「糖尿病」と上手に付き合うポイント・自己管理のコツを医師が解説!
糖尿病は基本的に完治できませんが、上手く付き合っていくことで元気に長生きすることができます。その上で大切なのは、コントロールと自己管理です。一体、どのようにすればいいのか、「レイクタウン内科大宮駅前院」の藤本先生に解説していただきました。
監修医師:
藤本 まどか(レイクタウン内科大宮駅前院)
糖尿病のコントロールとは何をコントロールするの?
編集部
「糖尿病の治療ではコントロールが大事」と聞いたことがあります。しかし、一体何をコントロールするのですか?
藤本先生
糖尿病治療におけるコントロールとは、適切な血糖値、血圧、脂質、体重の維持や禁煙など、総合的なものを意味しています。糖尿病にかかっている人が健康な人と変わらない寿命・QOL・人生を送ることを目指します。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
藤本先生
糖尿病のほとんどを占める2型糖尿病は、遺伝的要因(体質)や加齢変化などによって発症します。その一方で、「生活習慣病」と言われるように、血糖コントロールをおこなっていく上で、食生活や運動習慣などの生活習慣を整えていくことが鍵となります。
編集部
なぜ、血糖値のコントロールが重要なのですか?
藤本先生
糖尿病は、血糖を下げる「インスリン」というホルモンが十分に出なくなったり、働きが悪くなったりすることなどにより、慢性的に高血糖状態になる疾患です。慢性的な高血糖は、全身の血管にダメージを与え、網膜症や腎症などの様々な合併症を引き起こします。また、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を起こすと命にかかわったり、QOLが著しく低下したりします。ほかにも、感染症、がん、認知症、うつ病、歯周病、皮膚疾患、整形外科的疾患などにもかかりやすくなり、そして治りにくくなります。
編集部
血糖値をコントロールするために何をするのですか?
藤本先生
1型糖尿病は、自己免疫によりインスリンが出なくなってしまう疾患です。そのため、インスリン注射が必要になります。
編集部
2型糖尿病についてはいかがでしょうか?
藤本先生
2型糖尿病は、インスリンの働きが悪くなるタイプと、インスリンの反応が遅い、あるいは足りないタイプに分けられます。いずれも、食事療法や運動療法に加えて、必要であれば内服薬や注射薬を使用します。
血糖値コントロールとは、具体的にどうするのか?
編集部
血糖値コントロールは、具体的に何をすればいいのですか?
藤本先生
食事療法が基本となります。1日3食、各食事バランスよく、適正カロリーを摂ることが大切です。ただし、同じ身長・体重でも事務仕事をする人と建設現場で働く人とでは適正なカロリーが異なるので、そのあたりは注意が必要です。
編集部
ほかには?
藤本先生
糖質の摂り方もポイントになります。甘い飲み物は血糖値を急上昇させるので、糖尿病を発症している人は控えてください。特に、スポーツドリンクやエナジードリンクにも吸収されやすい糖質が入っていることが多く、注意が必要です。また、「糖質オフ」「糖質控えめ」といった表記は、あくまでもほかの商品との比較で糖質が少ないとは限らないため、注意して選びましょう。
編集部
糖質についてはどう考えればいいのですか?
藤本先生
糖質制限をおこなうと血糖値は下がりますが、極端な糖質制限は危険です。糖質は体を動かすエネルギー源であり、筋肉を合成するためにも必要な栄養素です。野菜やタンパク質を先に摂り、糖質はなるべく食事の後の方に摂るように心がけると、糖質の吸収が遅くなり、血糖値の上昇を穏やかにすることができます。また、また、白米やうどんなどの精製された白い主食から、雑穀米やもち麦、玄米等の食物繊維が多く含まれる主食に変えると、より効果的です。それから、ゆっくりよく噛んで食べてください。
編集部
色々と注意点がありますね。
藤本先生
どうしても甘い物を食べたいときは、間食より食後のデザートにすると血糖への影響を小さくできます。食べるときはお菓子より果物にすると、ビタミンやミネラル、食物繊維も豊富に含まれています。1日分の果物の目安としては、片手に軽く載せられる程度、バナナなら1本、リンゴなら半分です。果物も摂りすぎはやはり血糖値を上げるので、その点は気をつけましょう。
編集部
食事以外で気をつけるべきことはありますか?
藤本先生
運動療法も重要です。ウォーキング、水泳、ストレッチ、ヨガなどの有酸素運動は、直接血糖値を下げる効果があるので、食後におこなうとより効果的です。特に食べ過ぎてしまった後や、甘い物を摂った後にはちょっとした運動を心がけましょう。インスリンの働きやすい体づくりには、筋トレのようなレジスタンス運動が向いています。
編集部
運動も大事なのですね。
藤本先生
その中で最も重要なのは、「生活活動強度」を上げることです。「座っている時間が長いと、寿命が短くなる」という研究結果があるので、なるべく立ってこまめに動くようにしましょう。特別な運動をしなくても、「車ではなく公共交通機関で移動する」「エスカレーターではなく階段を選ぶ」「少し遠回りをする」といった習慣をつけると活動量が増え、血糖値も下がりやすくなります。
自己管理を成功させるためのコツは?
編集部
セルフコントロールも大事だと思いますが、成功させるためのコツはありますか?
藤本先生
まずは医療のプロである医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などと気軽に話せるようになるのが近道だと思います。糖尿病は血糖値の上がりやすい体質がベースにあるので、完治を目指すのではなく、コントロールしながら付き合っていく疾患です。そのため、糖尿病と診断されたら、たとえ薬が処方されていなくても定期的な通院や検査は続けていくことになります。医療機関とは長い付き合いになるので、ご自身の判断で治療を中断しないでください。
編集部
ほかにもありますか?
藤本先生
「見える化」も自己管理に大いに役立ちます。例えば、体重コントロールが必要な人は、毎日同じ条件で体重測定をおこない、0.1kgでも増えていたら「今日は強化日」として食事療法や運動療法を頑張る日にするということを繰り返し、徐々に体重をコントロールします。
編集部
体重を毎日測定するなど、習慣化することも大事ですね。
藤本先生
現在では、「食事療法サポートのアプリ」もたくさんあります。写真やメニューを選択するとカロリーや糖質量、塩分量などを計算してくれます。管理栄養士のアドバイスがついているサービスもあるので、是非ご自身に合うものを探してみてください。
編集部
アプリは便利なので続けられそうです。
藤本先生
それから、運動療法の見える化には「スマートウォッチ」がおすすめです。小さな動きも含めて1日の活動量を測定できるので励みになりますし、座りっぱなしだと警告をしてくれるタイプもあります。あとは、「ゲーム性のあるスマホアプリ」なども楽しく歩くのに役立つでしょう。
編集部
ほかに活用できるものはありますか?
藤本先生
血糖値を自分で測る「自己血糖測定」は、状況把握に役立ちます。最近では上腕などに10~14日つけっぱなしで血糖値を持続的に測定する機械も開発されており、夜間を含めた血糖値の動きが非常にわかりやすくなりました。血糖値をリアルタイムで把握することで、血糖値が上がってきたら運動する、食前血糖が高めなら糖質を控えめにするといった行動をとることができ、血糖値をコントロールしやすくなります。
編集部
コントロールを成功させるために、定期的に通院した方がいいのでしょうか?
藤本先生
はい。定期的に内科に通院して血糖、血圧、脂質の適正なコントロールを続けることが重要です。また、合併症の評価として、視力低下を感じていなくても眼底検査を定期的に受けてください。加えて、口腔ケアや歯周病治療は血糖コントロールのために大事なポイントなので、定期的に歯科受診をしましょう。
編集部
診察だけでなく検診も必要なのですね。
藤本先生
そうですね。それから、糖尿病があるとがんのリスクも高まるため、がん検診もきちんと受けるようにしてください。また、フットケアをおこなうことで、足の切断リスクは大きく減らすことができます。見たり触ったりして確認するとともに、しっかり保湿すること、足に合った靴を履くことがポイントです。さらに、睡眠不足やストレスも高血糖を招きます。生活リズムを整え、ストレスを溜めないように工夫しましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
藤本先生
糖尿病で医療機関を受診すると、保険診療で医療のプロからアドバイスを受けることができます。また、定期的な検査で病気の早期発見につながったり、早めに対応ができたりすることもあります。「糖尿病専門の医療機関で治療を受けていた糖尿病有病者の寿命と、糖尿病のない人の寿命に差を認めなかった」という報告もあり、「糖尿病とともに元気で長生き」は実現可能な目標です。糖尿病と診断されたら、まずは糖尿病内科を標榜している医療機関を受診してください。医療従事者と二人三脚で上手に血糖値をコントロールし、人生を守っていきましょう。
編集部まとめ
血糖値が高いと指摘されたらまずは糖尿病内科へ。栄養指導をはじめ、一般内科よりも専門的な治療をおこなってくれますし、重症患者の多い大病院と異なり、初期の糖尿病患者でも一人ひとりに時間をかけて丁寧に診察してくれると思います。重症化させないためにも、早めに糖尿病内科を受診するようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科 |