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肛門がかゆくて温水洗浄便座を多用するのは、どうしていけないの?

 更新日:2023/03/27

昨今、温水洗浄便座での洗いすぎによる「温水洗浄便座症候群」という考え方が提唱されているようです。とはいえ、製造中止のような事態に陥っていないからには、「使い方」の問題なのでしょう。正しい利用方法やトイレットペーパーとの併用について、「田島外科」の田島先生を取材しました。

田島先生

監修医師
田島 雄介(田島外科 院長)

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埼玉医科大学卒業。埼玉医科大学総合医療センターや肛門疾患の専門病院などを経た2019年、「田島外科」を継承。生活習慣病などの内科疾患から外傷などの外科疾患も扱っている。医学博士。日本外科学会外科専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本大腸肛門病学会専門医・指導医、日本臨床肛門病学会技能指導医、難病指定医、日本医師会認定産業医、埼玉医科大学非常勤講師。日本臨床外科学会、日本遺伝性腫瘍学会、日本消化器内視鏡学会の各会員。

かゆみへの刺激が、かゆみをひどくする

かゆみへの刺激が、かゆみをひどくする

編集部編集部

清潔にしているはずなのに、肛門のかゆみが治まりません。

田島先生田島先生

考えられるのは、湿疹やあせもが発端となり、そのかゆみを自分でかいて悪化させているパターンです。就寝中などに、無意識でかいてしまうことがあります。加えて、排便時のトイレットペーパーや入浴時のタオルなどで、強い刺激を与えていないでしょうか。刺激が過ぎると、肛門部のバリア機能を低下させてしまいます。

編集部編集部

でも、下着が汚れるほどの拭き残りって、人として我慢できないです。

田島先生田島先生

常識的に、あってはいけないことですよね。そこで推奨したいのが、トイレットペーパーを少しぬらして“ソフト”に拭きとる方法です。かゆみが出ている間だけでも構いませんので、ソフトタッチに努めてみてください。

編集部編集部

温水洗浄便座ならどうでしょう?

田島先生田島先生

じつは、肛門のかゆみを伴う「温水洗浄便座症候群」と呼ばれる症例が報告されています。温水を強く、長く当てすぎると、それもまた肛門部のバリア機能を低下させる一因になるのです。なお、温水の刺激で便秘を解消しようとする方がいらっしゃいますが、ぜひ、おやめください。

編集部編集部

肛門のかゆみの原因は、拭き残しに限らないのですね?

田島先生田島先生

そのとおりです。湿疹や痔、刺激の多い食事内容、下痢、大腸菌以外の菌への感染なども考えられます。加えて、「肛門への過度な刺激」ですね。かゆみがあるからといって、強い水流を当ててなんとかしようとすると、むしろ悪循環に陥りかねません。

かゆみを伴う病気の可能性も

かゆみを伴う病気の可能性も

編集部編集部

お尻のかゆみって、治療対象なのでしょうか?

田島先生田島先生

もちろんです。「肛門周囲炎」といって、ほとんどのケースに保険が適用されます。このとき、かゆみを抑えるだけでなく、根本原因へアプローチする治療が欠かせません。例えば、水虫に似た「カンジダ菌」が繁殖しているようなら、殺菌をしていきます。

編集部編集部

専用の塗り薬などで改善していくのですか?

田島先生田島先生

軟こうを処方すると同時に、生活習慣が関係しているのであれば、その見直しもしていきます。香辛料の多用はしていないか下痢に結びつくような食事をしていないか適切な温水洗浄便座の使い方をしているかなどですね。

編集部編集部

市販薬に頼るのは対症療法に過ぎないのでしょうか?

田島先生田島先生

患者さんのお尻の状態が、市販薬の想定内にあるかどうかですよね。例えば、がんの一種であるパジェット病には、市販薬の多くが役に立ちません。単なるかゆみではなく、「痛がゆく」なってきたとすれば、固有の疾患を疑うべきです。

編集部編集部

その場合の受診先について教えてください。

田島先生田島先生

「肛門科」や「直腸外来」、「直腸外科」などを標ぼうしている専門医院を推奨します。なぜなら、肛門やその内部が観察できるスコープを有しているからです。一般の皮膚科などに肛門用のスコープがあるとは限りません。

温水洗浄は、最弱に設定して10秒まで

温水洗浄は、最弱に設定して10秒まで

編集部編集部

ほかに、温水洗浄便座の注意点はありますか?

田島先生田島先生

先ほど触れた、便秘の解消を目的とした間違った使い方ですね。このとき、肛門内に侵入した温水が、平常時に漏れ出すこともあります。非衛生的な環境になることで、ほかの病気を招きかねません。

編集部編集部

温水洗浄便座を上手に使うコツがあったら教えてください。

田島先生田島先生

温水の勢いを一番弱い設定にし、長くても「10秒まで」にしてください。その後、お尻の水気をトイレットペーパーで取るときは、「こすらないで当てる」ようにしましょう。

編集部編集部

なんだかトイレットペーパーを使ったほうがいいような気もしてきました。

田島先生田島先生

どうでしょう。やはり、拭きすぎが怖いですよね。温水洗浄便座が「即、悪モノ」というわけではないのです。要は使い方で、むやみに遠ざける必要は“絶対に”ありません。そこは、誤解のないようにしてください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

田島先生田島先生

肛門がかゆくても、「温水洗浄は弱めて10秒以内」「水気をトイレットペーパーでポンポンと当てながら取る」の2点が守られていれば、温水洗浄便座を使用しても構いません。他方、「水流を強く、長く当てる」「水気をゴシゴシと拭い取る」行為は、症状を悪化させてしまいます。かゆみが出ていない段階でも、工夫してみてください。

編集部まとめ

温水洗浄便座は機器が悪いのではなく、使い方の問題のようです。肛門は、体の皮膚と異なり、粘膜で守られています。その下の皮膚組織をむき出しにするような使い方は、すぐにでも改めましょう。使い方さえ正しければ、物理的なトイレットペーパーによる刺激を伴わない温水洗浄便座は、強い味方になりえます。上手に付き合ってみてはいかがでしょうか。

医院情報

田島外科

田島外科
所在地 〒243-0212 神奈川県厚木市及川1-12-15
アクセス 小田急線「本厚木駅」よりバス20分
診療科目 外科・胃腸内科・肛門外科・整形外科・乳腺外科・内科

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