排尿時の痛みや陰部の不快感… マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症(性病)とは? 医師が症状を解説
「マイコプラズマ」と聞くと、肺炎のイメージがあるかもしれませんが、最近は性感染症の原因菌としても認知されてきているそうです。そんな「マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症」について、産婦人科専門医であり日本性感染症学会認定医である前出喜信(シュシュレディースクリニック 戸田公園院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
前出 喜信(シュシュレディースクリニック 戸田公園)
目次 -INDEX-
性感染症を医師が説明 どんな症状がある? 症状がない場合もあるってホント?
編集部
「性感染症」について教えてください。
前出先生
「性感染症」とは、性行為で主に感染する病気の総称で、STI(Sexually Transmitted Infections)とも言われます。代表的な性感染症として、梅毒やHIVのほか、クラミジア感染症やヘルペスウイルス感染症、トリコモナス感染症などがあります。
編集部
どんな症状が出るのですか?
前出先生
感染症の種類によって症状もさまざまですが、おりものの量が増えた、色がいつもと違う、匂いが気になる、ほかには性器の痒みや痛み、不正出血などは性感染症のサインです。また、排尿時の痛みや違和感なども症状としてありますので、これらに気がついたら、早めの受診をお勧めします。
編集部
ほかにも、受診したほうが良い場合などありますか?
前出先生
そうですね。先ほどの症状がみられた場合はもちろん、新しいパートナーと付き合い始めた時や、不安な性交渉があった時、パートナーが性感染症になった時などには、早めに受診していただければと思います(症状がない場合は自費での検査となります)。
新しい性感染症 マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症とは?
編集部
新しい性感染症も出てきていると聞きます。
前出先生
はい。マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症という、近年になって認知されるようになった菌による新しい感染症があり、これはマイコプラズマおよびウレアプラズマという菌による感染症の総称です。マイコプラズマという菌にはいくつか種類があるのですが、そのうち「マイコプラズマジェニタリウム」と「マイコプラズマホミニス」の2種類が性感染症の原因となります。同様に、ウレアプラズマは「ウレアプラズマパルバム」と「ウレアプラズマウレアリチカム」の2種類が性器や咽頭に感染し感染症を引き起こします。なかでも「マイコプラズマジェニタリウム感染症」は、以前は尿道炎の原因菌としか考えられていなかったのですが、日本性感染症学会が2016年に発表した「性感染症診断・治療ガイドライン」に性感染症として初めて追加されました。
編集部
どんな症状が出るのですか?
前出先生
症状は菌の種類によって異なっており、男性なら排尿時の軽度の違和感から膿を排出するものまでさまざまです。女性も同じく、おりものの異常、不正出血、排尿時の違和感などですが、男女ともに無症状のこともあります。
編集部
感染しても、症状がない場合もあるのですか?
前出先生
あります。これは、ほかの性感染症についても同じです。ほとんどの感染症は、原因となる菌やウイルスに感染してから、症状を発症するまでに「潜伏期間」と呼ばれるタイムラグがありますので、この期間に症状はなく、本人も気が付くことはほとんどありません。
編集部
淋病、クラミジアなどの感染症とは何が違うのですか?
前出先生
症状や感染経路に違いはありません。検査をしてはじめて、どの感染症なのかがわかります。まだすべての医療機関でできる検査ではありませんので、性感染症認定医のいる医療機関での検査をお勧めします。
マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症の治療は? 医療機関に相談する際の注意点も教えて
編集部
マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症の治療はどのように行われるのですか?
前出先生
治療は抗生剤の内服になりますが、まだ効果のある抗生剤が特定されていないのが現状です。なかなか治らずに困っている人も少なくありません。ですからマイコプラズマ感染症については、この菌について熟知している医師に相談することをお勧めします。
編集部
相談する際の注意点など、ありましたら教えてください。
前出先生
まず、自分が性感染症に感染していた場合は、パートナーも感染している可能性があるということです。その場合、片方の一人だけが治療してもまたすぐに感染してしまう可能性があり、「治っては感染して」を繰り返すとさらに薬も効きにくくなります。性感染症の予防にはコンドームが有効ですが、完全に感染を防げるわけではありません。特定のパートナーがいる人は、パートナーとの同時治療が可能な医療機関での治療が効果的だと思います。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
前出先生
マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症はまだ新しい感染症で、医療機関でも見逃されてしまうこともあるようです。なかなか治らない尿道炎、おりものの異常などで何度も受診している人は、マイコプラズマやウレアプラズマの感染症に罹患している可能性もあるので、これらの検査も受けてほしいと思います。今後も水面下で増え続けていく感染症だと考えられますので、医療提供者側も正しい知識をもって啓蒙する必要があると思っています。
編集部まとめ
新型コロナウィルスのパンデミックで、感染症の恐ろしさを身近に体験した方も少なくないと思います。適切な治療を怠ると、自分の症状が悪化するだけでなく、人にも感染させてしまう可能性もありますので、思い当たる症状のある方は、専門の医療機関で調べてもらうことをお勧めします。
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