「頭痛」の検査方法はご存じですか? 受診のサインや治療法も医師が解説!
慢性的な頭痛に悩まされている人は多いと思います。頭痛があると仕事や勉強に集中できずパフォーマンスが落ちるだけでなく、吐き気やめまいなどの症状も伴うことがあります。また、「脳の病気ではないか?」と心配になって受診する人も少なくありません。頭痛で病院を受診する場合には、どのような検査がおこなわれるのでしょうか。今回は「原脳神経外科クリニック」の原先生に解説していただきました。
監修医師:
原 晃一(原脳神経外科クリニック)
頭痛で病院を受診する目安を医師が解説
編集部
頭痛が起きたとき、どのような症状がみられたら、病院を受診すべきですか?
原先生
例えば、「今までに感じたことがないような頭痛」「突然の激しい頭痛」「徐々に悪化する頭痛」「吐き気や嘔吐を伴う頭痛」「手足の麻痺や痺れを伴う頭痛」がある場合には、受診をすることをおすすめします。また、「上手に話せない」「記憶が曖昧」「物がぼやけて見える」などの症状を伴う場合も要注意です。
編集部
なぜ、そのような頭痛があるときは受診した方がいいのでしょうか?
原先生
場合によっては、命に関わることもあるからです。頭痛は「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類されています。一次性頭痛は「脳に器質的な異常を認めないもの」、二次性頭痛は「脳に器質的な異常が認められるもの」と定義されています。つまり、二次性頭痛とは何らかの疾患が原因となって頭痛が起きているということであり、場合によっては命の危険を伴います。その場合には、前述のような症状が多く認められます。
編集部
二次性頭痛の原因には、どのような疾患が考えられるのですか?
原先生
脳出血やくも膜下出血、髄膜脳炎、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などが発症していることも考えられます。
編集部
先ほどのような症状がみられない場合には、どうしたらいいのでしょうか?
原先生
一次性頭痛には、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などが含まれ、命に関わることはありません。しかし、仕事のパフォーマンスが落ちたり、寝込んでしまって家事ができなかったり、生活に支障が生じることもあります。その場合には病院で治療を受けましょう。
編集部
命の危険がない頭痛でも、受診した方がいいのですね。
原先生
はい。特に「生活に支障を伴う」「1カ月以上、頭痛が続いている」「市販薬でコントロールできない」という場合には、受診を推奨します。
編集部
頭痛で受診するときには、何科を選べばいいのでしょうか?
原先生
脳神経内科や脳神経外科などを受診してください。また最近では、頭痛外来を設けている医療機関もあります。
頭痛に対して、どのような検査がおこなわれるのか?
編集部
頭痛で受診するときには、どのような検査がおこなわれるのでしょうか?
原先生
まずは、問診で頭痛の症状について詳しく確認します。どのように頭痛が生じたのか(突然なのか、または徐々に生じたのか、など)、頭痛の程度はどれくらいか(じっとしていられないほどなのか、寝込むほどなのか、など)、どれくらいの時間続いているか、痛む場所はどのあたりか、頭痛のほかに症状があるかなどをお聞きします。
編集部
その後は?
原先生
頭痛の原因を調べるために、頭部の画像検査や血液検査を受けていただきます。頭部の画像検査は必要に応じてCT検査やMRI検査もおこないます。
編集部
画像検査では、どのようなことがわかるのですか?
原先生
まず、CT検査はX線を使って頭の中の断層写真を撮影します。CT検査により、脳内で出血や腫瘍があるかを確認することができます。また、頭蓋骨骨折など頭部に外傷がないか、脳出血やくも膜下出血が起きていないかなども迅速に診断できます。
編集部
MRI検査ではどのようなことがわかるのですか?
原先生
MRI検査は、強力な磁場を利用して頭部の断面図を映像化する検査です。脳や脳血管の状態を詳しく調べることができ、脳腫瘍や脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを早期に見つけることができます。
編集部
CT検査とMRI検査は、どのようにして使い分けるのですか?
原先生
CT検査の方が、検査時間が短く手早く調べることができます。ただし、画像のコントラストの違いが出にくいことに加え、血管の状態を確認することが得意ではありません。一定の放射線被ばくもあります。その一方、MRI検査は磁石で撮影するため被ばくはなく、コントラストが鮮明であり、造影剤を使用しなくても血管の状態を詳細に確認できます。しかし、検査に時間がかかるというデメリットもあるため、症状などによってどちらの検査が適しているかを判断します。
編集部
血液検査ではどのようなことがわかるのですか?
原先生
感染症の有無を確認することができます。また、髄膜炎による頭痛が疑われる場合には、腰骨の間に針を通し、脳脊髄液を集めて検査をする髄液検査がおこなわれることもあります。
頭痛の原因がわかったら、どのような治療がおこなわれるのか?
編集部
検査により頭痛の原因がわかったら、どのような治療がおこなわれるのですか?
原先生
まず二次性頭痛の場合には、それぞれの原因に即した治療がおこなわれます。一方、一次性頭痛の場合には主に薬物治療をおこないます。一次性頭痛の治療は、「頭がズキズキと痛いときの急性期治療」と「痛みの頻度と程度を減らす予防治療」に分類されます。
編集部
急性期治療では、どのような薬剤が用いられるのですか?
原先生
「アスピリン」や「アセトアミノフェン」を処方することがあります。そのほか、片頭痛の治療薬としては「トリプタン」や「ジタン」を使うことがあります。
編集部
色々な薬が用いられるのですね。
原先生
急性期治療で気をつけてほしいのが、「これらの薬を過度に使用すると頭痛が慢性化したり、悪化したりする場合がある」ということです。
編集部
それはどういうことでしょうか?
原先生
現在、日本で問題になっている頭痛の1つに「薬剤の使用過多による頭痛」というものがあります。これは「1カ月に10~15日以上、3カ月以上にわたって薬を使用した場合に起きる頭痛」と定義され、もともと頭痛持ちだった人が、薬を長期にわたって使用したことにより、反対に頭痛が起きやすくなってしまった状態を指します。
編集部
ダラダラと頭痛薬を長期にわたって服用するのは危険なのですね。
原先生
はい。注意したいのは、薬剤の使用過多による頭痛は市販薬に限らないということです。場合によっては病院で「頭が痛い」と訴えると、「頭痛薬を出しておきますね」と言われ、10日分以上、薬を処方されることがありますが、この場合も要注意です。頭痛薬の種類によりますが、10~15日以上連続して服用するとかえって頭痛が起きやすくなり、さらに、治りにくい状態になってしまいます。10日間服用して頭痛が治らない場合には、必ず専門医を受診しましょう。
編集部
頭痛を予防することもできるのですか?
原先生
頭痛の種類によっては、予防薬が開発されているものもあります。例えば、片頭痛の予防薬としては、これまで内服薬が用いられてきましたが、近年、登場したものに「CGRP関連抗体薬」があります。痛みの原因物質であるCGRPをブロックしたり、CGRPが結合する受容体を塞いだりすることによって片頭痛を予防するという注射薬です。これらによって、頭痛の回数を減らすことが可能です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
原先生
「頭痛くらいで病院を受診してもいいのだろうか」と迷い、市販の頭痛薬で治そうとする人は非常に多い印象です。しかし、頭痛は正しく診断し、適切に治療をおこなって症状をしっかりコントロールすることが重要です。頭痛の診療ガイドラインでは、「慢性的な片頭痛による経済損失は、年間3600億円~2兆3000億円にものぼる」とされています。我慢せず、専門医を受診して適切なコントロールをおこなうことで、仕事の生産性や勉強のパフォーマンスも上がります。頭痛で困っていることがあれば、ぜひ、お気軽にご相談ください。
編集部まとめ
頭痛は非常にありふれた疾患なので、「わざわざ病院へ行く必要はない」と考える人も多いと思います。しかし、年間約2兆円の経済損失ということは、1人あたり年間176万円にもなります。このように考えると頭痛のため、いかに多くの損失が生じているかわかると思います。頭痛に悩んでいる人は、ぜひ専門医に相談してみましょう。
医院情報
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診療科目 | 脳神経外科、神経内科、内科、整形外科 |