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まぶたが視力に影響していることをご存じですか? 「眼瞼下垂」の原因・対処法を眼科医が徹底解説

 公開日:2024/10/16

眼瞼下垂」とは、まぶたが下がって視界が遮られる疾患で、日常生活に様々な影響を及ぼします。眼瞼下垂による様々な影響に対して、どのような対策法があるのでしょうか。今回は、眼瞼下垂がどのように視力に影響を与えるか、そしてその対策について「元町マリン眼科」の蓮見先生に解説していただきました。

蓮見 由紀子

監修医師
蓮見 由紀子(元町マリン眼科)

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信州大学医学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修了。国内の眼科勤務や米国国立衛生研究所(NIH)研究員を経た2020年、神奈川県横浜市に「元町マリン眼科」を開院。生まれ育った地元で地域医療に尽くしている。医学博士。日本眼科学会認定専門医。横浜市立大学附属病院非常勤講師。日本眼炎症学会、日本眼形成再建外科学会、美容皮膚科学会の各会員。

眼瞼下垂…見えにくいだけじゃないってホント?

眼瞼下垂…見えにくいだけじゃないってホント?

編集部編集部

まず、眼瞼下垂について教えてください。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

眼瞼下垂は、主に上のまぶたが垂れ下がって視界が狭まり、見えにくくなる疾患で、上まぶたを引き上げる役割を持つ上眼瞼挙筋やミュラー筋が十分に機能しなくなることで起こります。これらの筋肉の働きが低下すると、まぶたが瞳孔にかかり、視界が遮られてしまうのです。また、下のまぶたに眼瞼下垂が起こることもあり、たるみとなったり眼球の方へ垂れ込んでしまったりする症状が出ます。

編集部編集部

眼瞼下垂になると、どのような症状が出るのですか?

蓮見 由紀子先生蓮見先生

最もわかりやすい症状は、上の方の視野が狭くなることです。ほかにも、無理にまぶたを持ち上げようとしておでこの筋肉を使ってしまい、おでこにシワができてしまったり、上方の見えにくさを解消しようと常に上向きの状態を保つことで、首がこったり頭が痛くなったりすることもあります。また、まぶたがたるむことで皮膚が眼球の方に垂れ込んだ場合、まつげが眼球に当たってしまう「逆さまつげ」が起こり得ます。

編集部編集部

色々な症状が出るのですね。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

眼瞼下垂が原因で、おでこのシワが増えたり、頭痛や肩こりがひどくなったりしても、まぶたの下垂が原因だとは気づかれないままの場合も少なくありません。さらに、視野だけでなく視力に影響を及ぼすこともあります。

眼瞼下垂が視力に影響する?

眼瞼下垂が視力に影響する?

編集部編集部

眼瞼下垂が視力に影響することがあるのですか?

蓮見 由紀子先生蓮見先生

眼瞼下垂そのものが視力を直接低下させるわけではありませんが、視界が遮られることで間接的に視力に影響を与える可能性があります。例えば、まぶたが下がることで視野が狭くなり、物を見るために無理な姿勢をとったり、額の筋肉を過剰に使ったりすることで「眼精疲労」を生じることがあります。眼精疲労が続くと、視力が悪くなったように感じることがあります。

編集部編集部

なるほど。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

また、長期間にわたり眼瞼下垂を放置すると、例えば先天性の眼瞼下垂の場合には弱視のリスクが高まることもあります。後天性眼瞼下垂の場合でも、視界が常に遮られていることで、目の使い方が変わり、結果として視力が低下するように感じることがあるかもしれません。加えて、左右どちらかだけが眼瞼下垂となった場合などは、もう片方の目だけに負担がかかり、視力に影響を及ぼすことがあります。

編集部編集部

先天性のものと後天性のものがあるのですね。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

はい。先天性と後天性のタイプがあります。先天性の眼瞼下垂は、生まれつきまぶたの筋肉が十分に発達していないか、目の構造自体に問題がある場合に起こります。一方、後天性の眼瞼下垂は、年齢やほかの要因によって引き起こされるもので、いくつかの原因が考えられます。

編集部編集部

後天性眼瞼下垂には、どのような原因があるのですか?

蓮見 由紀子先生蓮見先生

例えば「腱膜性眼瞼下垂」は、まぶたを引き上げる筋肉である上眼瞼挙筋がまぶたから外れることで生じます。また、加齢による皮膚のたるみがまぶたにのしかかる「眼瞼皮膚弛緩症」もあります。これらが同時に発生することもあります。いずれの場合であっても、先ほどの頭痛やこり、おでこのシワや視力低下などの影響は起こり得ます。

眼瞼下垂の視力への影響と対処法

眼瞼下垂の視力への影響と対処法

編集部編集部

眼瞼下垂による影響を最小限にするためにはどうしたら良いですか?

蓮見 由紀子先生蓮見先生

やはり、早期に医療機関を受診し、適切な対応について相談することをおすすめします。眼瞼下垂の治療としては、手術療法が一般的です。

編集部編集部

手術について、もう少し詳しく教えてください。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

眼瞼皮膚弛緩症には、まぶたの皮膚を切除して縫い縮める「眉毛下皮膚切除法(眉下切開)」が適していますし、腱膜性眼瞼下垂には、上眼瞼挙筋を周りの組織から剥がし、まぶたの中の組織に縫いつける「挙筋前転法」が向いています。

編集部編集部

手術が必要なのですね。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

手術と聞くと驚く人もいるかもしれませんが、日帰りでできる比較的負担の少ない手術です。また、最近は軽度の眼瞼下垂に対して、まぶたの裏側からミュラー筋を縫い縮める「経結膜ミュラー筋タッキング法」という手術をおこなうこともあります。経結膜ミュラー筋タッキング法は、メスで皮膚を切開することなくできる手術です。

編集部編集部

手術による視力への影響はありますか?

蓮見 由紀子先生蓮見先生

いくつかあります。例えば、見えにくいところを見るときに目を細めることで、見えやすくなった経験があると思います。これを「ピンホール効果」というのですが、眼瞼下垂の人は、まぶたの垂れ下がりがピンホール効果となり、本来の視力より見えやすくなっている場合が多いのです。こうした人は、手術をするとこの効果が薄れて「見えにくくなった」と感じることがあります。

編集部編集部

逆に、「見えにくくなった」と感じる場合があるのですね。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

はい。ほかにも、眼球の上にまぶたが乗っていることで、角膜のカーブが変わってしまい、乱視が変化するケースがあります。まぶたが眼球に与える圧を「眼瞼圧」というのですが、この眼瞼圧が手術の前後で変わることがあるのです。眼瞼圧は角膜のカーブに影響していますし、見え方と乱視は大きく関係しているので、手術の前後で見え方が変わり「これまでのメガネやコンタクトレンズだと見えにくさを感じるようになった」とおっしゃる人もいらっしゃいます。

編集部編集部

眼瞼圧というのがあるのですね。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

手術によって眼瞼の圧が軽くなる場合もありますが、手術でまぶたに傷ができた場合、傷が治る過程で硬さが生じ、新たに圧が加わることで見え方が変わることもあります。ただし、眼瞼圧に関しては、半年くらいで傷が治癒して組織が柔らかくなると、視力に及ぼす影響は少なくなります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

蓮見 由紀子先生蓮見先生

眼瞼下垂は、視野が狭くなるだけでなく、様々な不便や不調を引き起こします。今は日帰り手術で治療できる時代ですが、手術後、視力や見え方が変化する可能性もあります。こうした注意点を理解したうえで、治療を選択していただけたらと思います。

編集部まとめ

眼瞼下垂の治療や視力への影響について解説していただきました。眼瞼下垂は、まぶたのたるみによって視野が狭くなり、日常生活に様々な支障をきたすことがあります。手術による治療が可能ですが、見え方の変化など、いくつか注意点があります。そのため、信頼できる医師の説明をきちんと聞いたうえで、納得して治療を洗濯するようにしましょう。

医院情報

元町マリン眼科

元町マリン眼科
所在地 〒231-0861 神奈川県横浜市中区元町4-166 元町ユニオン3階
アクセス JR「石川町駅」 徒歩5分
みなとみらい線「元町・中華街駅」 徒歩6分
診療科目 眼科、美容皮膚科

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