3人に1人が「痔」と言われる現代。正しい予防法・生活習慣を医師が解説
痔は思った以上に一般的な病気で、なんと「3人に1人が痔持ち」と言われています。生活習慣に原因がある場合も多くセルフケアが重要ですが、多くの人が正しい知識を持っていないのが現状です。普段どのようなことに気をつけたらよいか、予防や治療法について、消化器内科専門医の石岡先生に解説してもらいました。
監修医師:
石岡 充彬(日本橋人形町消化器・内視鏡クリニック)
痔ってどんな病気?
編集部
3人に1人が「痔持ち」と聞いたことがあるのですが本当でしょうか?
石岡先生
※1. 日本大腸肛門病学会. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療診療ガイドライン2020年版. 南江堂
※2. Johanson JF, et al. The prevalence of hemorrhoids and chronic constipation: an epidemiologic study. Gastroenterology. 1990;98:380-6.
※3. Acheson RM. Haemorrhoids in the adult male: a small epidemiological study. Guys Hosp Rep. 1960;109:184-95.
編集部
いぼ痔や切れ痔はよく聞きますが、痔にも種類があるのですか?
石岡先生
「痔」は主に「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3つの病気を総称したものを指します。中でも一番多いのがいぼ痔です。いぼ痔は一般的には「肛門クッション」と呼ばれるお尻の血管などが集まった組織が腫れたもののことを指し、腫れが大きくなると脱出したり、血管が切れて出血したりといった症状が出現します。
編集部
いぼ痔を放置するとどうなりますか?
石岡先生
いぼ痔を放置すると「がんになるのではないか?」と心配される方が時々いらっしゃいますが、基本的にいぼ痔ががん化することはありません。ただし、注意が必要なのは出血があった時に「これは痔の症状だろう」と決めつけてしまい病院を受診しないことです。直腸がんや大腸がんなどによる出血は、時にいぼ痔の症状と似ているため、放置することによって病状が進行してしまう可能性があります。「血便が出た」「お尻を拭いた紙に血がついた」などといった症状が見られた場合は一度専門家を受診し、正しい診断を受けるようにしましょう。
いぼ痔の予防と日常生活での工夫
編集部
いぼ痔を予防するためにはどうしたら良いのでしょうか?
石岡先生
※4. Lee JH, et al. Factors associated with hemorrhoids in korean adults: korean national health and nutrition examination survey. Korean J Fam Med. 2014;35:227-36.
※5. 山名哲郎ら. 痔核の疫学と成因. 日本大腸肛門病会誌 2010;63:819-25.
編集部
デスクワークで仕事中なかなか動けないのですが、痔の要因になりますか?
石岡先生
長時間の座り姿勢や重いものを扱う仕事についている方は、いぼ痔のリスクが高いといえます。座り仕事が多い場合などは長時間同じ姿勢のままにならないように、1時間に1回は席を離れて身体を動かすことを習慣づけたり、座り位置をこまめに変えたりしましょう。
編集部
妊娠・出産時は痔になりやすいと聞いたことがありますが本当でしょうか?
石岡先生
※6. 高野正博. 妊娠・分娩と痔疾患. 日本大腸肛門病会誌 1990;43:1077-82.
いぼ痔の治療方法と医師のアドバイス
編集部
いぼ痔になってしまった際の治療法は、どのようなものがありますか?
石岡先生
いぼ痔の程度によって治療法は異なります。軽度なら塗り薬や坐薬での治療が主体となります。症状が重い場合は、注射療法や手術が行われることもあります。
編集部
自分の症状が軽症かどうか、見分ける目安はありますか?
石岡先生
一般的にいぼ痔の分類にはGoligher分類と呼ばれるものが指標として用いられます。肛門の中で腫れてはいるものの脱出はしていないものをⅠ度、排便の時に脱出があるものの排便後自然に戻るものをⅡ度、排便時に脱出して、指で押し戻さないと戻らないものをⅢ度、排便に関係なく常に脱出しているものをⅣ度としています。脱出の程度がひどいほど進んだ痔と言えます。
編集部
最後にいぼ痔の症状を緩和させるために自分でできることがあれば教えてください。
石岡先生
※7. Lohsiriwat V. Treatment of hemorrhoids: A coloproctologist’s view. World J Gastroenterol. 2015;21:9245-52.
編集部まとめ
痔は一般的な病気で、正しい知識と予防が重要です。定期的な運動を心掛けるとともに、バランスの良い食事や十分な水分摂取による便秘予防に努めましょう。ただし症状が出た場合、特に出血を伴う場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診し相談してくださいね。