じつは猛毒だった「ボトックス注射」がシワ取りで人気、安全なワケ

和泉先生

ボトックス治療とは、美容皮膚科の領域で行われる治療のひとつです。メスを使わず、ボトックスという薬剤を注射することで、顔のしわを解消することを目的とした治療です。

和泉先生

ボトックスとは、簡単にいえば、ボツリヌス菌から作られるタンパク質の一種です。美容皮膚科の領域で、しわの改善のために使われるボトックスの薬剤は、正式名称を「A型ボツリヌストキシン毒素」といいます。

和泉先生

そうです。そもそもボツリヌス菌とは、土壌や川、湖、海などの砂泥のなかに広くいる菌類で、現在知られている毒素のなかでも最強の1つとされています。土で汚れた手で調理したり、土がついた食材をよく洗わずに食べたりすると、ボツリヌス菌が食べものに混入してしまうことがあり、食中毒の原因にもなります。

和泉先生

問題はありません。確かに大量に摂取すると食中毒を起こす原因になりますが、美容皮膚科の治療で用いられるボトックスは極微量ですし、生理食塩水で人体に安全な濃度まで薄めているので、しっかり安全性が確認されています。

和泉先生

そもそもしわは、顔の表情筋が強く収縮することで作られます。なぜ筋肉が収縮するのかというと、神経の末端から放出されるアセチルコリンという伝達物質を、筋肉が受け取るからです。その信号を受け取ることによって、筋肉は収縮するのです。しかし、ボトックスを注射すると、このアセチルコリンの放出が阻害されます。そのため、表情筋の過緊張を改善し、しわを減らすことができるのです。

和泉先生

個人差はありますが、多くの場合、ボトックスは注射後、2～3日くらいで効果を実感できます。持続期間は、4～6か月です。

和泉先生

実際にボトックスを注射するのに必要な時間は、だいたい2〜3分になります。しわの部分に局所的に注射し、治療自体は15分程度で終了します。注射薬の中に麻酔薬が含まれており、非常に細かい針で注入するため、それほど痛みを心配する必要はありません。また当院では、麻酔のテープも使用しているため、「ほとんど痛みを感じなかった」という方が大半です。

和泉先生

当日からメイクをしていただくことも可能です。ただし、ボトックスの薬剤は熱に弱いという性質を持っているので、注射当日は、激しい運動をしたり、サウナに入ったりすることは控えましょう。できればシャワー程度に抑えておくことをお勧めします。また、当日は飲酒も控えましょう。

和泉先生

注射をした箇所が、少し黄色くなったり赤くなったり変色することがありますが、2〜3日で落ち着くのでご安心ください。腫れや青あざが消えない場合は、その部分をマッサージしたり、強くこすったりしないようにしましょう。また念のため、注射後3か月間は妊娠や授乳をしないように推奨されています。男性の場合も同様に、避妊をするようにお勧めしています。

和泉先生

注射後、非常に稀ですが、軽い倦怠感や脱力感を覚える方がいます。通常は数時間程度で改善しますが、長く続く場合は医師にご相談ください。また、患部に赤みや内出血が見られたり違和感を覚えたりする方もいます。これも数日程度で消えますが、続く場合は医師の指示を仰ぐようにしましょう。

和泉先生

たしかに、ボトックス注射は非常に安全性の高い治療ですが、その一方、治療を行う医師の技量に左右される、という特性もあります。実際、正しい位置に注射しなかったり、使用量を誤ったりすることによって期待した効果が得られず、以前に比べて表情筋が動かなくなってしまったり、表情がなくなってしまったり、といったトラブルも発生しています。また、なかには粗悪な薬剤も出回っています。信頼できる医師のもとで施術を受けるようにしましょう。

和泉先生

継続してしわを改善したい場合は、定期的にボトックス注射を行う必要があります。繰り返し行うことで、しわが薄くなり、目立ちにくくなるということも、データで証明されています。ただし、あまり頻繁に注射を打ちすぎると体に抗体ができてしまい、効きが悪くなってしまいますから、最低でも3か月以上は間隔を空けた方が良いでしょう。

和泉先生

ボトックス注射は多くの国で長く行われている治療で、安全性が高いことが証明されています。しかしその一方、医師の技量に左右される治療であるということも、忘れないで欲しいと思います。特に、表情筋を解剖学的によく理解していなければ、注射を打つポイントや適量などを見定めることは不可能です。必ず習熟した医者のもとで、施術を受けるようにしましょう。そのためにはまず、カウンセリングをしっかり受けること。いろいろ質問してみて、納得のいく回答を返してくれる医者を選びましょう。