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「片頭痛」予防の新薬の効果を医師が解説! アジョビ・アイモビーグ・エムガルティの特徴や違いとは

 公開日:2024/05/16

片頭痛に悩まされている人によっては、新たに登場した薬が気になる人も多いのではないでしょうか。内服治療で効果がなかった人に対して、新薬は救世主になるかもしれません。ただし、新薬にもいくつかの種類があり、それぞれの特徴を理解した上で使用することが大切です。今回は、片頭痛治療に用いられる新薬について、「原脳神経外科クリニック」の原先生に解説していただきました。

原 晃一

監修医師
原 晃一(原脳神経外科クリニック)

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慶應義塾大学医学部卒業。その後、慶應義塾大学医学部外科学教室入局、済生会宇都宮病院、川崎市立川崎病院、大田原赤十字病院(現・那須赤十字病院)、済生会横浜市東部病院、日野市立病院などで脳神経外科医として経験を積む。2017年、東京都日野市に「原脳神経外科クリニック」を開院。日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医。

片頭痛予防の新薬が登場

片頭痛予防の新薬が登場

編集部編集部

「片頭痛を予防する新薬が登場した」と聞きました。

原 晃一先生原先生

はい。2021年4月に新しい片頭痛の予防治療薬として「エムガルティ」が発売されました。その後、「アジョビ」と「アイモビーグ」という2種類の薬剤も相次いで登場しています。

編集部編集部

どのように片頭痛を予防するのですか?

原 晃一先生原先生

基本的には、月に1回、もしくは4週間に1回、皮下注射をすることで片頭痛発作の回数を減らしたり、片頭痛の治療薬の使用量を減らしたりすることができます。

編集部編集部

予防薬は片頭痛の回数を減らすことができるのですね。

原 晃一先生原先生

そうです。誤解されがちですが、片頭痛の予防薬を使用しても片頭痛の発作を必ずしもゼロにできるわけではありません。片頭痛の予防薬は、頭痛の頻度を減らすことを目的に使用されます。投与によって頭痛の程度を軽くしたり、鎮痛薬が効きやすくなったりする効果も期待できます。

編集部編集部

これまでも片頭痛の予防薬は存在していたのですか?

原 晃一先生原先生

従来でも様々な内服薬が予防薬として用いられていました。しかし、一定の効果が期待できる反面、副作用があったり、効果が不十分だったりしたため、頭痛のコントロールが困難な患者さんも少なくありませんでした。今回新しく登場した薬は非常に予防効果が高い上、そうした心配がないため、非常に注目されています。

「アジョビ」「アイモビーグ」「エムガルティ」の特徴を医師が解説

「アジョビ」「アイモビーグ」「エムガルティ」の特徴を医師が解説

編集部編集部

新薬の特徴について教えてください。

原 晃一先生原先生

これらの新薬は「抗体医薬」と呼ばれるタイプの薬です。抗体医薬とは抗体を利用した医薬品のことで、抗体は特定の抗原を狙い撃ちする性質を持っています。この性質を利用し、片頭痛の原因となる物質をブロックすることで、片頭痛を予防するのです。

編集部編集部

もう少し具体的に教えてください。

原 晃一先生原先生

片頭痛の原因は「CGRP」という物質です。CGRPは顔や頭の感覚を司る三叉神経の終末から放出されるペプチドです。これが放出されると血管が拡張したり、炎症反応が起きたりして、片頭痛の原因となります。エムガルティなどの新薬は、CGRPをブロックすることで、片頭痛の発作を減らしたり、発作の程度を軽くしたりします。

編集部編集部

どのようにCGRPの働きをブロックするのですか?

原 晃一先生原先生

大きく分けて、2つのタイプがあります。まず、CGRPが神経から放出されても、働かないように抑え込むタイプです。エムガルティとアジョビがこのタイプに該当します。

編集部編集部

アイモビーグはどのような薬ですか?

原 晃一先生原先生

エムガルティ・アジョビと異なり、アイモビーグは放出されたCGRPの受容体、いわゆる窓口を閉じることで、CGRPが働けないようにする作用を持っています。放出されたCGRPは脳周囲の血管の平滑筋細胞に発現しているCGRP受容体に働きかけ、CGRPが働けないようにします。これにより片頭痛を予防できるという仕組みです。

片頭痛治療における注意点

片頭痛治療における注意点

編集部編集部

治療効果はどれくらい持続するのですか?

原 晃一先生原先生

それぞれの薬剤によって異なります。エムガルティは毎月1回、アイモビーグは4週間に1回注射をすることで効果を持続させます。一方、アジョビは4週間に1回、あるいは12週間に1回注射をします。

編集部編集部

どの薬剤を使うか、どのように選択すればいいのでしょうか?

原 晃一先生原先生

いずれの薬剤も効果は非常に高いので、医師に相談して選択するのがいいと思います。アジョビのみ、12週間に1回注射をすればいいタイプの製剤もあるので、注射の手間を省略できるメリットがあります。ただし、いずれの薬剤も自宅で注入器を使って皮下注射することができるようになり、都度来院する必要がなくなりました。エムガルティは初回に2本注射しますが、その分、1カ月後の有効性が高く評価されています。アイモビーグは、作用機序が若干異なるのでエムガルティやアジョビが効かない場合などに考慮されます。

編集部編集部

効果はすぐに表れるのですか?

原 晃一先生原先生

薬剤にもよりますが、エムガルティは初月に2本注射をおこなうため、ほかの薬剤と比べて効果が出現するのが早いとされています。その分、価格が高めです。一般的には全ての薬剤において、効果が出るまで2~3カ月かかることがあるとされています。

編集部編集部

治療を中断した場合には、再発するのですか?

原 晃一先生原先生

薬剤の歴史はまだ浅いため、現在も研究途中ではありますが、使用した患者のうち約10%は片頭痛の発生をゼロに抑えられることがわかっています。その一方、治療を中断すると再発する人もいることはたしかですが、どのような人が再発しやすいのかは現在、研究中です。

編集部編集部

治療は保険適用ですか?

原 晃一先生原先生

はい。ただし「飲み薬の予防薬を使っても月に4回以上片頭痛がある」あるいは、「副作用が強く、飲み薬の予防薬を使用できない」という条件を満たした場合に保険が適用されます。

編集部編集部

治療費はどれくらいですか?

原 晃一先生原先生

3割負担の場合、1万2000~1万3000円です。ただし、エムガルティのみ初月は2本分の費用がかかります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

原 晃一先生原先生

これまでの片頭痛治療は「治す」のではなく、あくまでも「症状をコントロールする」ことに主眼が置かれていました。その意味で、これらの新薬は非常に画期的な薬剤と言えるでしょう。ただし、これらの治療を提供する医療者は限られており、「日本神経学会、日本頭痛学会、日本脳神経外科学会による専門医の認定を有していること」「頭痛を呈する疾患の診療に5年以上の臨床経験を有していること」などが条件として課されています。そのため、どこでもこれらの治療を受けられるというわけではないので注意が必要です。もし治療を受けたいと思ったら、念の為事前に医療機関へ確認することをおすすめします。

編集部まとめ

片頭痛に悩まされている人は多く、市販の頭痛薬で凌いでいる人も少なくありません。かつては「片頭痛は治らない」「症状をコントロールするのみ」でしたが、現在は、頭痛は適切な診断と治療で治癒できるかもしれない時代に入っています。つらい頭痛で苦しんでいる人は、ぜひ治療を検討してみましょう。

医院情報

原脳神経外科クリニック

原脳神経外科クリニック
所在地 〒191-0062 東京都日野市多摩平1-3-14-1F
アクセス JR「豊田駅」 徒歩2分
診療科目 脳神経外科、神経内科、内科、整形外科

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