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【不育症は遺伝するの?】家族が不育症と診断された場合の検査や遺伝性を産科医が解説

 公開日:2024/04/07
不育症は遺伝する? 家族が不育症と診断された場合の検査や遺伝性を産科医が解説

妊娠後、流産や死産を2回以上繰り返すことを「不育症」と言います。まだ原因などが判明していないことが多く、対応に困っている人や悩んでいる人も多いと思います。もし不育症と診断されたら、一体どうすればいいのでしょうか? 不育症の遺伝性や考えられる原因、検査、対処法などをまつみレディースクリニック三田の松見先生にお聞きしました。

松見 泰宇

監修医師
松見 泰宇(まつみレディースクリニック三田)

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東京大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科博士課程(生殖・発達・加齢医学)修了。日本学術振興会特別研究員、スタンフォード大学生殖生理学教室リサーチフェロー、成育医療研究センター特別研究員、埼玉医科大学特別研究員などで研究に従事。東京大学大学院医学系研究科文部教官助手、帝京大学医学部附属溝口病院講師、帝京大学非常勤講師、焼津市立総合病院、武蔵野赤十字病院など総合病院にて勤務。両角レディースクリニック、木場公園クリニックなど不妊クリニックにて勤務。愛育病院、池下レディースクリニックなど周産期医療専門病院および産科クリニックにて勤務。

妊娠しても流産・死産を繰り返してしまう不育症で最も多い原因とは? 検査方法や診断について

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編集部編集部

不育症とはなんですか?

松見 泰宇先生松見先生

妊娠をしても2回以上の流産や死産を繰り返して元気な赤ちゃんを授かることができない場合を不育症と呼びます。新しく、生児獲得歴の有無は問わず、流産または死産が2回以上あれば不育症と定義されるように改訂されました。

編集部編集部

なぜ、不育症が発症するのですか?

松見 泰宇先生松見先生

不育症が発症する原因はまだよくわかっていないことが多いです。実際、全体の約65%は明らかな原因が不明となっています。そのほかには、抗リン脂質抗体陽性、子宮形態異常、凝固異常、甲状腺機能異常、染色体異常などのさまざまな原因で発症します。

編集部編集部

不育症か、それとも偶発的な流産か、どのようにして見分けるのですか?

松見 泰宇先生松見先生

問診や診察のあと、血液の凝固系やホルモンの値などを調べる必要があります。子宮形態異常については、超音波、子宮鏡、子宮卵管造影、MRIなどを用います。

編集部編集部

不育症と診断されたらどうするのですか?

松見 泰宇先生松見先生

不育症の原因を確認するために上記の検査を行います。不育症の原因は非常に多岐に渡ります。厚生労働省研究班が作成した「厚労研究班の研究成果を基にした不育症管理に関する提言」の【不育症一次スクリーニング】にも、「子宮形態検査」「内分泌検査」「抗リン脂質抗体検査」「血液凝固因子検査」などが示されており、不育症の原因をみつけるために系統的なスクリーニング検査を行うことが必要です。

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編集部編集部

「不育症は遺伝する」と聞いたことがあります。本当ですか?

松見 泰宇先生松見先生

不育症に限らず、多くの病気は遺伝子の異常に基づくと考えられ、少なからず遺伝します。少し専門的な話をすると、微細な染色体の構造異常などは、そのまま子どもに遺伝することがあります。なので、不育症にあてはめると「不育症は遺伝する」と言えてしまいます。このように一般的な身体の性質や病気になりやすい性質は親から子に遺伝するため、「家族歴」を確認するのが問診の基本になります。また、喫煙や飲酒などの影響で後天的にがんや生活習慣病などの疾患を発症することもあります。後天的ではありますが、これらも染色体にある遺伝子を構成するDNAの化学構造を後天的に修飾し、遺伝子の情報の変化に起因します。不育症が遺伝するということに話を戻すと、原因のひとつである血液を凝固させるために必要な酵素の異常などは家族性に発症することがあります。また、染色体の構造異常が特に母親にある場合、稀に子どもへ遺伝することもあります。

編集部編集部

もし自分の家族や両親が不育症と診断された場合、自分も妊娠を望むとしたら、どうすれば良いでしょうか?

松見 泰宇先生松見先生

ご自分の姉妹や両親が不育症であった場合には、不育症のスクリーニング検査を積極的に受けるのも良いかもしれません。今回は不育症と遺伝についてというのが話のテーマのようですので、染色体の微細な構造異常に起因する流産という点では、受精卵の遺伝子の異常を調べる着床前遺伝学的検査(PGT-A・PGT-SR)を体外受精をする場合には受けることを検討するといいでしょう。

編集部編集部

それはどのような検査ですか?

松見 泰宇先生松見先生

体外で受精した受精卵、つまり胚の一部の細胞を採取して、受精卵の染色体の数を調べる検査です。移植の前(着床前)に行うため、このように呼ばれています。

編集部編集部

どのようなことがわかるのですか?

松見 泰宇先生松見先生

染色体異常には染色体の数の異常と構造の異常があります。PGT-Aは胚、つまり受精卵の染色体の数的異常を確認する検査。PGT-SRは胚の染色体の構造異常を確認する検査です。これらの検査により染色体の異常による不育症を回避することができ、妊娠率・出産率の向上や流産率の低下が期待されます。

赤ちゃんを無事出産するために 不育症の治療法とは? 甲状腺ホルモン・糖尿病など検査結果によっても治療が変わってくる?

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編集部編集部

不育症は治療することができるのでしょうか?

松見 泰宇先生松見先生

はい、不育症に関する研究が進み、現在はいくつかの治療法が確立されています。たとえば「低用量アスピリン療法」という治療法があります。これは、不育症の原因のひとつである血液凝固異常に対する治療法で、過剰な凝固機能を抑制することで血管の微小な血栓を防ぎます。そのほかには、子宮形態異常の代表である双角子宮や中隔子宮などの先天性の子宮形態異常(子宮奇形)については外科的治療、つまり手術を行います。

編集部編集部

ほかにはどのような治療法があるのですか?

松見 泰宇先生松見先生

低用量アスピリン療法、および低用量アスピリン・ヘパリン併用療法、さらには難治性不妊症・着床障害に対する新たな治療戦略としてPRP療法や、免疫異常による不育症に対するイントラリピッド療法などがあります。PRP療法」は患者さんの血液を利用した再生医療で、主に血液中の生きた細胞に含まれる良い蛋白質の作用により病的な炎症を抑制します。「イントラリピッド療法」は現在注目され始めている全く新しい治療で、脂肪乳剤を点滴して免疫の異常による流産を治療します。現在、当院を含め日本の一部クリニック・大学にて精力的に行っております。

編集部編集部

原因によって治療法は異なるのですか?

松見 泰宇先生松見先生

はい、たとえば内分泌異常が不育症の原因である場合には、それらの治療が優先になります。甲状腺機能の異常が不育症の原因となっている場合には、甲状腺ホルモンを内服して甲状腺機能を正常化してから、また糖尿病の場合には血糖値を十分にコントロールしてから妊娠することが望ましいとされています。凝固異常の場合には先に述べたように、アスピリンやヘパリンを用いて血液が凝固しやすい状態を治します。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

松見 泰宇先生松見先生

不育症で悩む方も多くいらっしゃる一方、体外受精を何度も挑戦しては化学流産を繰り返すということで悩んでいる方も多くいらっしゃいます。流産や化学流産を繰り返してしまう人は、着床前検査を受けることを検討するのもよいでしょう。この検査を受けることで染色体や構造の異常がなく、流産や死産の可能性が低い受精卵を選択して子宮に移植することが可能になります。一方、遺伝的に全く問題ない受精卵を移植してもやはり流産あるいは化学流産を繰り返してしまう方が一定数いらっしゃいます。このような方は受精卵に対しての免疫系が活性し、拒絶反応が強くなっていることもあるため、免疫異常のチェックもしておくことをお勧めします。いずれにしても、困っていることがあれば経験と知識が豊富な医師にご相談ください。不育症はまだまだ分からないことが多い医療分野です。医療機関を選択するときは、どのような治療実績があるかをよく調べて受診することが大切です。

編集部まとめ

不育症や不妊症に関する研究は現在も進められており、以前は不明だったけれど判明していることが多くあります。その一方、まだ解明されていないことも多くあり、これからさらなる研究が期待されています。積極的にセカンドオピニオンやサードオピニオンなども活用し、納得のいく治療を進めましょう。

医院情報

まつみレディースクリニック三田

まつみレディースクリニック三田
所在地 〒108-0014 東京都港区芝4丁目5-8 池藤ビル3階
アクセス ゆりかもめ線「日の出」駅より徒歩10分
都営三田線・浅草線「三田」駅A7・A9出口より徒歩2分30秒
JR山手線・京浜東北線「田町」駅西口より徒歩5分
診療科目 産科、一般婦人科

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