「ボトックス注射」をやらない方がいい人の特徴はご存じですか? 持続期間や注意点も医師が解説!
気になる表情ジワなどを改善するのに用いられる「ボトックス注射」は、手軽に受けられる治療として人気を集めています。しかし一方で、安全性や注意点も気になるところです。「ボトックス注射を受けられる人は? 受けられない人はいるの?」「どのタイミングで受けたらいい?」など、ボトックス注射に関する疑問を「メディカルプラスクリニック新宿」の林先生に問いかけました。
監修医師:
林 和弘(メディカルプラスクリニック新宿)
ボトックス注射とは?
編集部
ボトックス注射とは?
林先生
ボツリヌス毒素製剤を注射することで、筋肉の動きを一時的に止める諸症状を改善する治療法のことを、一般的にボトックス注射と言います。ボツリヌス毒素が神経終末の神経筋接合部に作用して、一時的に神経筋伝達が遮断されることで、筋肉の動きが一時的にストップします。
編集部
具体的に、どのような治療に用いられるのですか?
林先生
1996年に「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」が保険適用となり、その後に「片側性顔面けいれん」「小児麻痺の尖足」などにも用いられ、2012年には「多汗症」も適用になりました。その一方で、美容領域では「額の横ジワ」「眉間の縦ジワ」「目尻の笑いジワ」「あごの梅干ジワ」などの、いわゆる表情ジワの改善が期待できます。
編集部
どのような薬剤を使用するのですか?
林先生
ボツリヌス菌とは、食中毒(例:辛子レンコン)の原因ともなる菌で、ボツリヌス菌によって産生される7種類の神経毒血清型のうちA型を単離精製したものです。7種のうち、A型ボツリヌス毒素が最も安定して強力であることから、これが用いられています。
編集部
安全なのでしょうか?
林先生
医療や美容目的で使用されるボツリヌス毒素製剤は、厳格な品質管理と安全基準のもとで製造されており、注入量、場所、単位など適切に使用される限り、安全性が高いとされています。ただ、注意したいのが「いわゆるBOTOXという名称は、アラガン社のA型ボツリヌス毒素製剤の商標である」という点です。これはアメリカ食品医薬品局(FDA)によって認可された製剤ですが、実際にはこれ以外にも様々な製剤があります。
編集部
シワ取り以外にも、ボトックス注射が有効なことはあるのですか?
林先生
笑ったときに歯ぐきが見えてしまうガミースマイルの改善や、口角アップの効果も期待できます。また、ボツリヌス毒素製剤には、比較的厚みがある筋肉の張り出し感を落とす効果があることから、エラ部分に注射してフェイスラインを小顔化したり、ふくらはぎに注入してひざ下を細く見せたりする治療もあります。さらに一例として、当院ではボトックス注射で目を大きく見せる施術が人気です。
ボトックス注射の禁忌・注意点
編集部
ボトックス注射を受けるにあたって、注意事項はありますか?
林先生
妊婦、授乳婦には禁忌とされています。特に妊婦の場合、海外で胎児への影響が報告されていることから、治療後3カ月は避妊をするよう推奨されています。また、添加物の「ヒト血清アルブミン」というタンパク質のアレルギーがある人も受けることができません。
編集部
治療を受けられない人もいるのですね。
林先生
はい。そのほか、重症筋無力症など神経筋結合部の疾患がある人、筋弛緩剤を内服中の人も受けることができません。筋弛緩剤を内服している人がボトックス注射をおこなうと、嚥下障害や呼吸困難のリスクがあります。
編集部
そのほか、注意すべきことはありますか? 禁止事項があれば教えてください。
林先生
注入の際、内出血を起こすことがあるので、大きなイベントの直前(7〜10日程)は施術を控えることが推奨されています。基本的に、注入後に大きな日常生活上の制限はありませんが、内出血が見られる際には、スポーツ、サウナ、飲酒など身体を過度に温めたり、血圧が上がったりするようなことは避けましょう。
編集部
そのほか、打つことができない人はいますか?
林先生
禁忌ではありませんが、眼瞼下垂の症状の強い人は、おでこ(前額部)や眉間のシワ取り目的での使用は注意が必要です。目を開くことがますます困難になったり、眉毛の外側の挙上が目立つようになったりする可能性があります。
ボトックス注射はいつ受けるべき? ベストタイミングは?
編集部
ボトックス注射を受けるのに適したタイミングはあるのでしょうか?
林先生
施術する部位にもよりますが、ボトックスの効果が表れるのは注射をしてから2〜3日後より1週間後とされています。そのため、大事なイベントがある場合は、内出血のリスクも加味して、日にちを逆算し施術を受けるのがいいと思います。
編集部
部位によっても効果の持続期間は異なるのですか?
林先生
部位による効果持続時間はあまり差がないと感じており、一般的に効果は3〜6カ月持続するとされています。そのため、効果が弱まる4〜5カ月間隔での治療がおすすめです。
編集部
連続して注射しても問題ないのですか?
林先生
繰り返し注射することによる問題は経験上ほとんどありません。ただし、少なくとも効果が弱くなってからおこなうことをおすすめします。注射を繰り返すことで、ボトックスに対する抗体ができてしまい、効果が無くなったり弱くなったりする報告もありますが、その割合は1〜3%と決して高くはありません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
林先生
ボトックス注射は美容医療の分野でも、ポピュラーな美容施術として確立されており、過度に不安になる必要はありません。しかし気をつけたいのは、ヒアルロン酸注入と違い、施術後の修正はほぼ不可能ということです。そのため、満足度の高い治療を受けるには、医師の技術と経験を考慮して医療機関を選択することが必要です。どこで治療を受けても同じ効果が得られるというわけではないため、決して価格だけで安易に選ばず、信頼できる医療機関を選ぶようにしましょう。
編集部まとめ
美容の領域で、すでに定番の治療とされているボトックス治療。しかし、治療を受ける上では禁忌の事項や注意点もたくさんあります。治療を受ける前にはその辺のことも包み隠さず教えてくれて、リスクなどについても丁寧に説明してくれる医師を選ぶことが大切です。
医院情報
所在地 | 〒151-0053 東京都渋⾕区代々⽊3-22-7 新宿文化クイントビル2F |
アクセス | JR「新宿駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 美容皮膚科・美容外科・皮膚科・形成外科 |