ボトックス注射の効果を専門医が解説 「笑顔の目元が不自然」と聞くけどホントのところは?
筋肉の動きを緩和させることができるボトックス。眉間などに力が入りにくくなるから、シワになりにくいという仕組みなのでしょう。その受け止め方次第ですが、、「筋肉の動きが、想像していたものとは違う」と感じられるケースもありそうです。実際のところどうなのか、ボトックス注射の現場の様子を、「オジスキンクリニック」の吉原先生に聞きました。
監修医師:
吉原 糸美(オジスキンクリニック 院長)
東京女子医科大学卒業。東京警察病院にて研修後、昭和大学形成外科へ入局。主に美容医療の診療経験を積んだ後の2020年、埼玉県さいたま市に「オジスキンクリニック」開院。家族にも自信をもって提供できる治療に専心している。日本形成外科学会、日本美容外科学会、日本美容皮膚科学会、日本頭蓋学顔面外科学会の各会員。
【観点-1】投与量
編集部
ボトックス注射は、簡単に言うと「筋肉をまひ」させるのですよね?
吉原先生
「まひ」ではなく、「過剰に動いている筋肉の動きを和らげる」が適当でしょうか。ボトックスは美容に限らず、さまざまな医療現場で使われています。その歴史も長いですし、国が認めた「安全な方法」といえるでしょう。
編集部
そこで本題です。眉間や目じりなどの目元の筋肉のコントロールが思うようにいかなくなることはあるのでしょうか?
吉原先生
筋肉の動きが和らぐことで、一時的に「動かしにくい」といった違和感を覚えることはあるかもしれません。ですが、それはシワが寄りにくくなっている証拠でもあります。目元の表情に不自然さがなければ、それはボトックスの効果といえます。なお、ボトックスの効き目は一般に4~8カ月です。万が一「笑顔が不自然になった」としても、一時的なものです。しばらくすれば効き目は弱まり、やがて元に戻ります。
編集部
ボトックスに限らず、薬の効果には個人差がありますよね?
吉原先生
はい。本来なら、ボトックスの「投与量」を個人ごとに調整すべきです。人によって筋肉量が違いますからね。ところが、クリニックによってはマニュアルがあり、すでに投与量が決められているところもあります。筋肉量の少ない方に対して「効きすぎる」こともありますし、逆も起こりえます。そこで当院では、患者さんごとに投与量を検討しています。加えて「リタッチ」という制度も設けています。
編集部
「リタッチ」とはどういう制度なのですか?
吉原先生
ボトックスの注射から2~3週後におこなう経過観察です。「このシワが気になる」などという患者さんの細かなご要望を伺い、コストはいただかずに対応しています。患者さん側はもちろんですが、医師側にもメリットがあります。その患者さんに対して適切なボトックスの投与量が、経過観察から推測できるからです。2回目以降のボトックス注射では、より高い満足度をご提供できるでしょう。
【観点-2】目的
編集部
つまり、医療機関側が適切にボトックスを扱えていれば、「目元が不自然な笑顔」は起こらないということですか?
吉原先生
そもそも、シワを気にせずに「自然に笑顔になれる注射」であるべきです。ただし、患者さん一人ひとりに応じたボトックス量の見極めをせず、適切な筋肉以外に打ってしまうと「不自然」にもなりえます。
編集部
なるほど。そういう原因もあるのですね。
吉原先生
また、要因として同じ程度のボトックス治療でも「効いた」と感じる方もいれば、「効きすぎた、効いていない」と受けとる方もいらっしゃいます。ただ、こうした患者さんと医師の印象差は、事前に理想とする仕上がりを双方ですり合わせることで解消できるかと思います。
編集部
だとすると、どうやって医院選びをすればいいでしょうか?
吉原先生
まずは、患者さんご自身で「目的」をはっきりさせることが大切です。表情を作っても目元に全くシワがない状態にしたいのか、シワが刻まれない程度に動きを残したいのか、というところです。患者さんの理想とする状態と医師の考える効果を事前にすり合わせずにボトックス注射をすると、結果、不満足になりかねません。医院選びは、医師の経験などはもちろんですが、理想像をすり合わせることができ、それに応じてオーダーメイドに治療してくれるクリニックを選ぶことをおすすめします。
【観点-3】コミュニケーション
編集部
結局は、患者側も医師側も「漠然とボトックス注射に臨まない」ということが大事になりそうですね。
吉原先生
やはり、双方で目的や理想をすりあわせておきたいですよね。そのうえで、患者さん側としてはボトックスでできること・できないこと、メリット・デメリットをしっかり聞き、納得したうえで治療を受けることが大切だと思います。そして、医師は事前に患者さんの筋肉の動かし方のくせや筋肉量を確認すべきでしょう。それを踏まえたうえで、ボトックスの打つ量や深さを調節し、さらに「リタッチ」で確認すれば、結果不満足は起きにくいはずです。
編集部
そもそもの目的はシワ予防であって、「きれいな笑顔」ではないとも言えそうですが?
吉原先生
いいえ。「きれいな笑顔」のためにシワ取りをご希望される場合も多々あるので、笑顔とシワ取り治療はとても密接な関係です。患者さんの中には「このシワは笑ったときに少し残したい」とおっしゃる方もいますが、そこまで分析している方はわずかです。ボトックスでどうなりたいのかをはっきりさせ、ボタンの掛け違いに至らないようなクリニックを選びましょう。
編集部
仮に、初回の不満足があったら、転院すべきでしょうか。そのことを説明して、初回の医院に調節してもらうべきでしょうか?
吉原先生
在籍している医師の数によっては、必ずしも前回と同じ医師が担当するとは限りません。医療カルテを付けているものの、やはり、同じドクターに診てもらえるとベストですよね。そのうえで、信頼できそうな担当医なら、継続通院したほうが“効果測定”は積み上がっていきます。仮に転院するとしたら、カルテ情報を引き継いでもらえるようにしましょう。患者さんから遠慮なく「セカンドオピニオンを受けたい」と申し出てください。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
吉原先生
シワが目立つから前髪を工夫している。あるいは、笑顔が怖くていつも真顔で写真を撮っている。そのせいで、「怖そうな人」と誤解される。こうした“あるある”は、ボトックス注射で回避できます。心から笑える人生を満喫してみませんか? わからないことがあったら、いつでもご相談ください。
編集部まとめ
どうやら、ボトックス注射の目的から考えていく必要がありそうです。シワ予防なのか、今までと同じような笑顔でありつつシワだけを減らしたいのか。この観点が患者と医師とで異なっていると、結果不満足に至ります。自分なりの目的が見えてきたら、今度は、それをかなえてくれる医療機関探しです。一例ですが「リタッチ」という“振り返る機会”があると、両者の視差を発見しやすいかもしれません。
医院情報
所在地 | 〒330-0062 埼玉県さいたま市浦和区仲町1-1-14 MEFULL浦和6・7F |
アクセス | JR「浦和」駅から徒歩1分 |
診療科目 | 美容皮膚科 |