クラミジアや淋菌による性感染症は、パートナーが無症状でも一緒に受診しないと「無限ループ」に陥る!
新型コロナウイルスの影響もあり、「無自覚・無症状」の意味するところが広く周知されてきたようです。無自覚・無症状は必ずしも「感染していないこと」を意味しません。そして、それは性感染症にも同じことが言えます。今回は、あらためて性感染症における正しい知識を「新宿駅前クリニック」の蓮池先生に教えていただきました。
監修医師:
蓮池 林太郎(新宿駅前クリニック 院長)
帝京大学医学部卒業。国立精神神経センター国府台病院(現・国立国際医療研究センター国府台病院)臨床研修、国際医療福祉大学三田病院勤務を経た2009年、東京都新宿区に「新宿駅前クリニック」を開院。2121年には法人化に伴い医療法人社団「SEC」理事長就任。「働く人を応援するクリニック」のコンセプトの元、皮膚科・内科・泌尿器科の各診療を提供している。
打ち返しても戻ってくるピンポン
編集部
「性病」は、ほとんどが感染病だと聞きます。
蓮池先生
はい。代表的な感染源は「クラミジア」や「淋菌」で、性交渉を通してパートナーにうつります。なお、クラミジアや淋菌は“生命力が弱い”ので、生物の粘膜の中でしか生きられません。したがって、粘膜以外、例えば公衆浴場のお湯を通して感染するようなことは考えられません。
編集部
性交渉という「ダイレクトなパス」じゃないと、うつらないということでしょうか?
蓮池先生
そういうことです。逆に言うと、コンドームの着用などで「ダイレクトなパス」さえ封じてしまえば、防ぐことが可能な病気でもあります。しかし、防げるにもかかわらず一定の患者さんが存在するということは、知らず知らずのうちに感染を繰り返しているのだと思います。
編集部
知らず知らずというと、自覚症状が乏しいからでしょうか?
蓮池先生
はい。性感染症の初期では、自覚症状がほとんどありません。また、パートナーにうつした段階でようやく自覚が出て、治療を開始したとします。その後、無事に治ったとしても、無自覚なパートナーから再び“もらいかねない”ということです。このような感染形態のことを「ピンポン感染」と呼ぶこともあります。
編集部
つまり、自分だけが治療したところで、根本解決に至っていないということですか?
蓮池先生
そういうことです。そのため、性感染症の検査・治療は、カップルでご相談いただくのが理想的ですね。実際、特定のパートナーが定まった時点で、自覚の有無にかかわらず検査を受けに来るカップルはいらっしゃいます。男女ともに陰性反応、つまり非感染状態であれば、その後も安心できますよね。
双方が無症状だと自費診療になる可能性も
編集部
そもそも、性病に気づかないと受診する気にならないのが本音です。
蓮池先生
クラミジアや淋菌感染による自覚には、必ずしも陰部に限らず性交渉の内容によってはお口の周辺にも生じます。具体的には、膿(うみ)や発疹、水ぶくれ、普段と違う臭い、排尿時の違和感などが挙げられます。他人にうつす可能性がある感染症ということを考えると、「おかしい!」となってからではなく、「もしかしたら?」の段階で受診を推奨します。
編集部
パートナー双方で無自覚な段階から「性病チェック」をしてみるという考えはどうでしょうか?
蓮池先生
そういうカップルも実際にいらっしゃいます。ただし、まったくの無症状だと「病気疑い」とはならないので、自費診療になるかもしれません。一方で自覚症状があれば、保険適用となります。費用面での事情も、受診のハードルを上げている要因なのだと考えます。やはり、一方に自覚症状が出たタイミングでパートナーと一緒に受診していただくのが現実的なのかなと思われます。
編集部
仮に検査してもらうとして、どのような検査をおこなうのでしょうか?
蓮池先生
今回のクラミジアと淋菌に限って言えば、「尿または 腟(ちつ)分泌物」を採取して調べます。しかし、性感染症各種の検査は20種類ほどあり、血液検査やうがい、できものなどの組織を採取して調べるものなど多彩です。そして、それぞれ5000円~1万円ほど費用がかかります。
編集部
全部調べるとなると、検査だけでけっこうな費用がかかりますね……。
蓮池先生
保険診療の範囲であれば、「疑わしい病気」があって、それに対する検査をおこなうわけですから、全種類を実施するようなことはありません。また、自費の自主的な検査にしても、1回の採血で複数の検査がおこなえることもあるので、単純にプラスオンされるわけではないです。加えて、医院によっては「組み合わせコース」などでトータル費用を抑えているところもあります。
コンドームは有効だが、例外もある
編集部
仮にパートナーと治療を開始したとして、お互いが治るまで、性交渉はできないのですよね?
蓮池先生
病気によりますが、基本的には控えてもらいます。なお、ここでいう「治る」とは、医師がそう判断したことを意味します。仮に膿などの症状が治まったとしても、菌や感染源がまだ残っているケースが考えられます。医師が調べてみて「完全に菌がいなくなった」と判明するまでが治療期間になります。
編集部
症状が引いても菌が残っていれば、ピンポン感染が再開されてしまうということですか?
蓮池先生
はい。菌やウイルスが残っていれば、ピンポン感染は成立します。ですから、「自覚がなくなったこと」と「治療が終わったこと」は、別で捉えていただきたいのです。なお、性病の中には例外的に、コンドームの着用で防ぎきれないものもあります。そのため、治療終了前に性交渉をするのは避けましょう。
編集部
下半身をフォーカスしがちですが、「口の中」にウイルスが残っている場合もあるのですよね?
蓮池先生
そうですね。キスやオーラルセックスでもピンポン感染が成立するのです。ただし、「お口の中に残っているかもしれない」という状態だと病気疑いが付かないので、自費診療になります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
蓮池先生
ご存じのように、ウイルスは会話をしていても飛沫感染します。ところが、多くの性病は粘膜を介さないとうつらないのです。ですから、そういうタイプの感染症があることを知っていただき、コンドームのような自衛策に努めていただくしかないと願っています。お互いのため、そして人類のために、正しい知識を身につけてください。
編集部まとめ
私たちはピンポン感染による無限ループを、インフルエンザなどで経験しています。そして、性病の多くは「ダイレクトなパス」によってうつるとのこと。つまり、パスをする相手がいる限り、菌は残り続けるということです。もちろんカップルがともに「陰性」であれば、パスするボール自体が存在しません。このように、性感染症はパートナー単位で考える必要があるのです。
医院情報
所在地 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-12-11 山銀ビル5F |
アクセス | JR「新宿駅」 2分 |
診療科目 | 内科、皮膚科、アレルギー科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、性感染症内科 |