「高血圧」の季節ごとの対処法はご存じですか? 夏・冬それぞれの注意点も医師が解説!
「高血圧は万病の元」とも言われている通り、放置すると様々な疾患を引き起こすこともあるので、日常的に治療と対策をおこなうことが必要です。その中で、特に気をつけたいのは「季節」。高血圧対策をする際、夏と冬でどのような違いがあるのかについて、「いとう内科クリニック」の伊藤先生に解説していただきました。
監修医師:
伊藤 大輔(いとう内科クリニック)
目次 -INDEX-
高血圧とは?
編集部
まず、血圧について教えてください。
伊藤先生
血液が動脈を流れるときに、血管の内側にかかる圧力を血圧と言います。「上の血圧」と「下の血圧」があり、上の血圧とは心臓が収縮して全身に血液を送り出したときの血圧のことです。その一方、下の血圧とは、心臓が拡張して心臓内に血液を溜め込んでいるときの血圧を指します。
編集部
では、高血圧とは?
伊藤先生
何らかの理由で、血圧が高くなることを高血圧と言います。血圧が高くなる理由としては、「血管の内部を流れる血液の量が多くなる」「血管の内腔が狭くなる」ことが考えられます。
編集部
具体的に、どれくらい血圧が上がったら高血圧なのでしょうか?
伊藤先生
高血圧はいくつか種類があるのですが、家庭で測定した場合、「上の血圧が135mmHg以上」「下の血圧が85mmHg以上」であれば高血圧です。上下どちらか片方でも満たす場合は高血圧と診断されます。
編集部
高血圧の状態が続くと、どうなるのですか?
伊藤先生
様々な疾患のリスクになり得ます。例えば、高血圧の状態が続くと血管は厚く、硬くなります。血管は血液と栄養を送るホースとしての役割を担っており、高血圧になるとそのホースが傷んできます。この状態が「動脈硬化」です。動脈硬化が起きると脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、心筋梗塞、心不全、腎不全を発症するリスクが高まります。
編集部
いずれも重篤な疾患ですね。
伊藤先生
そのとおりです。どれも悪化すると命の危険に至る重大な合併症であるため、高血圧を自覚したら早めに対策を講じる必要があります。
高血圧の対策方法
編集部
高血圧の人は、どのようなことに気をつければいいのですか?
伊藤先生
まずは、食生活を見直すことから始めましょう。特に塩分の摂りすぎは、高血圧を悪化させる要因となります。加工食品に含まれる食塩も合わせて1日に6g未満にすることが推奨されています。ただし、高齢者の場合は「フレイル」という体の脆弱性も指摘されているので、体の状態によって塩分の摂取量を考慮することが必要です。
編集部
ほかに気をつけることは?
伊藤先生
コレステロールや飽和脂肪酸の摂りすぎも高血圧を悪化させますし、食べ過ぎも肥満につながり、血圧をさらに上昇させます。そのほか、アルコールの過剰摂取にも気をつけましょう。
編集部
食事以外で注意すべきことはありますか?
伊藤先生
健康な人の場合は、適度な運動をすることが推奨されています。特に有酸素運動は血圧を下げる効果があるとされているため、できれば毎日30分以上、ややきついと感じる程度の運動をすることをおすすめします。ただし、併存する疾患によっては運動の強度などを調整する必要があります。
編集部
そのほか、高血圧を悪化させる要因はありますか?
伊藤先生
高血圧は遺伝的な要素や、ストレスや睡眠不足なども深く関わってきます。加えて、真面目で几帳面すぎる性格の人も高血圧になりやすいとされています。
編集部
性格も関わってくるのですね。
伊藤先生
はい。血圧は多少高くても、ほとんど自覚症状がありません。そのため、自分で血圧が高いことに気づかず、生活で無理をしてしまう人も少なくありません。しかし、高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれており、知らない間に血管に負担をかけて動脈硬化を進行させます。高血圧と指摘されたことがある場合や、身内に高血圧の人がいる場合は、なお一層、血圧管理に気をつけましょう。
高血圧の季節における注意点
編集部
ほかに注意すべきことはありますか?
伊藤先生
寒さや外気温の急激な変化も血圧を上げる要因として考えられています。特に、冬は高血圧に要注意です。「屋外に出るときは防寒対策をする」「布団から出る前に暖房をかける」などの対策を怠らないようにしましょう。
編集部
寒さ対策が必要なのですね。
伊藤先生
そうですね。中でも血圧が上がりやすいのは、「脱衣所」と「トイレ」です。脱衣所は浴室との温度差が大きいので、浴室から上がったときに急激な温度変化で血圧が上がりやすいです。また、トイレはほかの部屋と比べて気温が低くなるので、血圧が上昇しやすいとされています。そのため、入浴するときには脱衣所を温める、トイレの中や便座を温めるといった対策がおすすめです。
編集部
一方で、夏に気をつけることがありますか?
伊藤先生
夏は暑さで汗をかくため、体内の水分が失われやすくなります。脱水になると血液の量も減少し、血圧が下がることがあります。そのため、夏は喉が渇いたら水分をしっかり摂りましょう。特に外での作業や運動などで発汗量が多い場合には、水分だけでなく、経口補水液などで塩分やミネラルを適切に補給することも大切です。
編集部
水分は多めに摂った方がいいのですか?
伊藤先生
基本的にはそうなります。ただし、過度に摂りすぎると心臓腎臓に負担がかかることがあるので、喉の渇きにあわせた水分補給を心がけましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
伊藤先生
普段から「健康診断で血圧が高いと指摘されました」という相談をたくさん受けます。しかし、健康診断やクリニックで測定する数値よりも、家庭で測る数値に目を向けてほしいです。健康診断やクリニックだとどうしても高くなりがちなので、可能であれば家庭で毎日血圧を測定する習慣をつけましょう。最近は若者の高血圧も増えているので、年齢に関係なく、健康診断などで「血圧が高い」と指摘されたら、自宅で測定する習慣をつけることをおすすめします。
編集部まとめ
国民病と言っても過言ではない高血圧。自覚症状が全くないことも多いので、普段は全然意識していない人も多いと思います。しかし、高血圧は知らない間に悪化し、大きな病気を招くこともあります。血圧が高いと指摘されたら一度、自分の生活習慣を振り返ってみてくださいね。
医院情報
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診療科目 | 内科、循環器内科 |