「不育症」ってあまり聞き慣れないけど、不妊症とどう違うの?
不妊症ではなく、「不育症」という言葉をご存知でしょうか。妊活中の女性の中には、この不育症で悩んでいる方も多いようです。あまり聞きなれない言葉ですが、不育症がおこる原因についても気になるところです。「メディカルパーク湘南」の田中先生に解説してもらいました。
監修医師:
田中 雄大(メディカルパーク湘南 院長)
慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部産婦人科学教室入局。川崎市立川崎病院、大田原赤十字病院(現・那須赤十字病院)、大和市立病院などで勤務した後、2009年、神奈川県藤沢市に「湘南IVFクリニック」を開業、2012年に「メディカルパーク湘南」へ移転・名称を変更。不妊治療をはじめとする産婦人科領域全般をひとつのクリニックでおこなっている。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医、母体保護法指定医。
不育症は、2回以上の流産や死産を繰り返すこと
編集部
まず、不育症とはどういうものか教えてください。
田中先生
不妊症は、なんらかの原因で妊娠できない症状ですよね。一方で不育症は、妊娠自体はするのですが、流産や死産を繰り返してしまう状態を指します。一般的に、「2回以上の流産や死産を繰り返す」、「生後1週間以内の新生児の死亡」が不育症として定義されています。
編集部
不育症の原因は、一体なんでしょうか?
田中先生
不育症のリスク因子の約70%は、原因不明です。ただし、リスク因子が不明でも、特別な治療を受けることなくその後に妊娠できる可能性は十分にあります。
編集部
他方、残りの30%は原因がわかるんですよね?
田中先生
たしかに、原因がわかる場合もあります。例えば、血管内で血液が固まりやすくなる「血液凝固因子異常」の場合、赤ちゃんがいる胎盤でも血管がつまりやすくなり、流産する可能性が高くなります。また、甲状腺異常や糖尿病などの「内分泌異常」でも、同様に流産の確率が上がると言われています。ほかにも、「染色体異常」や「子宮形態異常」なども、不育症のリスク因子として挙げることができます。
編集部
その原因は、どうやって調べるのでしょうか?
田中先生
主に、血液検査で調べることができます。血液中の凝固因子に異常がないかを検査します。また、子宮鏡検査で、子宮内に腫瘍(しゅよう)がないかを調べることで、子宮の形に異常がないかチェックします。内分泌異常や染色体異常の場合に関しても、それぞれに対する治療をおこないます。
不育症かどうかは専門医に相談を
編集部
不育症の治療は、どのようにおこなうのですか?
田中先生
不育症の治療法は、原因によって異なります。例えば、血液凝固因子異常の場合、血液をサラサラにするために、アスピリンやヘパリンなどの薬を服用します。また、子宮に腫瘍がある場合は、切除する外科的治療をおこなっていきます。
編集部
しかし、原因不明の場合、治療の施しようがないですよね?
田中先生
そうですね。原因がわからないと治療は難しいでしょう。ただし、流産の原因は様々で、患者さん自身が本当に不育症かどうかはわかりません。また、原因がわからないのであれば、自分が不育症だと思い込みすぎるのもよくないと思います。
編集部
「もしかしたら不育症かも……」と悩んだら、どうしたらいいですか?
田中先生
まずは、専門の先生に相談するのが最優先です。もし流産や死産が2回以上あっても、女性に原因があるかどうかはわかりません。もしかすると、男性側に原因はあるかもしれません。染色体異常がある子どもの場合、流産の確率が上がるため、たまたま続いてしまっただけかもしれません。
原因ばかりにとらわれず、先のことを考える
編集部
とにかく、一人で悩まないほうがいいのですね。
田中先生
そうですね。ネットの情報だけを鵜呑みしていると、自分が不妊なのか不育なのかわからず、間違った悩み方をしてしまいます。1回の妊娠で流産する確率は12%と言われています。運悪く続いてしまった可能性もありますし、あまり不育症という言葉にこだわりすぎず、専門家に相談することをおすすめします。
編集部
日常生活で、なにか気をつけられることはありますか?
田中先生
流産の確率を高めるものとしては、「喫煙」が考えられます。また、「過度のアルコール摂取」もよくありません。ほかにも、妊娠発覚後に「重いものを持つ」、「激しいスポーツ」、「冷え」、「過労」、「ストレス」などには気をつけましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
田中先生
なぜ、流産や死産したのかを、あまり考えすぎないことが大切です。原因ばかりを考えてしまうと、追い詰められてしまい、いざ妊娠しても神経質になりすぎてしまいます。それがストレスにもつながり、負のループに陥ってしまうケースも少なくありません。不育症という言葉に縛られて悩みすぎず、これからのことを考えるためにぜひ相談にきてください。
編集部まとめ
不育症は、原因不明の場合もあるとのことでした。原因がわかる場合は治療をおこないますが、原因がわからないと治療ができないこともあるようです。流産を経験しても、その後、妊娠できる人も多いので、あまりなにが原因か思いつめすぎず、専門医とこれからどうするかを一緒に考えることにフォーカスした方がよさそうです。
男性不妊についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
医院情報
所在地 | 〒252-0804 神奈川県藤沢市湘南台 1-24-7 |
アクセス | 横浜市営地下鉄、相鉄線、小田急江ノ島線「湘南台駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 産科、婦人科、乳腺外科、不妊治療科 |