性交痛の原因で考えられることとは? 動脈硬化やクラミジアが潜むことも【医師解説】
なかなか人に相談できず、人知れず「性交痛」に悩んでいる女性も多いのでは? そもそも痛みの原因はなんでしょうか? 痛みの原因を知り、解消につなげる方法について、三島ゆうレディースクリニックの五十嵐先生に教えてもらいました。
監修医師:
五十嵐 優子(三島ゆうレディースクリニック)
性交痛とはなに?
編集部
性交痛とは何を指している言葉ですか?
五十嵐先生
簡単にいうと、性交の時に感じる痛みの総称です。性交痛を感じる女性は年代を問わずに意外と多く、そのためにパートナーとの性交を苦痛に感じることも少なくありません。
編集部
具体的に、どのような症状が見られるのですか?
五十嵐先生
痛みを感じるのは性交の最中、あるいは性交のあとです。ヒリヒリ痛んだり、ズキズキしたり、刺すような痛みを覚えたり、人によって症状は異なります。
編集部
具体的にはどの場所で痛みが起きているのですか?
五十嵐先生
痛みを感じる場所にはいくつかあります。たとえば、膣の入り口で痛みを感じることがあります。そのほか、膣の中や膣の奥の方など、人によって痛みを感じる場所は異なります。
編集部
性交痛を感じるときにはどうしたら良いのでしょうか?
五十嵐先生
原因によっては治療が可能なものもありますし、疾患が原因となって痛みが生じていることもあります。そのまま痛みを我慢し続けていると、パートナーとの関係がうまくいかなくなることもあります。気になったら早めの婦人科受診をお勧めします。
性交痛の原因は?
編集部
性交痛はなぜ、起きるのですか?
五十嵐先生
いろいろな原因が考えられます。たとえば、膣の入り口付近が痛む場合には炎症による可能性もありますが、ほとんどの場合、膣内のうるおいが不足していることが挙げられます。
編集部
それはどういうことでしょうか?
五十嵐先生
一般に、女性は性的な興奮が高まると下半身に大量の血液が集まることで毛細血管が拡張し、血管の壁が押し開かれます。すると、壁から潤滑液が分泌され、性交をスムーズにしやすくなります。しかし、何らかの原因でこの潤滑液の分泌が不十分になることがあり、そうなると痛みを感じやすくなるのです。
編集部
なぜ、潤滑液の分泌が減るのですか?
五十嵐先生
以下のように、いろいろな原因が考えられます。たとえばストレスや緊張のためにホルモンバランスが大きく乱れ、潤滑液が分泌されなくなることがあります。また、前戯が不十分だと性的興奮が高まらず、潤滑液の分泌が不十分になることがあります。それから産後はホルモンバランスが乱れるため、うるおいが不足することも多くなります。
編集部
そのほかには?
五十嵐先生
更年期障害によることもあります。更年期に入ると女性ホルモンの分泌量は減少します。すると膣やその周辺の細胞も衰えて皮膚や粘膜が薄くなったり、膣が乾燥したり、膣壁が傷つきやすくなったりします。そのため、性交痛を感じやすくなるのです。
編集部
本当にいろんな原因がありますね。
五十嵐先生
これ以外にも生まれつきの性器の形や位置、膣の狭さなども性交痛に関係することがあります。また、処女膜の厚さ、冷え性体質、疲労や睡眠不足などが関係することもありますし、性交の経験不足が原因となっていることもあります。
病気が性交痛の原因になることも
編集部
性交痛があるからといって、危険なことはないのですか?
五十嵐先生
気をつけたいのは「病気などが性交痛の原因になっていることもある」ということです。たとえば動脈硬化になると血管壁が硬くなり、潤滑液が分泌されにくくなるということがあります。
編集部
そのほかにも考えられる病気はありますか?
五十嵐先生
子宮内膜症や子宮筋腫など骨盤内の問題や、性器クラミジア感染症、カンジダ膣炎炎などの炎症性疾患が原因となっていることもあります。特に子宮の奥に痛みを感じる場合には、こうした病気の可能性も考えられます。
編集部
いろいろな原因があるのですね。
五十嵐先生
病気ではありませんが、膣の奥が痛む場合には便秘が関係していることもあります。特に、S状結腸に便が残っていたり、宿便があったりすると、膣の奥が痛くなることもあります。緊張やストレスが原因となって性交痛が生じているときには、カウンセリングなどが必要になることもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
五十嵐先生
性交痛はなかなか人に相談しづらい悩みですが、適切に対処すれば改善が期待できる症状です。医療機関によって治療法は異なり、自費診療になりますが、レーザーを照射して膣のうるおいを回復させる新しい治療を取り入れているところもあります。性交痛で一人で悩んでいる方も多いのですが、医療の助けを借りて改善できることも多いですし、一人ひとりに適した治療法をご提案することもできるので、我慢せず、ぜひ気軽に婦人科へご相談ください。
編集部まとめ
性交痛があるという理由で、パートナーとの性交を拒むことになったり、パートナーとの関係性が悪くなったりすることも少なくないようです。性交痛はどの年代でも生じる悩み。一人で抱えず、ぜひ婦人科に相談してみましょう。
医院情報
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診療科目 | 婦人科 |