息苦しさを感じる…その原因は「ストレス」の可能性も? 症状・対策を公認心理師に聞く
日々の生活の中で、息苦しさを感じることはありませんか? 実はその息苦しさ、ストレスが原因で起こることもあるそうです。息苦しさというと呼吸器が関係していそうですが、なぜストレスが引き金となるのでしょうか。今回、ストレスが息苦しさを引き起こすのか、ストレスを溜めないための方法、息苦しさを感じた時の対処法などについて、公認心理師の鍋田さんに解説していただきました。
監修公認心理師:
鍋田 悠郎(公認心理師)
目次 -INDEX-
なぜストレスが息苦しさを引き起こすのか 動悸・息苦しさのメカニズムを解説
編集部
不安や緊張など、ストレス反応で息苦しさを感じたり動悸が起こったりすることはあるのでしょうか?
鍋田さん
息苦しさや動悸は様々な理由で起こりますが、不安や緊張などストレス反応で生じることもあります。自律神経のバランスが乱れることで、あるいは不安障害やパニック障害などで息苦しさや動悸を感じることもあります。
編集部
自律神経である交感神経、副交感神経の働きについて教えてください。
鍋田さん
不安や緊張などのストレスで感情が高ぶると、人間の体は交感神経が刺激されて「闘争・逃走反応」を示し臨戦体制に入ります。そうすると、たくさんの酸素を取り入れようとして呼吸が浅く速くなります。そのことで息苦しさを感じます。副交感神経は交感神経と逆の身体をリラックスさせる働きがあります。
編集部
不安や緊張は悪いものなのでしょうか?
鍋田さん
不安や緊張自体は悪いものではありません。緊張や不安がパフォーマンスを高めることもありますし、不安を感じるからこそ交感神経によって警戒心が高まり、その場を乗り切れることもあります。交感神経や感情自体にいい悪いはないのです。しかし、不安や緊張が過度になり、交感神経が高まった状態が継続してしまうことで、息苦しさや動悸、不眠、体の不調など様々な症状を引き起こしてしまうのです。
編集部
息苦しさのストレス以外の原因について教えて下さい。
鍋田さん
ストレスで息苦しくなることもありますが、呼吸器疾患や心臓疾患などで息苦しくなることもあります。息苦しさが長期間続いたり日常生活に支障が出ていたりする場合は、ストレス以外の原因も考えられます。ストレスが原因でないにしろ、そうでないにしろ、日常生活に支障が出ている場合は、早めに受診をするようにしましょう。
ストレスをためない為にはどうすればいい? ストレスへの対策を公認心理師に聞く
編集部
ストレスをためない為にはどうすればいいですか?
鍋田さん
ストレスが溢れてしまう状態をレッドゾーン、その直前をイエローゾーンとした時に、自身のレッドゾーン・イエローゾーンのサインを把握しておくといいですね。その上でできるだけイエローゾーンのうちに対処し、レッドゾーンにまで入ってしまったらどうするかについて自分の中であらかじめ考えておけるといいと思います。
編集部
ストレスがたまっているサインについても教えてください。
鍋田さん
レッドゾーンやイエローゾーンのサインは人によって違いますが、頭痛や腹痛、泣けてくるなどの身体反応、悲観的になる、怒りっぽくなる、落ち込むなど感情や考え方、出かけなくなる、遊ばなくなるなどの行動があります。また、過食や食欲がなくなる、睡眠障害なども考えられますね。
編集部
ストレスをなくすことはできるのでしょうか?
鍋田さん
ストレスをなくすことは不可能です。仕事での失敗、試験の不合格、死別などはもちろん、天候や気温などの自然現象、結婚や子どもが産まれたことなどもストレスになるからです。ストレスを0にしようという考え方自体が完璧主義、0日100の白黒思考的な考え方で、こうした極端な考え方は心の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
編集部
では、どのような考え方をするのがいいのですか?
鍋田さん
ストレス学説を提唱したセリエ博士も「ストレスは人生のスパイスである」と述べています。先ほどの自律神経のところでお話したように、不安、緊張といったストレスも過度でなければ生きるうえで役に立つものです。そのため、ストレスを0にするという考えではなく、ストレスとの付き合い方を考える、ストレス対処法を身につけるといった考え方をした方がいいでしょう。
編集部
心の健康のためにお勧めの生活習慣があれば教えてください。
鍋田さん
まず、よく言われる基本的な生活習慣が心の健康にも効果的です。「栄養のバランスの取れた食事を摂る」「睡眠をしっかり取る」「運動をする習慣をつける」などですね。運動は身体にいいということは知っていると思いますが脳にもいい影響をもたらします。認知機能の改善やうつ病の改善、不眠の改善なども期待でき、心身ともにいいのでお勧めです。
編集部
ほかにはありますか?
鍋田さん
「マインドフルネスを生活の中で実践していくこと」「学ぶこと」「自分の価値観を考えて価値観に基づき行動していくこと」「自分の思考パターンに気づき対処できるようになること(先ほどお話した完璧主義や白黒思考など)」なども心の健康のためにいいでしょう。また、「しっかりと休むこと」「しっかりと楽しむこと」も当然いいことです。休むことや楽しむことで、心身を回復させることができます。罪悪感を感じずに休む時は休み、楽しむ時は楽しみましょう。
息苦しさを感じたらどうすればいい? 公認心理師おすすめの対処法を紹介
編集部
ストレスで息苦しさを感じた時はどうしたらいいですか?
鍋田さん
息苦しさを感じた時の対処法としては、「呼吸法」「ストレッチ」「運動する」「漸進的筋弛緩法」「マインドフルネス瞑想」などがあります。その他、その場所を離れる、水分補給をする、音楽を聞くなどで対処できる方もいます。また、即効性はありませんが認知行動療法もストレス対処には効果を発揮します。
編集部
色々な方法があるのですね。
鍋田さん
そうですね。色々と試して自分の中で効果があるものを行っていけるといいでしょう。また、一つしかないと使えない場面もあるため、できるだけ多くの対処法を持っているといいですね。ストレス対処法は漠然ともっているだけだと実行できないこともあるので、あらかじめストレス対処法を書き出して整理しておくのもお勧めです。
編集部
呼吸法について詳しく教えてください。
鍋田さん
色々とありますが、「ゆっくりと息を吐くことを意識した深呼吸」「腹式呼吸」などが効果的です。こうした呼吸をすることで、副交感神経が優位となり、リラックスした状態になって息苦しさが解消されます。また、4・7・8呼吸法では、4秒かけて息を吸い、7秒息を止めて、8秒かけて息を吐くといったリズムで呼吸をおこなうことで、リラックス効果があると言われています。
編集部
体を動かすことも効果があるのですね。
鍋田さん
先ほどお話ししたように、運動は脳や心にいい影響を与えます。息苦しさを感じている時は交感神経が優位になっているため、ストレッチで身体をリラックスさせ副交感神経を優位にすることで、息苦しさに対して効果があります。また、息苦しさを感じている時は身体が緊張している可能性もあるため、ストレッチで緊張を和らげるだけでも、十分息苦しさを緩和できる可能性があります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鍋田さん
ストレス過多になり、対処できないと息苦しさや動悸を感じることがあります。ストレス過多の自覚がなくても息苦しさなどの症状が出た場合は、疲れているな、ストレス過多だなと思い、リフレッシュすることをお勧めします。個々で紹介した以外にも様々な方法がありますので、色々と試して見つけていけるといいですね。心の健康は保つためにストレスが溜まる前から対処することが大切です。ただ、息苦しさや動悸は病気の症状として出ている可能性もあるので、症状が続く場合や日常生活に影響が出る場合は受診することをお勧めします。
編集部まとめ
ストレスが息苦しさや動悸を引き起こし理由について、ストレスを溜めないための方法、息苦しさを感じた時の対処法などについて教えていただきました。息苦しさや動悸はストレスによって引き起こされることがありますが、ストレス自体はプラスに働く面もあるため、ストレス過多とならないように上手く対処をしていくことが大切とのことでした。ストレス対処法、心の健康を保つための習慣を身に着けていくことでストレスに上手く対処できるようになるといいですね。ただ、病気の可能性もあるとのことだったため、長引く場合や日常生活に影響が出る場合は病院受診をした方が良さそうですね。