていたり、37.5度以下でも頭痛や腹痛などほかの症状があったり、発熱が数日続いたり、つらい状態が続いたりするようなら、往診を検討してもいいでしょう。また、意識がなく、声をかけても反応しないという場合には、すぐに救急車の手配をお願いすることもあります。
編集部
ほかにも「往診を依頼するか、様子を見るか」の判断基準の目安となるものはありますか?
河井先生
高齢者の場合、食欲のない状態が1~2日続いたら、往診を検討してもいいと思います。
編集部
往診をお願いするべきか迷ったら、電話で相談することもできるのですか?
河井先生
はい、可能です。症状に応じて様子を見てもいいか、往診した方がいいか、あるいは救急車を呼ぶべきか判断します。迷ったらいつでもご連絡ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
河井先生
いざというときに相談できる窓口が増えることは、訪問診療を受けるメリットの1つです。訪問診療をおこなっている医療機関は、たいてい24時間、相談窓口を用意しているので、判断に迷ったらいつでもご相談ください。ただし、緊急時、すぐに医師が来てくれるかなど、フットワークの軽さは医療機関によって異なります。これから在宅医療を受けようとして、どの医療機関にお願いしようか検討している段階では、フットワークの軽さまではわからないと思います。しかし、医療機関を探すうえで、フットワークの軽さは非常に重要な要素です。地域のケアマネージャーや訪問看護師などの評価が参考になると思いますので、まずは相談してみるといいでしょう。
編集部まとめ
いつも通っている医療機関に、24時間いつでも相談できるというのは大きな安心感につながります。頼れる医師を探すためにも、医療機関選びは慎重におこないたいですね。
医院情報
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